質問主意書
政府が進める外国人労働者の受け入れ制度の中の特定技能二号では、外国人労働者が家族を帯同することが認められている。これにより、在留資格を更新することで、外国人労働者は、長期間日本に滞在することが可能となり、将来的には、永住権の取得や、帰化申請による日本国籍の取得も可能となる。
こうした経過で帰化して日本国籍を取得した外国人は、日本国民としての権利と責任を持つことになる。具体的には、選挙権や被選挙権を有し、日本国籍を条件とする公務員になる道も開かれる。したがって、帰化には、日本国民としての権利、義務と責任と共に国への帰属意識とその土台となる我が国固有の歴史や文化、生活文化と価値観、それら全ての前提としての日本語を駆使して就業、生活する能力を不自由なく身につけていることが必要と考えられる。
しかし、現在の帰化制度では、これらの要件が具体的に定められておらず、諸外国と比べても極めてあいまいな資格要件となっている。なお、諸外国においては、国籍取得の条件として忠誠や国に関する知識を求めるのが通例である。
帰化を目指した居住権の更新にあたり、アメリカ合衆国では、合衆国の歴史と政治原則及び政体の基本に関する知識と理解を求め、憲法の原則を愛好し、米国の安寧幸福を望むことを誓約することが求められる。
英国では、連合王国での生活に関する十分な知識を求め、君主への忠誠を誓うことが求められる。
オーストラリアでは、オーストラリア及びその市民権に関する責任と特権についての知識を求め、公式なセレモニーで忠誠を誓うことになっている。
ドイツでは、法秩序、社会秩序及び生活事情についての知識を求め、基本法秩序への忠誠の表明が求められる。
フランスでは、歴史、文化、社会及びフランス国籍による権利と義務についての知識を求め、共和国の基本原則と価値観を遵守することを宣誓することが求められる。
ロシアでは公用語としてのロシア語修得試験や歴史、政治と社会、生活文化に関わる一般教養試験の受験と合格が求められる。
日本においては、憲法尊重要件について他国と基本的な目的が共通しているが、法務省が行う面接や審査で申請者の法令遵守や憲法に対する理解を確認するだけでは不十分である。他国では、前述の通り、憲法や法律に対する忠誠を公式なセレモニーで具体的に宣誓させるが、日本ではそのような明示的な表現や具体的な誓約の形式が欠けている。
また、帰化の要件のうち、日本語能力に関しては、審査では考慮されるものの、必要とされる日本語能力の程度や適切な試験の実施などが法律に規定されていない。
これらを鑑みるなら、日本の帰化要件においても、忠誠や歴史・文化に関する知識の明示的な要求、日本語能力の具体的な基準設定が必要であると言える。
神谷宗幣(参政党)
日本の帰化制度において、申請者の背景調査や審査プロセスの透明性を確保するためにどのような対策が講じられているか。
政府
お尋ねは、帰化許可申請についての調査方法、調査事項等に関するものであり、これを明らかにすることにより、帰化の許否の判断に必要な調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。
神谷宗幣(参政党)
帰化申請者の犯罪歴や過去の法令違反について、具体的な調査方法と体制がとられ、その内容がどのように審査基準に反映されているのか、示されたい。
政府
お尋ねは、帰化許可申請についての調査方法、調査事項等に関するものであり、これを明らかにすることにより、帰化の許否の判断に必要な調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。
神谷宗幣(参政党)
帰化申請が却下される主な理由は何か、列挙されたい。
政府
帰化の許否の決定は、国籍法(昭和二十五年法律第百四十七号)に定められている帰化条件の充足の有無を中心としつつ、個別の事案における具体的な事情を踏まえた上での総合的な判断に基づいて行っているものであるため、お尋ねの「帰化申請が却下される主な理由」をお答えすることは困難である。
神谷宗幣(参政党)
帰化申請者に対する審査の公平性を確保のための措置は、どのようなものか。
政府
お尋ねは、帰化許可申請についての調査方法、調査事項等に関するものであり、これを明らかにすることにより、帰化の許否の判断に必要な調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。
神谷宗幣(参政党)
近年の帰化申請が増加傾向にあるが、その対応としてどのように審査体制の強化が図られているのか。
政府
帰化許可申請者数については、直近十年間において増加傾向にないため、お尋ねの「その対応」についてお答えすることは困難である。
神谷宗幣(参政党)
日本と他国の帰化制度を比較した場合の日本の制度の特色と今後の課題はどのようなものと考えられるか。
政府
帰化制度は、それぞれの国が必要な要件や手続等を個別に定めるものであって、多種多様であることから、お尋ねの「日本と他国の帰化制度を比較した場合の日本の制度の特色」について一概にお答えすることは困難であり、また、これを前提としたお尋ねの「今後の課題」についてお答えすることは困難である。
神谷宗幣(参政党)
外国人が帰化後、日本国籍を持つ市民としての責任を果たしているかをフォローアップするための制度や施策はあるか。また、今後導入を検討している制度や仕組みはあるのか。社会教育施策を含め、具体的に明らかにされたい。
政府
お尋ねの「日本国籍を持つ市民としての責任」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
神谷宗幣(参政党)
帰化申請が認められて日本国籍を取得する際に、新たな国籍取得者が日本国民としての責任を自覚するための儀式や宣誓を導入することについて、その可否をどう見るか示されたい。可否いずれの場合についても、その根拠となる理由を示されたい。
政府
お尋ねの「日本国民としての責任」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、日本国憲法を遵守する意思などについては、帰化許可申請についての調査の過程において、担当官の面前で署名させた宣誓書を提出させることにより確認している。
神谷宗幣(参政党)
帰化の条件として、日本語能力を明確な基準を法令的に定めるべきと考えるが、どうか。
政府
帰化の許否の決定は、国籍法に定められている帰化条件の充足の有無を中心としつつ、個別の事案における具体的な事情を踏まえた上での総合的な判断に基づいて行っており、帰化許可申請についての調査の過程において、日常生活に支障のない程度の日本語能力を有していることも確認しているため、日本語能力を帰化条件として法定する必要はないものと考えている。
神谷宗幣(参政党)
帰化申請の審査において、申請者の日本国に対しての帰属意識や日本国憲法を遵守する意思、歴史・文化・国の価値観に関する知識を確認するべきことについて、どのように考えるか。
政府
お尋ねの「日本国に対しての帰属意識」及び「歴史・文化・国の価値観に関する知識」については、それらの意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、お尋ねの「日本国憲法を遵守する意思」については、八についてで述べたとおり、帰化許可申請についての調査の過程において、担当官の面前で署名させた宣誓書を提出させることにより確認している。いずれにしても、帰化の許否の決定は、国籍法に定められている帰化条件の充足の有無を中心としつつ、個別の事案における具体的な事情を踏まえた上での総合的な判断に基づいて行っている。
政府は、今後五年間で特定技能の在留資格で最大八十二万人の外国人労働者を受け入れる方針であるという。これは、制度導入時の二〇一九年度から二〇二三年度の想定である最大約三十四・五万人の二・四倍に相当し、規模的に過去に前例のない多さになる。こうした政策が進められれば、五年後には外国人労働者数は、三百万人前後に達すると予想される。
この状況に対し、国民の中からは不安や戸惑いの声が上がっている。参政党が独自に実施したアンケートによると、回答者二千二百十二名のうち、外国人の逃亡については九十五%、社会保障費の増大については九十二%、地方政治への影響については八十九%、社会統合の困難については八十七%の人が「大きな懸念がある」と回答した(参政党ウェブサイト)。
国民生活に大きな影響がある外国人労働者の受け入れ拡大について、政府は丁寧な説明を行うべきである。しかし、この間の質問主意書に対する政府答弁(内閣参質二一三第七三号、以下「本件答弁書」という。)は、特定技能制度について、「これまでも、出入国在留管理庁のウェブサイトにおいて同制度に関する資料を掲載するなどしてきた」「今後も適時適切な情報発信等に努め」るとの答弁にとどまり、育成就労制度については、「現時点で…国民に丁寧に説明するための方法と、その説明を行う予定の時期の詳細についてお答えすることは困難」としている。このような姿勢で国民の不安や戸惑いを払拭することはできない。
併せて、政府が「移民」の定義を明確にせず「移民政策を取っていない」と表明することは、政策の一貫性と透明性を欠くことを示すものと言わざるを得ない。曖昧な態度は、移民の増加がもたらす長期的な社会的影響への議論を避けることにつながる。
例えば、アメリカやイギリスでは、移民の増加が特にブルーカラー労働者の賃金低下をもたらす傾向があることが報告されている。オックスフォード大学の移民・社会政策研究センターによれば、移民の割合が一%増加すると、平均賃金が〇・三%低下し、最低賃金労働者の賃金は〇・六%減少するという。また、ドイツでは、二〇一五年の難民危機で多くの中東難民が流入し、公共スペースの利用や宗教行事に関する誤解が原因で文化的摩擦が発生した。スウェーデンでは、移民集中地域で生活習慣の違いが衝突を引き起こし、ストックホルム郊外で文化的摩擦が表面化している。イタリアでは、北アフリカからの移民増加が治安悪化を招き、移民コミュニティと現地住民の間で摩擦が生じている。このような状況が日本で起こらないとも限らない。
