質問主意書

日本の伝統産業であるいぐさ及び畳表に係る国内産業支援に関する質問主意書(2025年2月25日)

質問

回答

畳表の生産枚数は、平成八年から令和六年にかけて約二千六百九十四万枚から百四十一万枚へと激減している。これに伴い、国産品の総生産額は三百四十三億円から三十一億円へと大幅に減少し、国内生産額も十分の一以下に落ち込み、自給率も七十%から二十二%へと下がった。また、輸入畳表の枚数は千百三十七万枚から五百二万枚へ減少し、輸入品の総輸入額も八十一億円から五十一億円へと低下している。現在の畳表の単価は、国産品が一枚当たり二千二百十二円、輸入品が千二十三円で、国産品は輸入品の二倍以上の価格である。

国内の需要動向を見ると、平成元年から令和五年までの間に畳表の総枚数は千七百十六万枚から三百二十八万枚へと約五分の一に減少し、一戸当たりの畳替枚数も〇・四二三畳から〇・〇五六畳へと大幅に下落していると考える。
これらのデータから、過去三十年間で畳表の生産枚数、生産額、需要はいずれも減少し続けており、国内生産業者は非常に厳しい状況に直面していると考える。
いぐさ及び畳表は、寺社仏閣や茶室など、日本の伝統的な建築と文化にとって不可欠であり、これらは日本の文化的精神性を支えるとともに、国際的にも日本の魅力と競争力の源となっていると考える。
このような背景を踏まえ、畳表産業の持続可能な支援と発展のためには、政府の積極的な役割が求められる。具体的には、国内のいぐさ及び畳表に対する需要拡大、国産品の維持存続のための経済的支援、産地偽装の処罰や取締り強化が必要ではないかと考える。

以上を踏まえ、質問する。

吉川里奈(参政党)
いぐさ及び畳表の需要拡大と、国産品の保護・支援のために現在実施されている取組と、それに割り当てられた年間予算の金額、及びそれによる具体的な成果をそれぞれ回答されたい。

政府
御指摘の「いぐさ及び畳表の需要拡大」及び「国産いぐさの需要拡大」のため、農林水産省としては、「持続的生産強化対策事業」のうち「茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進」(以下「地域特産作物体制強化促進事業」という。)において、いぐさ及び畳表に係る全国組織が行う、畳店、工務店等向けの研修会や消費者を対象とした国産いぐさ及び畳表の普及啓発の取組等を支援している。また、御指摘の「国産品の保護・支援」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、国産畳表の高品質化や高付加価値化に取り組むいぐさ及び畳表生産者に対し、「いぐさ・畳表農家経営所得安定化対策事業」(以下「経営所得安定化対策事業」という。)により、い業年度(毎年七月一日から翌年六月三十日までの期間をいう。以下同じ。)ごとに、国産畳表の価格が過去五年の価格を基に定められる基準値を下回った場合に、その下落の程度に応じ、一定額を補塡することとしている。
令和五年度における地域特産作物体制強化促進事業の予算額約十三億五千万円のうち、いぐさ及び畳表に係る全国組織への交付実績は約千七百万円である。また、経営所得安定化対策事業は基金事業であり、令和五い業年度末における基金の残高は約二億六千万円であるが、同い業年度における補塡金の交付実績はなかった。
これらの取組等により、国産いぐさ及び畳表の高品質化、高付加価値化等が進んでいると考えているところ、例えば国産畳表一枚当たりの価格については、様々な要因の影響を受けることから、一概にこれらの取組によるものと断定することは困難であるが、経営所得安定化対策事業を開始した平成二十六い業年度においては千八百八十四円であったところ、令和五い業年度では二千二百十二円へと上昇している。

 

吉川里奈(参政党)
新築や改装される建物・施設に畳表(和室、置き畳など)の使用を促進するために政府が現在検討している施策や経済的支援はあるか。また、過去にこのような措置を採用し、検討した経緯がある場合、その詳細を回答されたい。

政府
政府として、御指摘の「新築や改装される建物・施設に畳表(和室、置き畳など)の使用を促進するため」の「施策や経済的支援」は検討しておらず、これまで「検討した経緯」もない。