政府は、外国人労働者の受け入れ拡大にあたり、国民の懸念に真摯に向き合い、丁寧な説明と透明な情報公開を徹底する必要がある。そうでなければ、外国人労働者の急増による社会的影響が深刻化し、日本社会の安定が損なわれる恐れがある。適切な政策と対策を講じ、経済的利益を享受しつつ、社会的な混乱を回避することが求められるのではないだろうか。
神谷宗幣(参政党)
本件答弁書では、「国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策」を「移民政策」としているが、そうであるなら、政府の言う「移民」の定義は、論理的にみて、「期限を設けずに日本に定住し、家族を帯同して生活する外国人」を指すのではないか。
政府
御指摘の答弁書(令和六年三月二十六日内閣参質二一三第七三号)一についてでは、「移民」及び「移民政策」という言葉は様々な文脈で用いられており、それらの定義について一概にお答えすることは困難であることをお答えしたものであり、御指摘のように「「国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策」を「移民政策」としている」ものではないため、政府としては、御指摘のように「「移民」の定義は、論理的にみて、「期限を設けずに日本に定住し、家族を帯同して生活する外国人」を指す」とは考えていない。
神谷宗幣(参政党)
育成就労制度や特定技能制度は、実際には外国人が長期間滞在し、永住権を取得する道を開くことにつながっている。この実態を無視することで、移民政策の長期的な社会的影響についての議論を避けることになるのではないか。透明性のある議論を行うことで、国民に対する説明責任を果たすべきではないかと思われるが政府の考えは如何。
政府
御指摘の「永住権を取得する道を開く」、「この実態を無視する」、「移民政策の長期的な社会的影響についての議論」及び「透明性のある議論」の意味するところが必ずしも明らかではないが、育成就労制度及び特定技能制度(出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和六年法律第六十号。以下「改正法」という。)による改正後の外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律(平成二十八年法律第八十九号)及び出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)に基づく育成就労制度及び特定技能制度をいう。三についてにおいて同じ。)においては、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議最終報告書を踏まえた政府の対応について」(令和六年二月九日外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定。以下「関係閣僚会議決定」という。)において示された方針に従い、有識者・労使団体等で構成する新たな会議体を設置し、同会議体の意見を踏まえて、判断の中立性や透明性を確保しつつ、受入れ見込数や受入れ対象分野の設定等を行うことを想定しており、同会議体における検討状況等を国民に丁寧に説明するなどして、制度の適切な運用に努めてまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
政府は、外国人材の受け入れの拡大にあたり、日本人の雇用への影響や社会保障等に係るコストの増大といった懸念を踏まえた慎重な検討が必要であると認識している旨答弁したが(二〇二四年五月二十八日参議院財政金融委員会)、これらの懸念に対する具体的な検討はいつまでに、どのような方法で行う予定か。
政府
育成就労制度及び特定技能制度においては、二についてで述べたとおり、関係閣僚会議決定において示された方針に従い、新たな会議体を設置し、同会議体の意見を踏まえて、判断の中立性や透明性を確保しつつ、改正法の施行までの間に、受入れ見込数や受入れ対象分野の設定等を行うことを想定しており、このような手続を通じて、御指摘の懸念に対する検討を行うとともに、改正法の施行後においても、制度の施行状況等を踏まえて、引き続き、検討を行っていく予定である。
神谷宗幣(参政党)
政府によれば、育成就労制度では、特定技能制度と同様に、賃金を含め、国内労働市場への悪影響を生じさせることがないようにするとのことであるが(二〇二四年五月二十八日参議院財政金融委員会)、それは、具体的にどのような判断基準や方法論に基づいているか。賃金水準の維持や労働市場への影響を評価するために使用している具体的な指標やデータ、分析手法について如何。また、これまでの特定技能制度で実施された具体的な評価結果や事例があれば示されたい。
政府
前段のお尋ねについて、育成就労制度においては、二についてで述べたとおり、関係閣僚会議決定において示された方針に従い、新たな会議体を設置し、同会議体の意見を踏まえて、判断の中立性や透明性を確保しつつ、受入れ見込数や受入れ対象分野の設定等を行うことを想定しており、その際には、現行の特定技能制度と同様に、有効求人倍率、雇用動向調査その他の公的統計又は業界団体を通じた所属企業への調査等の指標を踏まえて、受入れ見込数や受入れ対象分野の設定等を行うことを想定している。後段のお尋ねについては、お尋ねの「これまでの特定技能制度で実施された具体的な評価結果や事例」の意味するところが必ずしも明らかではないが、現行の特定技能制度においては、有効求人倍率、雇用動向調査その他の公的統計又は業界団体を通じた所属企業への調査等の指標を踏まえ、日本人の雇用機会の喪失及び処遇の低下を防ぐ観点等から、生産性向上や国内人材確保のための取組を行った上でなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野及び当該分野における向こう五年間の受入れ見込数を設定している。
神谷宗幣(参政党)
政府は、特定技能制度を創設した二〇一九年以降、外国人労働者の増加による経済効果と社会的影響をどのように評価し、検証してきたか。また、二〇二四年度から二〇二八年度までの受け入れ見込み数を最大八十二万人とし、これまでの約二・四倍に設定するにあたり、上記の検証と評価をどのように生かしたのか。さらに、この受け入れにより、五年後には外国人労働者が約三百万人に達することが予想されるが、その社会への影響をどのように検討し、評価しているのか。
政府
お尋ねについては、御指摘の「外国人労働者の増加による経済効果と社会的影響」及び「五年後には外国人労働者が約三百万人に達すること・・・の社会への影響」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、特定技能制度は、日本人の雇用機会の喪失及び処遇の低下を防ぐ観点等からの適切な受入れ見込数等を設定し、運用することにより、生産性向上や国内人材確保のための取組を行った上でなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野における人材確保に貢献してきたものと認識しており、引き続き、制度の適切な運用に努めてまいりたい。
出入国在留管理庁の「令和五年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について(速報値)」によると、令和五年における外国人入国者数(新規入国者数と再入国者数の合計)は、約二千五百八十三万人で、前年に比べ約二千百六十三万人(約五百十五・三%)増加、新規入国者数は、約二千三百七十五万人で、前年に比べ約二千三十三万人(約五百九十三・八%)増加している。
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、水際対策が開始された令和二年二月一日以降、外国人新規入国者数は大幅な減少に転じていたが、令和四年三月以降、外国人新規入国制限の見直しを始めとする水際対策の段階的な緩和などにより、令和五年における外国人新規入国者数は急激に増加し、新型コロナウイルス感染症拡大前である令和元年の約八十三・六%の水準にまで達している。
過去の統計データを踏まえると、このうち約半数は、東京出入国在留管理局管内で占めており、出入国審査数、在留審査数においても同様の傾向であると推察される。特に退去強制手続きについては、その七割近く、難民認定申請数については、九割以上が、東京出入国在留管理局管内に集中している状況にあると推察される。
また、在留外国人においては、中国、ベトナム、韓国、フィリピン、ネパールと多岐にわたり、難民申請については、カンボジア、スリランカ、トルコ、ミャンマー、バングラデシュと様々な言語での面談等、対応の難しさが増している。
このように出入国管理行政を取り巻く環境は刻々と変化しており、出入国審査業務だけに限らず、在留管理業務や難民認定手続業務、退去強制手続業務など全ての入管業務で繁忙な状況に拍車がかかっており、入管全体で人員不足や従業員の精神的負担も深刻な状況になっていることが懸念される。
今後もさらに訪日外国人の大幅な増加が予測され、対応する出入国管理体制強化のための大幅な増員と設備の充実が必須であり、そのような職場の労働条件の改善があってこそ、更なる水際での迅速かつ正確な審査判断と、対応の質向上が望めるのだと考える。
神谷宗幣(参政党)
政府は、東京出入国在留管理局の労働実態をどのように把握し、評価改善活動を行なっているか、その詳細を示されたい。また、把握している労働実態については、どのように評価しているか、明らかにされたい。
政府
お尋ねの「評価改善活動」の意味するところが必ずしも明らかではないが、出入国在留管理庁においては、東京出入国在留管理局の職員のうち、人事院規則一五―一四(職員の勤務時間、休日及び休暇)第十六条の二の二に規定する上限を超えて超過勤務を命じた職員の人数等について、同局からの報告により把握しており、一部の職員の超過勤務が長時間に及んでいることについては、その状況の改善が必要であると認識している。