吉川里奈(参政党)
国内生産者に対する所得補償を含む経済的支援と、輸入品に対する保護関税の強化について
 1 政府の立場と具体的な取組や過去の実施例をそれぞれ明らかにしたうえで、これに関し、いぐさ・畳表農家経営所得安定化対策基金のこれまでの利用実績を回答されたい。
 2 同基金の利用を促進すべく対象・要件を広げ、基金を拡充すべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

政府
1について
政府としては、国内のいぐさ及び畳表に関連する産業を保護する観点等から、関税定率法(明治四十三年法律第五十四号)第三条の規定に基づき、畳表に対して六パーセントの関税を課している。また過去には、畳表の輸入増加の事実等を踏まえ、平成十二年十二月二十二日から同法第九条第六項の規定に基づく調査を行ったところ、畳表の輸入増加の事実及びこれによる本邦の産業に与える重大な損害等の事実を推定したことから、同条第八項の規定に基づき、平成十三年四月二十三日から同年十一月八日までの間に輸入される畳表に対して暫定緊急関税を課したことがある。なお、その後、畳表の秩序ある貿易を推進することについて我が国と主要な輸入先国である中華人民共和国とが共通の認識を得たことにより、国民経済上の緊急の必要性がなくなったと認められたことから、同条第一項の規定による措置をとらないこととした。
 また、国産畳表の価格下落に対しては、一及び五についてで述べたとおり、平成二十六い業年度から経営所得安定化対策事業を講じているところであり、その交付実績は、平成二十七い業年度においては約百七十万円、平成三十い業年度においては約二百八万円、令和元い業年度においては約九十九万円となっている。

三の2について
経営所得安定化対策事業については、国産畳表の高品質化や高付加価値化に取り組むいぐさ及び畳表生産者の経営の安定を図ることにより、その高品質化、高付加価値化等を進めることを目的としている。経営所得安定化対策事業等を通じて、出荷量に占める、いぐさ及び畳表の生産者団体が定める規格において上位に位置付けられる畳表の割合が、平成二十六い業年度においては八十パーセントであったところ、令和五い業年度では八十六パーセントへと上昇しており、その高品質化、高付加価値化等が進んでいると考えていることから、農林水産省としては、現時点において、御指摘のように「対象・要件を広げ、基金を拡充すべき」とは考えていない。

吉川里奈(参政党)
いぐさ及び畳表の輸入品を国産品と偽る産地偽装問題について
1 政府は産地偽装問題について認識しているか。認識しているのであれば、この問題に対して、どのような具体的な対策が行われているのか。それに割り当てられている予算や人員配置を含め詳細を示されたい。
2 産地偽装を防ぐために導入されている新たな政策や改善策、政府が把握している産地偽装の件数と被害額についてそれぞれ回答されたい。

政府
現時点において、政府としては、いぐさ及び畳表の輸入品を国産品と偽る事案を把握しておらず、お尋ねの「産地偽装問題」が生じているとは認識していない。
また、御指摘の「産地偽装を防ぐため」の取組として、地域特産作物体制強化促進事業において、いぐさ及び畳表生産者等による産地情報の提供等の取組への支援を措置している。
なお、「産地偽装問題」が不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)等の関係法令に違反する疑いがある場合には、関係省庁において法と証拠に基づき適切に対応することとしており、関係法令の執行を担当する職員が配置されている。

吉川里奈(参政党)
国宝及び重要文化財等の建造物の保存修理に国産漆を用いることを文化庁が指定した例のように、国産いぐさの需要拡大のために政府が講じている施策を示されたい。

政府
御指摘の「いぐさ及び畳表の需要拡大」及び「国産いぐさの需要拡大」のため、農林水産省としては、「持続的生産強化対策事業」のうち「茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進」(以下「地域特産作物体制強化促進事業」という。)において、いぐさ及び畳表に係る全国組織が行う、畳店、工務店等向けの研修会や消費者を対象とした国産いぐさ及び畳表の普及啓発の取組等を支援している。また、御指摘の「国産品の保護・支援」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、国産畳表の高品質化や高付加価値化に取り組むいぐさ及び畳表生産者に対し、「いぐさ・畳表農家経営所得安定化対策事業」(以下「経営所得安定化対策事業」という。)により、い業年度(毎年七月一日から翌年六月三十日までの期間をいう。以下同じ。)ごとに、国産畳表の価格が過去五年の価格を基に定められる基準値を下回った場合に、その下落の程度に応じ、一定額を補塡することとしている。
令和五年度における地域特産作物体制強化促進事業の予算額約十三億五千万円のうち、いぐさ及び畳表に係る全国組織への交付実績は約千七百万円である。また、経営所得安定化対策事業は基金事業であり、令和五い業年度末における基金の残高は約二億六千万円であるが、同い業年度における補塡金の交付実績はなかった。
これらの取組等により、国産いぐさ及び畳表の高品質化、高付加価値化等が進んでいると考えているところ、例えば国産畳表一枚当たりの価格については、様々な要因の影響を受けることから、一概にこれらの取組によるものと断定することは困難であるが、経営所得安定化対策事業を開始した平成二十六い業年度においては千八百八十四円であったところ、令和五い業年度では二千二百十二円へと上昇している。