神谷宗幣(参政党)
東京出入国在留管理局においては、非常に精神的負担の大きい業務を担っている状況であるが、メンタルヘルス不調で連続一ヶ月以上休業した職員数は、直近十年でどのような推移があるか。また職場におけるメンタルヘルスケア対策としてどのような対策を行っているか示されたい。
政府
前段のお尋ねについては、お尋ねのような形での統計をとっておらず、お答えすることは困難である。後段のお尋ねについては、東京出入国在留管理局においては、職員を対象としてメンタルヘルスに関する研修を実施しているほか、心理的な負担の程度を把握するための検査を受ける機会を提供するなど、職員の健康の保持増進に必要な措置を講じている。
神谷宗幣(参政党)
前述の通り、訪日外国人の大幅な増加が予想される中、今後の東京出入国在留管理局における、増員計画を明らかにされたい。
政府
東京出入国在留管理局における職員の増員については、国家公務員全体の定員の削減が求められている中で、適正な出入国在留管理行政の遂行のため、必要な人員の確保に努めてきたところであり、具体的な増員計画を示すことは困難であるものの、今後とも必要な人員の確保に努めてまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
東京出入国在留管理局においては、新卒採用を中心に人員補充を行っているが、いずれも対人スキルにおいて、経験・熟練を要する職場であるところ、まとまって大量採用した際には、上司や先輩に部下指導の負荷が通常業務に加えて負担となる。その点については、教育プログラム等、十分なサポートは行われているのか、状況を示されたい。
政府
出入国在留管理庁においては、日常業務を通じた上司による指導のほか、職階等に応じた体系的な研修を実施しており、例えば、東京出入国在留管理局の新規採用者に対しては、外国人に対する接遇の方法を始め、その職務の遂行に必要な法律知識及び技能の修得に関する研修を採用の初年度に実施し、職員の能力の向上を図っている。
神谷宗幣(参政党)
東京出入国在留管理局の建物は平成十五年に現庁舎に移転され、すでに二十年以上たっており、施設や設備の更新が必要な時期にあると思われる。例えば、多種多様な言語への対応が必要な状況において、通訳の手配による手間や費用負担が増える中、ITを活用することで、ある一定の負荷軽減と利便性の向上が望めるが、そのような施設内の設備や施設の導入予定や更新計画を明らかにされたい。
政府
御指摘の「そのような施設内の設備や施設」の具体的な内容が明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、東京出入国在留管理局の施設及び設備の老朽化については、改修の必要性、予算状況等を踏まえ、対応に努めている。
日本で定住する外国人の数は、令和四年末時点で三百七万五千二百十三人(前年比十一%増)となり、初めて三百万人を超え過去最高となったという。あわせて就労という面では、先般、国土交通省が、人手不足が顕著なトラック、バス、タクシーのドライバーについて外国人労働者を大幅活用するための検討に入ったと報じられており(九月十二日毎日新聞)、実際に現場でも外国人営業ドライバーが現れ始めている。
しかしながら、そもそも、運転手不足の根本的理由は、ドライバーの賃金水準が低いままで推移していること、コロナ禍において営業不振を招いたことに対する救済措置が不十分であったことなどにより、人手の供給力が著しく損なわれたことにあるのではないか。そうしたところにメスを入れ、十分な対策を立てないまま「労働力不足の分野に外国人労働者活用を」とした政策をとるのは、筋違いと言うべきである。本来は他分野との賃金水準、労働環境の格差を是正することこそ、優先されるべき策であって、それを置いて「外国人労働者活用の推進」に進むのは順序が違うと言わざるを得ない。
あわせて政府は、令和五年六月九日の閣議決定と八月三十一日の省令等の改正によって、外国人就労に関する特定技能二号の対象分野を「造船・舶用工業」「建設」の二分野から十一分野に拡大することを決定した。新たに「ビルクリーニング」「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」「自動車整備」「航空」「宿泊」「農業」「漁業」「飲食料品製造業」「外食業」の九分野が追加され、これにより、今後、これらの分野で、無期限の在留と家族の同伴が可能となるという。
政府は、このような外国人労働者受け入れの拡大を進めながら、「移民政策は取らない」としてきたが、特定技能二号の対象分野拡大は、結局のところ、なし崩し的に移民を拡大することになるのではないか。
諸外国の例を参考にすれば、移民を大量に受け入れた場合には、外国人の集住地区が形成され、地元の慣習や文化を尊重しない外国系居住者が増え、犯罪の増加と治安の悪化などが見られることがある。特に、フランスやドイツのように難民を含む多数の移民を受け入れている欧州諸国では、貧困で社会に馴染めない移民第二世代の青年たちが、政府や既存社会に対してデモや集団的な暴力行為、交通妨害等を行い、社会の不安や混乱を引き起こしているケースが見られ、フランスやスペインでは、時にはテロ事件の温床ともなっているケースがあるとも聞く。また、受け入れ国にとっての社会コストが大きいことも指摘されている。例えば、移民受け入れ国として長い歴史を持つフランスでは、司法、警察、教育制度、社会福祉、公共交通機関及び組織的な反社会行為防止の分野で、移民に関連する費用として年間二百五十~三百億ユーロもの予算を要するとの試算もある。
このように、移民受け入れによる多様な社会問題は、各国の共通の課題であると言える。そのため、日本においても、事実上の移民受け入れ拡大につながる外国人労働者の就労拡大策は、経済的側面だけでなく、日本社会への影響をも考慮し、慎重かつ真剣な検討と対応が必要である。
神谷宗幣(参政党)
平成三十年二月二十日の経済財政諮問会議において、安倍内閣総理大臣は、「在留期間の上限を設定し、家族の帯同は基本的に認めないといった前提条件の下、真に必要な分野に着目しつつ、制度改正の具体的な検討」を進めると述べた。一方、令和五年六月九日の外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議において、岸田内閣総理大臣は、特定技能二号の対象分野を拡大することに関し、「我が国の深刻な人手不足を踏まえ、我が国が魅力ある働き先として選ばれる国となるよう」取り組むこと、そしてその取組をより強力に、かつ包括的に推進していくためには、その受入れ環境を整備することが重要であると述べた。この岸田総理の発言は、安倍総理が述べた「在留期間の上限を設定し、家族の帯同は基本的に認めない」という方針を変更するものか。
政府
政府としては、例えば、国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策については、専門的、技術的分野の外国人を積極的に受け入れることとする現在の外国人の受入れの在り方とは相容れないため、これを採ることは考えておらず、御指摘の岸田内閣総理大臣の発言は、御指摘の「方針」を変更するものではない。
神谷宗幣(参政党)
特定技能とは、特定産業分野において、人材の確保が困難な状況にあるため外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野として法務省令で定めるものとされている。平成三十年十一月七日の参議院予算委員会において、山下貴司法務大臣は、特定技能の在留資格新設の意義について、「人手不足が本当に深刻で国内人材の確保もままならない、そういったところの熟練の技能を持つ者について」特定技能の二号とする旨を答弁している。今回の特定技能二号の拡大対象となった分野における「人手不足が本当に深刻で国内人材の確保もままならない」状況について、どのような分析を行い、どのように評価したか。具体的な分野とその人手不足の状況の分析評価について示されたい。
政府
「特定技能第二号」の拡大の対象となった分野における人手不足が深刻であり、当該分野の存続及び発展のために外国人の受入れが必要な状況にあることについては、有効求人倍率、雇用動向調査その他の公的統計又は業界団体を通じた所属企業への調査等の客観的な指標等を踏まえ、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお熟練した技能を要する業務に従事する人材を確保することが困難な状況にあると判断したことによるものである。
神谷宗幣(参政党)
政府は、内閣衆質一九六第一〇四号において、移民政策に関し、「国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策については、専門的、技術的分野の外国人を積極的に受け入れることとする現在の外国人の受入れの在り方とは相容れないため、これを採ることは考えていない」と答弁している。しかしながら、前述の九分野において「無期限の在留と家族の同伴が可能」という前提で特定二号の対象を拡大することは、結果的に「国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策」となるのではないか。
政府
「特定技能第二号」の在留資格をもって在留する外国人については、専門的、技術的分野の在留資格を有する外国人と同等又はそれ以上の高い専門性や技能が求められ、その在留期間は、出入国管理及び難民認定法施行規則(昭和五十六年法務省令第五十四号)別表第二において、「三年、一年又は六月」と定められ、在留期間の更新は、当該更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可されることから、「特定二号の対象を拡大することは、結果的に「国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策」となる」との御指摘は当たらない。
神谷宗幣(参政党)
特定技能二号は、「従事しようとする業務に必要な「熟練した技能」を有していることが試験その他の評価方法により証明されていること」とされており、例えば、外食業では、「外食業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」及び同方針に係る運用要領でその内容が定められている。この点、特定技能二号外国人に求められる実務経験は、「外食業特定技能二号技能測定試験の合格及び食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)の営業許可を受けた飲食店において、複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する者(副店長、サブマネージャー等)としての、二年間の実務経験(ただし、当該経験を終えてから、別途農林水産大臣が定める期間を経過していないものに限る。)を要件とする」とされている。この基準では、店舗管理補助業務を適正に行ってきたのか客観的に評価する指標が定められていない。対象者が「熟練した技能」を有していることについて、どのように担保するのか。特定技能二号の対象である各特定産業分野について、具体的な評価基準を示されたい。
政府
御指摘の「客観的に評価する指標」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針(平成三十年十二月二十五日閣議決定、令和四年四月二十六日一部変更。以下「基本方針」という。)において、「二号特定技能外国人に対しては、熟練した技能が求められる。これは、長年の実務経験等により身につけた熟達した技能をいい、現行の専門的・技術的分野の在留資格を有する外国人と同等又はそれ以上の高い専門性・技能を要する技能であって、例えば自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、又は監督者として業務を統括しつつ、熟練した技能で業務を遂行できる水準のものをいう。当該技能水準は、分野別運用方針において定める当該特定産業分野の業務区分に対応する試験等により確認する」としている。
神谷宗幣(参政党)
どの国の人材を受け入れるかについては、我が国と相手国との二国間関係、それぞれの相手国の政治的安定・経済情勢・文化の相違など、諸々の要素を勘案して定めるべきである。この点で、相手国ごとの留意点、選定基準は存在しているのか。例えば、特定技能二号の基準を個人的に満たす外国人にあって、国籍が特定の国である場合に入国して就労できない場合があるのか。
政府
お尋ねの「相手国ごとの留意点、選定基準」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、基本方針において、「被送還者の自国民引取義務を適切に履行していない国からの受入れは行わない」及び「その他我が国の出入国管理上支障を生じさせている・・・国からの受入れについては慎重に対応する」としている。
神谷宗幣(参政党)
特定技能二号の対象拡大によって、国民生活にも大きな影響が生じると思われる。令和五年六月九日の閣議決定までに、公聴会開催などを含めて十分に国民の声を聴く取組は行われたのか。この点、令和元年度から令和三年度までの外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策では、「「国民の声」を聴く会」を設置し、国民及び外国人双方から共生施策の企画立案に資する意見を継続的に聴取するとされている。ここでは、外国人材の受入れを要望する業界団体からのヒアリングは行われたが、地域住民からのヒアリングはされず、また、同会は、令和元年から令和二年にかけて開催されて以降、開催されていない。この点をどう評価するのか。また、今後、どのようにして国民の声を聴き、施策に反映させていく方針か、具体的に示されたい。
政府
「令和五年六月九日の閣議決定までに、公聴会開催などを含めて十分に国民の声を聴く取組は行われたのか」とのお尋ねについては、御指摘の「公聴会開催などを含めて十分に国民の声を聴く取組」の具体的に指し示す範囲が明らかではないため、お答えすることは困難であるが、出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分野等を定める省令の一部を改正する省令(令和五年法務省令第三十五号)の制定に当たっては、パブリックコメントを実施し、広く国民から意見を募集した。「この点をどう評価するのか」とのお尋ねについては、その意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「「国民の声」を聴く会」については、「「国民の声」を聴く会設置要綱」(令和元年七月三十日出入国在留管理庁長官決定)に基づき、「多文化共生社会の実現に向けた様々な課題の把握及びその対応策の策定のための検討に資するよう、地方公共団体、経済団体、労働団体、外国人支援団体等を含め、多文化共生施策に係る意見等について、広く関係者の声を聴くことを目的」として、令和二年十二月まで開催していたものであり、御指摘の「特定技能二号の対象拡大」について広く関係者の意見を聴くことを目的としたものではない。「今後、どのようにして国民の声を聴き、施策に反映させていく方針か」とのお尋ねについては、今後とも、特定技能の在留資格に係る制度の施行状況等を踏まえつつ、必要に応じて関係者等からその意見を聴取するなどして、制度の適切な運用に努めてまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
特定技能二号の対象拡大による外国人労働者の受け入れが経済に与える効果と、受け入れに伴って生じる社会コストを、少なくとも国レベルで試算しているか。
政府
お尋ねの「経済に与える効果」及び「社会コスト」という言葉は様々な文脈で用いられるものであり、その具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「特定技能二号の対象拡大による外国人労働者の受け入れ」に当たり、具体的な数値を試算するような取組は行っていない。
神谷宗幣(参政党)
外国人労働者の受け入れ人数についての目標数等はあるか。また、「分野別運用方針に基づき、その産業上の分野において、必要な人材が確保されたと認められるときは、一時的に在留資格認定証明書の交付の停止の措置をとる」(内閣衆質一九七第一九号)とのことであるが、「必要な人材が確保されたと認められるとき」は、どのような内容で判断されるのか。具体的な評価方法や基準数値などを示されたい。
政府
前段のお尋ねについては、お尋ねの「目標数等」の意味するところが必ずしも明らかではないが、基本方針において、「日本人の雇用機会の喪失及び処遇の低下等を防ぐ観点並びに外国人の安定的かつ円滑な在留活動を可能とする観点から、分野別運用方針において、当該分野における向こう五年間の受入れ見込数について示し、人材不足の見込数と比較して過大でないことを示さなければなら」ず、「分野別運用方針に記載する向こう五年間の受入れ見込数については、大きな経済情勢の変化が生じない限り、「特定技能一号」の在留資格をもって在留する外国人受入れの上限として運用する」としている。後段のお尋ねについては、基本方針において、「分野所管行政機関の長は、分野別運用方針を策定する際に示した人手不足の状況を判断するための客観的な指標及び動向並びに法務省から提供する特定産業分野における在留外国人数等に照らして、当該特定産業分野における人手不足の状況について継続的に把握することとし、当該客観的な指標及び動向の変化や受入れ見込みとのかい離、当該特定産業分野に係る就業構造や経済情勢の変化等を踏まえ、人手不足の状況に変化が生じたと認められる場合には、それらの状況を的確に把握・分析し、状況に応じた必要な措置を講じなければならない」としている。
政府は、今後五年間で特定技能の在留資格で最大八十二万人の外国人労働者を受け入れる方針であるという。これは、制度導入時の二〇一九年度から二〇二三年度の想定である最大約三十四・五万人の二・四倍に相当し、規模的に過去に前例のない多さになる。こうした政策が進められれば、五年後には外国人労働者数は、三百万人前後に達すると予想される。
この状況に対し、国民の中からは不安や戸惑いの声が上がっている。参政党が独自に実施したアンケートによると、回答者二千二百十二名のうち、外国人の逃亡については九十五%、社会保障費の増大については九十二%、地方政治への影響については八十九%、社会統合の困難については八十七%の人が「大きな懸念がある」と回答した(参政党ウェブサイト)。
国民生活に大きな影響がある外国人労働者の受け入れ拡大について、政府は丁寧な説明を行うべきである。しかし、この間の質問主意書に対する政府答弁(内閣参質二一三第七三号、以下「本件答弁書」という。)は、特定技能制度について、「これまでも、出入国在留管理庁のウェブサイトにおいて同制度に関する資料を掲載するなどしてきた」「今後も適時適切な情報発信等に努め」るとの答弁にとどまり、育成就労制度については、「現時点で…国民に丁寧に説明するための方法と、その説明を行う予定の時期の詳細についてお答えすることは困難」としている。このような姿勢で国民の不安や戸惑いを払拭することはできない。
併せて、政府が「移民」の定義を明確にせず「移民政策を取っていない」と表明することは、政策の一貫性と透明性を欠くことを示すものと言わざるを得ない。曖昧な態度は、移民の増加がもたらす長期的な社会的影響への議論を避けることにつながる。