外国資本による日本の鉱業権取得と国益に及ぼす影響に関する質問主意書(2025年1月24日)

質問

回答

令和六年十一月十五日、毎日新聞は「外国資本の企業五社が日本国内の少なくとも計四十二カ所の金鉱山の開発に向けて調査や試掘を進めている」と報じた。カナダの三社とオーストラリアの二社が新たな金採掘の事業を進めているが、北海道黒松内町では、住民の反対運動が起きており、鉱害の発生など環境や健康への悪影響、開発の持続可能性に対する懸念等が報じられている。

歴史的にみると、外国による鉱物資源の獲得は、侵略や植民地化の大きな理由であった。そのため、我が国では、鉱山開発を国の直轄事業として厳格に管理し、外国の介入を阻止してきた。現行の鉱業法では、国は、鉱物(金鉱、銀鉱、銅鉱など)を掘採し、取得する権利を賦与する権能を有し(第二条)、「日本国民又は日本国法人」でなければ、鉱業権(試掘権及び採掘権)者となることができない(第十七条)と規定されており、外国人又は外国法人は鉱業権者となることはできない。

平成二十九年にカナダのJapan Gold社が、平成二十四年の鉱業法改正以降外国企業として初めて日本国内での探鉱・試錐許可を取得した(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構、平成二十九年十二月二十二日付「金属資源情報」)。その後、令和六年においてもJapan Gold社に対し、鉱業権の設定の許可処分がなされている。

試掘は探索段階であり、必ずしも商業的に採掘可能な量の鉱物が見付かる保証はない。しかし、企業は利益を求め投資をするため、鉱物が発見されれば、それが日本の資源の外部流出と国益の損失に直結するリスクが高い。日本の鉱物資源は希少であることから、極めて制限的に許可するべきと考える。

以上をもとに、以下質問する。

神谷宗幣(参政党)
鉱業法第十七条の「日本国民又は日本国法人」の定義を明らかにされたい。

政府
一及び二について
鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)は、鉱物資源を合理的に開発することによって公共の福祉の増進に寄与するため、鉱業に関する基本的制度を定めることを目的としているところ、お尋ねの「日本国民又は日本国法人」については、同法において明確に定義していないが、同法第二条及び第十七条の規定については、同法附則第二項の規定による廃止前の鉱業法(明治三十八年法律第四十五号)を参考にしたものであると認識しており、その目的などについては、例えば、昭和二十五年十月二十三日の衆議院通商産業委員会において、徳永通商産業省資源庁鉱山局長(当時)が「鉱物は土地の所有権と離れた、所有権の内容以外のものとして、国がそれを掘採取得する権利を人に與える権能を持つているんだという趣旨を簡潔に現行法は表明したものではなかろうかというふうに了解されまするので、ことに、その内容は現行法ができましたときの母法であります外国の例を見ましても、大体そういう趣旨に了解されます」及び「鉱業権というものは、その国にとつてやはり基本的な重要な権利でございまするので、外国立法例も相当やはり制限的な扱いをいたしておりますから、日本におきましても制限的な扱いをいたした方がいいじやないかということで、置いたわけでございます。」と答弁したとおりである。