例えば、アメリカやイギリスでは、移民の増加が特にブルーカラー労働者の賃金低下をもたらす傾向があることが報告されている。オックスフォード大学の移民・社会政策研究センターによれば、移民の割合が一%増加すると、平均賃金が〇・三%低下し、最低賃金労働者の賃金は〇・六%減少するという。また、ドイツでは、二〇一五年の難民危機で多くの中東難民が流入し、公共スペースの利用や宗教行事に関する誤解が原因で文化的摩擦が発生した。スウェーデンでは、移民集中地域で生活習慣の違いが衝突を引き起こし、ストックホルム郊外で文化的摩擦が表面化している。イタリアでは、北アフリカからの移民増加が治安悪化を招き、移民コミュニティと現地住民の間で摩擦が生じている。このような状況が日本で起こらないとも限らない。
政府は、外国人労働者の受け入れ拡大にあたり、国民の懸念に真摯に向き合い、丁寧な説明と透明な情報公開を徹底する必要がある。そうでなければ、外国人労働者の急増による社会的影響が深刻化し、日本社会の安定が損なわれる恐れがある。適切な政策と対策を講じ、経済的利益を享受しつつ、社会的な混乱を回避することが求められるのではないだろうか。
神谷宗幣(参政党)
本件答弁書では、「国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策」を「移民政策」としているが、そうであるなら、政府の言う「移民」の定義は、論理的にみて、「期限を設けずに日本に定住し、家族を帯同して生活する外国人」を指すのではないか。
政府
御指摘の答弁書(令和六年三月二十六日内閣参質二一三第七三号)一についてでは、「移民」及び「移民政策」という言葉は様々な文脈で用いられており、それらの定義について一概にお答えすることは困難であることをお答えしたものであり、御指摘のように「「国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人を家族ごと期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策」を「移民政策」としている」ものではないため、政府としては、御指摘のように「「移民」の定義は、論理的にみて、「期限を設けずに日本に定住し、家族を帯同して生活する外国人」を指す」とは考えていない。
神谷宗幣(参政党)
育成就労制度や特定技能制度は、実際には外国人が長期間滞在し、永住権を取得する道を開くことにつながっている。この実態を無視することで、移民政策の長期的な社会的影響についての議論を避けることになるのではないか。透明性のある議論を行うことで、国民に対する説明責任を果たすべきではないかと思われるが政府の考えは如何。
政府
御指摘の「永住権を取得する道を開く」、「この実態を無視する」、「移民政策の長期的な社会的影響についての議論」及び「透明性のある議論」の意味するところが必ずしも明らかではないが、育成就労制度及び特定技能制度(出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和六年法律第六十号。以下「改正法」という。)による改正後の外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律(平成二十八年法律第八十九号)及び出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)に基づく育成就労制度及び特定技能制度をいう。三についてにおいて同じ。)においては、「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議最終報告書を踏まえた政府の対応について」(令和六年二月九日外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定。以下「関係閣僚会議決定」という。)において示された方針に従い、有識者・労使団体等で構成する新たな会議体を設置し、同会議体の意見を踏まえて、判断の中立性や透明性を確保しつつ、受入れ見込数や受入れ対象分野の設定等を行うことを想定しており、同会議体における検討状況等を国民に丁寧に説明するなどして、制度の適切な運用に努めてまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
政府は、外国人材の受け入れの拡大にあたり、日本人の雇用への影響や社会保障等に係るコストの増大といった懸念を踏まえた慎重な検討が必要であると認識している旨答弁したが(二〇二四年五月二十八日参議院財政金融委員会)、これらの懸念に対する具体的な検討はいつまでに、どのような方法で行う予定か。
政府
育成就労制度及び特定技能制度においては、二についてで述べたとおり、関係閣僚会議決定において示された方針に従い、新たな会議体を設置し、同会議体の意見を踏まえて、判断の中立性や透明性を確保しつつ、改正法の施行までの間に、受入れ見込数や受入れ対象分野の設定等を行うことを想定しており、このような手続を通じて、御指摘の懸念に対する検討を行うとともに、改正法の施行後においても、制度の施行状況等を踏まえて、引き続き、検討を行っていく予定である。
神谷宗幣(参政党)
政府によれば、育成就労制度では、特定技能制度と同様に、賃金を含め、国内労働市場への悪影響を生じさせることがないようにするとのことであるが(二〇二四年五月二十八日参議院財政金融委員会)、それは、具体的にどのような判断基準や方法論に基づいているか。賃金水準の維持や労働市場への影響を評価するために使用している具体的な指標やデータ、分析手法について如何。また、これまでの特定技能制度で実施された具体的な評価結果や事例があれば示されたい。
政府
前段のお尋ねについて、育成就労制度においては、二についてで述べたとおり、関係閣僚会議決定において示された方針に従い、新たな会議体を設置し、同会議体の意見を踏まえて、判断の中立性や透明性を確保しつつ、受入れ見込数や受入れ対象分野の設定等を行うことを想定しており、その際には、現行の特定技能制度と同様に、有効求人倍率、雇用動向調査その他の公的統計又は業界団体を通じた所属企業への調査等の指標を踏まえて、受入れ見込数や受入れ対象分野の設定等を行うことを想定している。後段のお尋ねについては、お尋ねの「これまでの特定技能制度で実施された具体的な評価結果や事例」の意味するところが必ずしも明らかではないが、現行の特定技能制度においては、有効求人倍率、雇用動向調査その他の公的統計又は業界団体を通じた所属企業への調査等の指標を踏まえ、日本人の雇用機会の喪失及び処遇の低下を防ぐ観点等から、生産性向上や国内人材確保のための取組を行った上でなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野及び当該分野における向こう五年間の受入れ見込数を設定している。
神谷宗幣(参政党)
政府は、特定技能制度を創設した二〇一九年以降、外国人労働者の増加による経済効果と社会的影響をどのように評価し、検証してきたか。また、二〇二四年度から二〇二八年度までの受け入れ見込み数を最大八十二万人とし、これまでの約二・四倍に設定するにあたり、上記の検証と評価をどのように生かしたのか。さらに、この受け入れにより、五年後には外国人労働者が約三百万人に達することが予想されるが、その社会への影響をどのように検討し、評価しているのか。
政府
お尋ねについては、御指摘の「外国人労働者の増加による経済効果と社会的影響」及び「五年後には外国人労働者が約三百万人に達すること・・・の社会への影響」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、特定技能制度は、日本人の雇用機会の喪失及び処遇の低下を防ぐ観点等からの適切な受入れ見込数等を設定し、運用することにより、生産性向上や国内人材確保のための取組を行った上でなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野における人材確保に貢献してきたものと認識しており、引き続き、制度の適切な運用に努めてまいりたい。
外国人留学生の増加に対応する日本語教育の体制整備に関する質問主意書(第二百十二回国会質問第三号)(以下「本件質問主意書」という。)に対して、答弁書(内閣参質二一二第三号)(以下「本件答弁書」という。)が送付された。本件答弁書に関連して再質問する。
本件答弁書によれば、政府は、「一定以上の能力を有する日本語教育に従事する者の数を十分に確保できていない理由」として、「職業としての社会的な認知が低く、日本語教師を目指す者が日本語教育機関等で活躍する状況に結びついていない」ことを承知しているとのことである。また、「日本語教育に従事する者の社会的認知度の向上等のための施策として、日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律(令和五年法律第四十一号)により、新たな国家資格として登録日本語教員制度を創設した」とのことである。
神谷宗幣(参政党)
登録日本語教員制度の創設によって、本件質問主意書で指摘した日本語教師の職務形態別内訳(ボランティアが半数近くを占めること)、及び日本語教師の年代別内訳(五十代以上が半数以上を占め、二十代が五・四パーセントに過ぎないこと)について、いつまでに、どのような構成に改善されることを目指しているのか、政府の具体的な目標を示されたい。
政府
お尋ねの「改善」の意味するところが必ずしも明らかではないが、外国人が我が国において生活するために必要な日本語能力を身に付けられる環境を整備するためには、御指摘の日本語教育に従事する者の「職務形態」及び「年代」を問わず、一定以上の能力を有する日本語教育に従事する者を十分に確保することが必要であると考えており、「いつまでに、どのような構成」を目指しているのかとのお尋ねについて一概にお答えすることは困難である。
神谷宗幣(参政党)