神谷宗幣(参政党)
鉱業法第二条及び同法第十七条が規定された背景、目的及び理由を明らかにされたい。

政府
一及び二について
鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)は、鉱物資源を合理的に開発することによって公共の福祉の増進に寄与するため、鉱業に関する基本的制度を定めることを目的としているところ、お尋ねの「日本国民又は日本国法人」については、同法において明確に定義していないが、同法第二条及び第十七条の規定については、同法附則第二項の規定による廃止前の鉱業法(明治三十八年法律第四十五号)を参考にしたものであると認識しており、その目的などについては、例えば、昭和二十五年十月二十三日の衆議院通商産業委員会において、徳永通商産業省資源庁鉱山局長(当時)が「鉱物は土地の所有権と離れた、所有権の内容以外のものとして、国がそれを掘採取得する権利を人に與える権能を持つているんだという趣旨を簡潔に現行法は表明したものではなかろうかというふうに了解されまするので、ことに、その内容は現行法ができましたときの母法であります外国の例を見ましても、大体そういう趣旨に了解されます」及び「鉱業権というものは、その国にとつてやはり基本的な重要な権利でございまするので、外国立法例も相当やはり制限的な扱いをいたしておりますから、日本におきましても制限的な扱いをいたした方がいいじやないかということで、置いたわけでございます。」と答弁したとおりである。

神谷宗幣(参政党)
過去十年以内の外国事業者による鉱業権の設定出願に関する処分の詳細(出願人の氏名又は名称、件数、処分年月日、処分内容等)を明らかにされたい。

政府
三及び四について
お尋ねの「外国事業者」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、経済産業大臣として、鉱業法第二十一条第一項に規定する鉱業権の設定の出願がなされた際には、同法第二十九条第一項に掲げる基準に適合するか否かを審査し、当該出願に係る許可を行っている。

 

神谷宗幣(参政党)
外国事業者に鉱業権を許可することが、鉱業法第十七条の趣旨に照らして適切であると政府が判断する根拠を示されたい。また、このような許可が国益にどのような影響を及ぼす可能性があるか政府の見解を示されたい。

政府
三及び四について
お尋ねの「外国事業者」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、経済産業大臣として、鉱業法第二十一条第一項に規定する鉱業権の設定の出願がなされた際には、同法第二十九条第一項に掲げる基準に適合するか否かを審査し、当該出願に係る許可を行っている。

神谷宗幣(参政党)
鉱山開発による近隣住民の健康や環境に与える悪影響をどのように防止しているか示されたい。

政府
五について
お尋ねの「鉱山開発による近隣住民の健康や環境に与える悪影響」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねについては、経済産業大臣として、鉱業法第二十一条第一項に規定する鉱業権の設定の出願に係る許可に当たっては、同法第二十四条に基づく関係都道府県知事との協議を行うとともに同法第二十六条に基づく設備設計書の提出を命ずることにより鉱害の防止のための調査を行っており、また、鉱業権者に対し、鉱業法施行規則(昭和二十六年通商産業省令第二号)第二十七条に基づき、同法第六十三条に規定する施業案において鉱害の防止のための施設に関する事項等を記載させるとともに、鉱業の実施に当たって、鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)第八条に基づき、鉱害の防止のため必要な措置を講ずることを求めている。

神谷宗幣(参政党)
鉱業に関連する税制について

1 鉱業者が日本国内で鉱業活動を行う際に、利益の国外流出防止、環境保護、国内企業との競争、公平性の確保及び国内産業の保護といった観点から、鉱業に関連する税制(鉱区税及び鉱産税等)はどのように設計されているか示されたい。

2 前記の税制は、国際的な基準に適合しているか示されたい。

3 前記の税制は、国益にどのような影響を及ぼしているか政府の見解を示されたい。

政府
六の1及び3について

御指摘の「利益の国外流出防止、環境保護、国内企業との競争、公平性の確保及び国内産業の保護といった観点」及びお尋ねの「国益にどのような影響を及ぼしているか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、鉱区税及び鉱産税を含め、地方税については、地方公共団体が行政サービスを行うために必要な経費を賄うために課されるものである。

その上で、鉱区税については、鉱業権者が地下の埋蔵鉱物を採掘する権利を与えられていることに着目し、地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第百七十八条の規定により、鉱区に対し、面積を課税標準として、当該鉱区の所在する都道府県において、当該鉱区の鉱業権者に課することとされており、休眠鉱区の防止をも意図して課されるものである。また、鉱産税については、鉱物の掘採、運搬等の事業活動によって生じる道路橋梁(りょう)の損傷等に伴う行政経費を踏まえ、鉱山と当該鉱山の所在する市区町村の応益的な関係に着目し、同法第五百十九条の規定により、鉱物の掘採の事業に対し、当該鉱物の価格を課税標準として、当該事業の作業場の所在する市区町村において、当該事業を行う鉱業者に課することとされているものである。

六の2について

お尋ねの「国際的な基準」の具体的に意味するところが明らかではないため、「適合しているか」とのお尋ねについてお答えすることは困難である。

「働き方改革」の成果と日本式経営の再評価に関する質問主意書(2024年11月28日)

質問

回答

一九四七年の労働基準法の制定以後、一九八七年の大改正、二〇一〇年代からの「働き方改革」を経て、日本の労働環境は変化を続けてきた。政府は「働き方改革」により、多様で柔軟な働き方を選べる社会を目指し、少子高齢化に伴う労働力不足や労働者のニーズの多様化に対応することとしている。しかし、こうした施策が真に日本の社会課題解決に貢献しているかは疑問が残る。

まず、長時間労働の是正が進められる一方で、法定労働時間の短縮がサービス残業の増加や業務負担の増大につながり、精神的な負担の増加やパワハラといった新たな問題が発生している。また、正社員と非正規社員の待遇格差も依然大きく、非正規社員の賃金は正社員の約七割にとどまり、ヨーロッパ諸国と比較しても依然格差がある。こうした現状では、将来に希望を持って働ける社会の実現には課題が残る。

「働き方改革」では日本の伝統的な労働慣行の見直しが必要とされ、欧米式経営を導入することの必要性が指摘されている。しかし、日本式経営の根幹である長期雇用や年功序列は、企業と労働者が長期的な信頼関係を築く土台であり、「和」の精神に基づく調和的な労働環境は、経済と社会の安定に寄与してきた。この長所を無視し、単に欧米式経営を導入することは適切ではない。

近年、海外でも日本式経営の価値が再評価されている。日本独自の強みをいかした労働環境と、安定した職場づくりこそ「働き方改革」に求められるのではないか。先進国では日本のみが三十年間、経済成長率が低迷し、賃金が停滞している現状も深刻である。名目賃金の上昇が物価上昇に追いつかず、実質賃金が下落している現状は早急に改善されるべきである。

現在、働き方改革関連法(以下「法」という。)の施行から五年を迎え、厚生労働省が法改正に向けた検討を進めているが、日本経済の成長、労働環境の改善、日本式経営の再評価を含めた総合的な見直しが必要と考える。

以上を前提に、以下質問する。

神谷宗幣(参政党)
政府はこれまでの「働き方改革」の成果をどのような基準で評価しているか。また、当初の目的を達成するため、優先的に改善が必要と考える点は何か示されたい。

政府
御指摘の「どのような基準で」及び「当初の目的」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府においては、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成三十年法律第七十一号。以下「働き方改革関連法」という。)附則第十二条において、「政府は、・・・この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後のそれぞれの法律・・・の規定について、・・・改正後の各法律の施行の状況等を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」等とされていることを踏まえ、現在、改正後の各法律の施行の状況について、それぞれ把握及び分析を行っている又は今後行うこととしているところであり、お尋ねの「これまでの「働き方改革」の成果」の「評価」については、お尋ねの「優先的に改善が必要と考える点」に係るものも含め、現時点でお答えする段階にない。

神谷宗幣(参政党)
法定労働時間の短縮が、意欲的に働きたい人の就労意欲を抑制する可能性について、政府はどのように評価しているか。今後、働きたい人が最大限の意欲を持って働けるような柔軟で多様な就労環境をどのように整備する方針か示されたい。

政府
二の前段について

御指摘の「法定労働時間の短縮」の意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に、これが、働き方改革関連法第一条の規定による労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第三十六条の改正により時間外労働の上限規制を設けたことを意味するのであれば、当該上限規制が御指摘の「意欲的に働きたい人の就労意欲を抑制する可能性」についての「評価」は行っていないが、当該上限規制については、「働き方改革実行計画」(平成二十九年三月二十八日働き方改革実現会議決定)において、「労使が先頭に立って、働き方の根本にある長時間労働の文化を変えることが強く期待される」とされたことを受け、労使団体等の合意を踏まえ、働き方改革関連法において導入されたものであり、これを進めていくことが重要であると考えている。