お尋ねの「国家資格保持者のための受け皿の用意」については、日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律(令和五年法律第四十一号。以下「法」という。)において、日本語教育を行うことを目的とした課程を置く教育機関(以下「日本語教育機関」という。)のうち、日本語教育を適正かつ確実に実施することができる旨の文部科学大臣の認定を受けたもの(以下「認定日本語教育機関」という。)において日本語教育課程を担当する教員は、法第十七条第一項の登録を受けた者(以下「登録日本語教員」という。)でなければならないとしており、登録日本語教員の就業の機会の確保を図っているところである。お尋ねの「日本語教師の処遇改善」については、令和五年五月十七日の参議院本会議において、永岡文部科学大臣(当時)が「登録日本語教員の国家資格化を契機として、日本語教師の社会的地位が高められ、その専門性が適切に評価され、さらに処遇改善へつながることで、日本語教師を目指す方が増えていくことが期待されます。」、「国のサイトにおける研修履歴の蓄積、掲載など、キャリア証明に資する仕組みを検討するほか、登録日本語教員を対象とした研修等を充実させ、その専門性向上を支援する予定です。こうした取組や新制度の活用により、登録日本語教員の処遇改善につなげてまいります。」と答弁したとおりである。
政府
単に法律を制定するだけで、日本語教育に従事する人員の増加に繋がるとは思えない。また、国家資格保持者が増えたとしても、それが日本語教師としての実際の職に就く人の増加に繋がらなければ、人材不足という課題は解消されない。国家資格保持者のための受け皿の用意と日本語教師の処遇改善など就業と生活の安定を保障することを具体的に進めることが政府の責任であると考える。政府の見解と今後新たに取る具体的な対応策を示されたい。
神谷宗幣(参政党)
御指摘の「受入れ体制が整備できていない現状」及び「日本語教育の体制が整備されるまで」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部及び専修学校(以下「大学等」という。)への外国人留学生の受入れについては、入学時において、学修に必要な語学力を有することを各大学等がそれぞれの責任において確認しているものと承知しており、また、日本語教育機関への外国人留学生の受入れについては、法施行後は、在留資格の付与について新制度への移行に伴う必要な措置を講じた上で、認定日本語教育機関に留学する者に対してのみ「留学」の在留資格を認めていく方向で検討しており、さらに、外国人労働者の受入れについては、令和五年四月十八日の参議院法務委員会において、齋藤法務大臣(当時)が「専門的、技術的分野の外国人については、我が国の経済社会の活性化に資する、そういう観点から積極的に受け入れていく、それ以外の分野につきましては、日本人の雇用、産業構造への影響、教育、社会保障等の社会的コスト、治安など、幅広い観点から、国民的コンセンサスを踏まえつつ政府全体で検討していく、こういう考え方に基づいて外国人材を受け入れているところでございます。」と答弁しているところであり、「性急な外国人受入れ」との御指摘は当たらないと考えている。
政府
本件答弁書によれば、本件質問主意書のいう「性急な外国人受入れ」及び「受入れ体制の実態に見合った形」の具体的に意味するところが明らかではないとのことであるが、「性急な外国人受入れ」とは、日本語教師の人材不足など、受入れ体制が整備できていない現状において、政府が二〇三三年までに外国人留学生を四十万人受け入れるという計画を打ち出したことを踏まえての指摘である。また、「受入れ体制の実態に見合った形」とは、日本語教育の体制が整備されるまでは外国人留学生を増加させる方針を一旦保留し、外国人材の受入れにも厳しい制限を設け、入国者数の急増を抑える等の措置を講ずることを含意している。以上をふまえて再度、本件質問主意書の質問「性急な外国人受入れについて、政府は受入れ体制の実態に見合った形に見直すべきではないか。」に答えられたい。
教育未来創造会議が令和五年四月二十七日付で発表した「未来を創造する若者の留学促進イニシアティブ(第二次提言)」は、大学学部および高校段階での留学生数の大幅な増加を図る具体的な目標を示している。これは、同年三月十七日の第五回教育未来創造会議において、議長である岸田文雄総理大臣が「二〇三三年までに、日本人学生の海外留学者数五十万人、外国人留学生の受入れ数四十万人の実現を目指すことをはじめとした具体的な指標を、同計画に位置付けるよう」と示したことを受けての提言である。
一方、岸田総理は、労働力不足に悩む経済界からの要望を受け、令和五年六月九日の閣議決定で特定技能二号の対象分野を追加し、同年六月二十一日公表の「人口減少危機を直視せよ」との日本社会の未来像を提案する呼びかけ第一弾を受けて、同年七月二十二日開催の「令和臨調一周年大会」で「外国人と共生する社会を考えていかなければならない」との方向性を明言している。
以上に関連して令和五年六月九日開催の外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議において、日本語教育等の取組について「日本語教師の質の確保や量的確保・育成が課題」であるともされている。同年七月三十一日の技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議でも、日本語教員数の圧倒的な不足が深刻な問題であり、十分な予算の確保が必要であるとの議論がなされている。
そもそも、日本人学生の生活と学業支援が決して十分ではない中、外国からの留学生受入れを数値目標まで決めて推進するあり方が異常に思えるとともに、賛成できるものではない。仮にこれを進めるにしても現状の日本語教育体制は次に示すとおりであり、人的確保や待遇の面で相応しい質と量の確保とはなっていないことは重大な問題である。
国内の日本語学習者数についての文化庁国語課による日本語教育実態調査によれば、新型コロナウイルス感染拡大による入国制限のため、令和二年度から三年度には急激に減少したものの、四年度は制限緩和もあって、前年度から七十八パーセントの増加となった。一方で、同年度の日本語教師等の数は十二パーセントの増加に留まっている。
日本語教師の職務形態別の内訳では、ボランティアによる者が四十九・〇パーセントと最も多く、以下、非常勤による者が三十六・一パーセント、常勤による者が十四・九パーセントの順となっている。教師の年代別内訳は、五十代以上が五十四・七パーセントを占めているのに対し、二十代はわずか五・四パーセントである。
日本語教師の質、量ともに向上させることが切実な実態が明らかで、大学教育での日本語教師養成課程の役割が重要となっているが、現状では大学の日本語教師養成課程修了者のほとんどが日本語教師とならないで推移している。令和四年度の日本語教師養成課程修了後の進路についての調査結果では、民間の日本語教師養成研修実施機関を除き、日本語教師養成課程を有する大学(大学院含む)及び短期大学(二百十校)について見るなら、日本語教師の職に就いたのは、課程修了者二千四百七十八人中、百十二人(四・五パーセント)のみであった(令和四年度大学等日本語教師養成課程及び文化庁届出受理日本語教師養成研修実施機関実態調査研究報告書)。
令和五年一月二十五日の日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議における報告でも、課題である日本語教師の人材不足について、処遇の低さ(年間収入や雇用単価等において専門性が評価されておらず厳しい状況にあること)が背景にあると分析されている。また、職業としての社会的な認知が低く、日本語教師を目指す者が日本語教育機関等で活躍する状況に結びついていない現状も指摘されている。
以上の状況を踏まえ、同年五月二十六日の国会で日本語教育機関認定法(日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律)が可決・成立した。これによって、文部科学大臣の登録を受けた登録日本語教員は国家資格保持者と見なされるが、この法律の施行は令和六年四月一日である。
神谷宗幣(参政党)
外国人留学生の増加が促進され、外国人材受入れの推進を当面の課題として推し出しているにもかかわらず、質の高い日本語教師の確保とは逆行する状況が大学での日本語教師養成課程修了者の進路状況に現れているのは明らかである。こうした現象の因果関係について、政府はどのように分析しているのか。
政府
御指摘の「質の高い日本語教師の確保とは逆行する状況」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、一定以上の能力を有する日本語教育に従事する者の数を十分に確保できていない理由については、令和五年一月二十五日に日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議が取りまとめた「日本語教育の質の維持向上の仕組みについて(報告)」(以下「有識者会議報告」という。)において、「専門性を有する日本語教師の質を担保する仕組みがなく、全国的に一定の質を確保することが難しい状況」であることや、「大学学部(通学制)においては、養成課程を経て実際に教師になる者は一割以下となっており、専門性を有する教師が不足する中で、職業としての社会的な認知が低く、日本語教師を目指す者が日本語教育機関等で活躍する状況に結びついていない現状がある」などと指摘されているものと承知している。
神谷宗幣(参政党)
岸田総理が述べている「外国人留学生の受入れ数四十万人の実現」や、外国からの技術研修生受入れ等の今後の方向から考えて、政府は日本語教師の確保について、その必要数をどのように見ているのか、示されたい。あわせて、大学教育における日本語教師養成課程修了者の有用化のための待遇改善その他の具体的な施策についても説明されたい。
政府
前段のお尋ねについては、有識者会議報告において指摘されているとおり、外国人が「我が国において生活するために必要な日本語能力を身に付けられる環境の整備が必要」であり、そのためには、日本語教育に従事する者の数だけでなく、その質も充実させることが重要であることから、今後必要となる日本語教育に従事する者の数について一概にお答えすることは困難である。また、後段のお尋ねについては、「大学教育における日本語教師養成課程修了者の有用化」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、日本語教育に従事する者の社会的認知度の向上等のための施策として、日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律(令和五年法律第四十一号)により、新たな国家資格として登録日本語教員制度を創設したところである。
神谷宗幣(参政党)
日本で学ぶ留学生、技能実習生の受入れが当事者にとっても、また日本社会にとっても望ましいものとして進展していくためには、日本語教育の果たす役割は極めて大きいものと考える。しかし、「受入れ数」目標などが先行するばかりで、それに見合った受入れ体制の最初の入口となる日本語教育体制が人的裏付けも不確かなままなら、入国者の希望と実際の日本での留学や研修がミスマッチなものとなるほか、受入れ元での円滑な教育や研修活動の実施が効果を上げないなどの事態につながりかねない。性急な外国人受入れについて、政府は受入れ体制の実態に見合った形に見直すべきではないか。
政府
お尋ねの「性急な外国人受入れ」及び「受入れ体制の実態に見合った形」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
令和四年八月二十九日のNHK報道によれば、岸田文雄総理大臣は永岡桂子文部科学大臣に対し、年間三十万人の外国人留学生の受入れを目指す政府の目標を抜本的に見直し、更に留学生を増やすための新たな計画を策定するよう指示したと報道されている。
独立行政法人日本学生支援機構は二〇二一年五月一日現在における「留学生受け入れ数の多い大学」三十校を示しており、これらはそれぞれ千人~四千人超の留学生を受け入れている。この中でトップは東京大学の四千八十四人でこれは同大学の学生総数の十五・一%に達し、国内の私立大学も早稲田大学が三千九百六十七人の留学生を受け入れていることを筆頭に、かなりの数の学生を外国から受け入れているところである。「少子化」の影響で定員割れを起こしかねない地方の私立大学では、外国留学生の受け入れでかろうじて学校経営上の必要定数を埋めているとの話も聞く。
そうした一方で、外国人留学生に関しては、平成三十一年、東京福祉大学で三年間に千人以上の留学生が所在不明となっていることが発覚し、「消えた留学生」問題として国会でも取り上げられた。この問題は、政府の「留学生三十万人計画」の裏側で、「勉強」よりも「出稼ぎ」を目的に来日した「留学生身分」の外国人労働者が日本の労働力不足を補っているという現実をも浮き彫りにした。東京福祉大学で起きたことは、氷山の一角に過ぎないと考える。
「留学生三十万人計画」によって特に急増したのは、中国からの私費留学生である。少子化により日本人だけでは収容定員を満たすことのできない大学等の中には、これら私費留学生を積極的に受け入れて「定数割れ」を補っている大学等もある。そのような大学等では、多数の留学生を入学者選抜、教育研究指導、在籍管理などの受入れ体制が不十分なまま安易に受け入れ、結果として学習意欲等に問題のある留学生を在学させることにつながっているのではないかという懸念もある。現状において、上記のような懸念が払拭されず、実態の把握と問題の改善が図られないままに留学生を更に増やすための施策を行うことは、問題を更に深刻化させるだけである。
日本における少子化動向の中で新入生を募集しても定員に満たないことをもって、学校存続を至上化させて外国人留学生を増やすことにつながっているなら、それは本末転倒である。「子育て支援」策の充実、教育負担の更なる低減で出生率の下落を抑えるとともに、大学を含めた教育機関、学校の適正配置も図り、人材と資源を有効に活用した上での充実した教育条件と学校整備を進めることこそ、我が国の将来を考えるなら留学生増員策に先んずべき施策であると考える。
我が国においては、私立学校に対する運営補助金、私立大学等経常費補助金など多額の国家予算が計上されて学校教育の運営がなされている。その制度と資源は、日本人生徒、学生の勉学条件を充実させることにつなげてこそ、国の成長・発展に資するのであり、その第一義的な在り方を前提にした上での各国からの留学生の受入れであると考えるが、現在進められている施策はそうした方向に沿ったものになっていない。
神谷宗幣(参政党)
岸田文雄総理大臣が永岡桂子文部科学大臣に「三十万人留学生受入れ目標」の見直しによる更なる留学生受入れ計画の策定を命じたことについて、その目的と今後の日本の成長戦略にとってどのような意味があるのかを具体的に示されたい。
政府
令和四年八月二十九日に、岸田内閣総理大臣から永岡文部科学大臣兼教育未来創造担当大臣に対して、現行の「留学生三〇万人計画」を戦略的に発展させ、外国人留学生の受入れだけでなく、日本人留学生の送出しを加えた「新たな留学生受入れ・派遣計画」を策定する旨の指示をしたところであり、お尋ねの「「三十万人留学生受入れ目標」の見直しによる更なる留学生受入れ計画の策定を命じた」事実はない。なお、当該指示は、世界最先端の分野で活躍する高度専門人材や多様な価値観を持った人材を育成・確保するとともに、多様性と包摂性のある持続可能な社会を構築することにより、我が国の更なる成長を促していくことを目的としてされたものである。
神谷宗幣(参政党)
外国人学生数の比率が、全体の学生数の五十%を超えている大学、短期大学、高等専門学校は存在するか。過去五年間の実績で当該学校等の学校名あるいは学校法人名、当該学校等における外国人学生数及び学生総数に対する比率の推移を明らかにされたい。
政府
御指摘の「外国人学生数の比率が、全体の学生数の五十%を超えている大学、短期大学、高等専門学校」については、政府として把握していないことから、お尋ねについてお答えすることは困難である。
神谷宗幣(参政党)
過去五年間において、理事、役員に外国人が含まれている又は含まれていた大学、短期大学、高等専門学校の学校名あるいは学校法人名を明らかにされたい。
政府
御指摘の「理事、役員に外国人が含まれている又は含まれていた大学、短期大学、高等専門学校の学校名あるいは学校法人名」については、政府として把握していないことから、お尋ねについてお答えすることは困難である。
神谷宗幣(参政党)
日本人生徒、学生に対する国の奨学金制度及び外国人留学生に対する奨学金制度について、その種類、貸付か返済不要のものかなどを明らかにするとともに、最近五年間の支給額と支給実績数(人数)を明らかにされたい。
政府
お尋ねの「日本人生徒、学生に対する国の奨学金制度及び外国人留学生に対する奨学金制度」の意味するところが必ずしも明らかではないが、独立行政法人日本学生支援機構が実施する奨学金事業等について、平成二十九年度から令和三年度までにおける年度ごとの①種類、②貸付けか返済不要かの別、③支給総額及び④支給人数をお示しすると、次のとおりである。
平成二十九年度
①国内の大学等に通う日本人の学生等を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約十三億円 ④約二千五百人
①日本人の学生等を対象とした学資貸与金 ②貸付け ③約一兆百五十六億円 ④約百二十九万人
①日本人留学生等を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約六十億円 ④約二万二千人
①国費外国人留学生を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約百六十一億円 ④約一万千人
①私費外国人留学生を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約六十八億円 ④約一万九千人
平成三十年度
①国内の大学等に通う日本人の学生等を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約七十九億円 ④約二万人
①日本人の学生等を対象とした学資貸与金 ②貸付け ③約九千八百七十四億円 ④約百二十八万人
①日本人留学生等を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約六十三億円 ④約二万三千人
①国費外国人留学生を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約百五十九億円 ④約一万千人
①私費外国人留学生を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約六十六億円 ④約一万八千人
令和元年度
①国内の大学等に通う日本人の学生等を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約百三十九億円 ④約三万七千人
①日本人の学生等を対象とした学資貸与金 ②貸付け ③約九千七百二十億円 ④約百二十七万人
①日本人留学生等を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約六十二億円 ④約二万二千人
①国費外国人留学生を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約百五十五億円 ④約一万千人
①私費外国人留学生を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約六十四億円 ④約一万七千人
令和二年度
①国内の大学等に通う日本人の学生等を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約千六百六億円 ④約二十八万人
①日本人の学生等を対象とした学資貸与金 ②貸付け ③約八千九百九十六億円 ④約百二十万人
①日本人留学生等を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約十五億円 ④約二千七百人
①国費外国人留学生を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約百四十億円 ④約一万人
①私費外国人留学生を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約三十六億円 ④約二万七千人
令和三年度
①国内の大学等に通う日本人の学生等を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約千四百八十四億円 ④約三十二万人
①日本人の学生等を対象とした学資貸与金 ②貸付け ③約八千六百六十四億円 ④約百十六万人
①日本人留学生等を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約二十億円 ④約二千四百人
①国費外国人留学生を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約百三十三億円 ④約一万人
①私費外国人留学生を対象とした給付型奨学金 ②返済不要 ③約三十億円 ④約一万二千人
外国人の生活保護受給に関しては、過去、大阪市で外国人の生活保護集団申請がなされたことが議論を呼んだ。また、先日も「国葬反対より外国人生活保護反対」というワードがSNS上でトレンド入りするなど、国民の中には「外国から来た人が自国政府の保護を受けずに来訪を受け入れた国での日常生活上の生活保障を受けるのは道理に合わない」との反対の声が多いと見られる。
我が国の生活保護受給者数は減少傾向にあるにもかかわらず、世帯主が外国人である生活保護世帯数は、増加傾向にあるとされる。十五年前と比べると、中国人やフィリピン人世帯で二倍以上、ブラジル人世帯に至っては七倍以上増加しているとの話も聞く。
外国人に生活保護を与える行政上の根拠は、昭和二十九年五月八日社発第三八二号各都道府県知事あて厚生省社会局長通達「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」(以下「旧厚生省通達」という。)と思われる。旧厚生省通達では、「当分の間」外国人であっても生活に困窮する外国人には保護を行うとされている。
一方、原則として外国人が生活保護法上の適用対象とならないことは、平成二十六年七月十八日の最高裁判決が、外国人が生活保護法の保護対象とする「国民」に含まれないと判示しており、法解釈として明確となっている。しかし、政府は、現在まで、人道的な観点から、行政措置として、引き続き外国人の生活保護受給を認めるとしている。
神谷宗幣(参政党)
外国人の生活保護に関して、実態を把握するために、世帯主が外国人である生活保護世帯について、過去十年間の国籍別の生活保護の申請件数、保護開始世帯数、保護世帯類型別の推移及び保護世帯人員数別の推移を示されたい。
政府
世帯主が日本の国籍を有しない者であって生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)に基づく保護に準じた保護を受けている世帯について、国籍別の世帯類型別の推移及び世帯人員別の推移は、「政府統計の総合窓口」のホームページにおいて被保護者調査として公表しているところである。また、国籍別の保護の開始の申請件数及び開始件数については把握していない。
神谷宗幣(参政党)
外国人から生活保護申請があり、当該外国人が要保護状態にあると認めた場合、当該外国人の本国政府又は本邦所在の当該国在外公館等に対し、照会を行う仕組みはあるか。照会を行う場合、照会内容は、どのようなものか。
政府
「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」(昭和二十九年五月八日付け社発第三百八十二号厚生省社会局長通知。以下「昭和二十九年通知」という。)において、生活に困窮する外国人に対する保護の開始に向けた手続に関し、「保護の実施機関より報告をうけた都道府県知事は当該要保護者が、その属する国の代表部若しくは領事館(支部又は支所のある場合にはその支部又は支所)又はそれらの斡旋による団体等から必要な保護又は援護を受けることができないことを確認し、その結果を保護の実施機関に通知すること」としている。
神谷宗幣(参政党)
旧厚生省通達によれば、「当分の間」必要と認める保護を行う旨が記載されている。過去の国会答弁によれば、政府は、「人道的な立場から」引き続き外国人の生活保護受給を認めているようである。しかしながら旧厚生省通達の発出から七十年近くが経過しており、当時とは社会情勢も日本の経済事情も全く異なるし、諸外国政府との関係もごく一部を除けばほぼ全ての国と連絡ができる体制となっている。政府は、「当分の間」の運用として定められた、約七十年前の旧厚生省通達について、最高裁判決に沿って見直す必要があると考えるが、政府の見解及びその理由を示されたい。
政府
生活に困窮する外国人に対しては、人道上の観点から、生活保護法による保護に準じた保護が行われているところであり、最高裁判所の判例においても「外国人は、行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得る」とされている(最高裁判所平成二十六年七月十八日第二小法廷判決)。昭和二十九年通知にいう「当分の間」とは、具体的に特定の期間を想定しているものではなく、現在においても生活に困窮する外国人が一定程度存在していることから、昭和二十九年通知を見直す状況にないと考えている。
神谷宗幣(参政党)
旧厚生省通達によれば外国人への生活保護は行政措置として行われているとのことであるが、それは市町村の判断において個別の適用がされるということか。実施機関である市町村が外国人への生活保護を最高裁判決の立場等から実施を見送った場合、当該市町村が国からの交付金などで不利益な取扱いを受けることはないか。
政府
昭和二十九年通知は、地方公共団体に法的な義務を課するものではないが、厚生労働省としては、一定の外国人に対し、人道上の観点から、生活保護法に基づく保護に準じた保護を行うという昭和二十九年通知の内容に沿った取扱いをしていただきたいと考えている。また、お尋ねの「実施機関である市町村が外国人への生活保護を最高裁判決の立場等から実施を見送った場合、当該市町村が国からの交付金などで不利益な取扱いを受ける」の具体的に意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難である。
令和三年六月末時点における在留外国人数のうち、永住許可を受けた外国人は、全体の約三割を占めている。国籍別の累計永住許可人員数は、中国、ブラジル、フィリピン、ベトナム、韓国・朝鮮の順で多く、令和三年単年では、約半数が中国となっている。
この点、我が国の生活保護受給者数は減少傾向にあるにもかかわらず、世帯主が外国人である生活保護世帯数は、増加傾向にある。十五年前と比べると、生活保護世帯数は、中国人世帯やフィリピン人世帯で二倍以上、ブラジル人世帯に至っては七倍以上となっており、我が国の財政的な負担も増加している。
神谷宗幣(参政党)
今後も永住許可を受ける外国人が増加することが見込まれることからすれば、世帯主が外国人である生活保護世帯数の増加も予測されるところである。実態を把握するため、過去五年間に永住許可を受けた外国人のうち、出入国管理及び難民認定法第二十二条第二項本文に基づいて永住許可を受けた国籍別人員数、年齢(十歳階級)及び性別、また、同項ただし書に基づいて永住許可を受けた国籍別人員数、年齢(十歳階級)及び性別を示されたい。加えて、これについて統計がないのであれば、その理由を示されたい。
政府
出入国在留管理庁においては、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号。以下「入管法」という。)第二十二条及び第二十二条の二の規定に基づく永住許可の件数の総数を国籍別に集計しているが、お尋ねの「永住許可を受けた外国人のうち、出入国管理及び難民認定法第二十二条第二項本文に基づいて永住許可を受けた国籍別人員数、年齢(十歳階級)及び性別、また、同項ただし書に基づいて永住許可を受けた国籍別人員数、年齢(十歳階級)及び性別」については、通常の業務において集計しておらず、集計に当たっては入管法第二十二条及び第二十二条の二の規定に基づく永住許可に係る関係記録の確認などの作業に膨大な時間を要することから、お答えすることは困難である。
神谷宗幣(参政党)
永住許可の審査要件は、「素行が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、その者の永住が日本国の利益に合すると認められること」(出入国管理及び難民認定法第二十二条第二項)となっているところ、生活保護を受給している外国人は、すでにこれらの要件に合致していないおそれがある。しかし、我が国では、永住許可を受けた後に、許可時に必要な要件を満たさなくなったということをもって許可が取り消される仕組みにはなっていない。この点に関し、古川法務大臣(当時)は、第二百七回国会参議院予算委員会(令和三年十二月十七日)において、「許可後の在留状況を継続的に管理する仕組みを構築するかどうか、こういう是非を含めて検討を進めていきたい」と答弁を行っているところ、現在の具体的な検討状況及び今後の方針について示されたい。
政府
入管法別表第二に定める在留資格「永住者」の在り方に関しては、「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」(令和四年六月十四日外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定)において、「許可後に公的義務を履行しなくなるなど、永住者としての要件を満たさなくなったと思われる事案について、永住許可の取消しを含めて対処できる仕組みを構築する。」としているところであり、引き続き、当該仕組みの構築について検討を続けてまいりたい。