二の後段について

お尋ねについては、令和六年十二月二日の衆議院本会議において、石破内閣総理大臣が「「働き方改革」は、働く方々の生命と健康を守るための取組にとどまらず、働く方お一人おひとりが、多様で柔軟な働き方ができるようにするための取組も含むものであります。今後とも、こうした観点から、長時間労働の是正のみならず、副業・兼業やテレワークの促進、短時間正社員などの多様な働き方の活用、リ・スキリングを含む人への投資の強化など、働き方改革を進めてまいります。」と答弁したとおりである。

神谷宗幣(参政党)
非正規社員の待遇改善について、正社員への移行促進や待遇格差の縮小に向けて、更に具体的な施策が必要と考えるが、政府は今後、どのような新たな取組を検討しているか示されたい。

政府
お尋ねについては、政府としては、働き方改革関連法附則第十二条第三項において、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号)等について、「政府は、・・・この法律の施行後五年を目途として、(中略)改正後の各法律の施行の状況等を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」とされていること、また、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画二〇二四年改訂版」(令和六年六月二十一日閣議決定)において、「非正規雇用労働者の正社員転換の際の受け皿となり得る、職務限定社員、勤務地限定社員、時間限定社員等の多様な正社員や、無期雇用フルタイム社員にも、同一労働同一賃金ガイドラインの考え方を波及させていくことも含め、パート・有期雇用労働法等の在り方の検討を進める。」とされていること及び「非正規雇用労働者の正規化」について「更なる正規化の促進策を検討する。こうした取組により、不本意非正規雇用(正規雇用を希望している不本意の非正規雇用)の解消を図る。」とされていること等を踏まえ、今後必要な取組について検討してまいりたい。

 

神谷宗幣(参政党)
外国人労働者の受入れが低賃金労働の拡大を助長し、賃金の低迷を引き起こすリスクが指摘されているが、政府はこの点をどのように評価しているか。労働市場全体で賃金が抑制されることを防ぎ、健全な賃金上昇を実現するために、今後どのような対策が必要と考えるか示されたい。

政府
御指摘の「外国人労働者の受入れ」については、特定技能制度(出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)に基づく特定技能制度をいう。)において、多くの受入れを行っているところ、同制度においては、生産性の向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野に限り、日本人の雇用機会の喪失及び処遇の低下を防ぐ等の観点からの適切な受入れ見込数を設定しつつ、一定の専門性や技能を有し即戦力となる外国人を受け入れている。加えて、特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(平成三十一年法務省令第五号)において、特定技能の在留資格に係る活動を行おうとする外国人と雇用に関する契約を締結しようとする本邦の公私の機関に対し、当該外国人に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上である契約を締結することを義務付けていることから、御指摘のように「外国人労働者の受入れが低賃金労働の拡大を助長し、賃金の低迷を引き起こす」及び「労働市場全体で賃金が抑制される」とは考えていない。

いずれにせよ、御指摘の「賃金上昇」については、令和六年十一月二十六日に開催された経済財政諮問会議において、石破内閣総理大臣が「賃上げを起点とした成長と分配の好循環を実現することが重要であります。(中略)今年、三十三年ぶりの高い水準となりました賃上げの流れを継続・拡大するため、政府といたしましては、経済対策を早期に執行するとともに、来年度予算におきましても、来年の春季労使交渉に向け、企業の賃上げ環境の整備を図ってまいります。」と述べたとおりである。

神谷宗幣(参政党)
法定労働時間の短縮がかえって精神的な負担の増加やパワハラ問題を引き起こしている現状について、政府はこれをどのように捉え、どのような対策を講じているか。また、今後どのような対策を講じる方針か示されたい。

政府
御指摘の「法定労働時間の短縮」の意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に、これが、働き方改革関連法第一条の規定による労働基準法第三十六条の改正により時間外労働の上限規制を設けたことを意味するのであれば、御指摘の「現状」については把握していないが、当該上限規制の影響にかかわらず、御指摘の「精神的な負担の増加」及び「パワハラ問題」についての対策が必要であると考えており、御指摘の「精神的な負担の増加」への対策としては、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)の規定により、労働者の心の健康の保持増進を図るため、ストレスチェック制度(同法第七十条の二第一項の規定に基づき厚生労働大臣が公表している「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に定めるストレスチェック制度をいう。)の実施等職場におけるメンタルヘルス対策に係る取組を推進しているところであり、引き続き、事業者等に対し必要な指導や支援を行ってまいりたい。また、御指摘の「パワハラ問題」への対策としては、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)の規定により、いわゆるパワーハラスメントの問題に関する国、事業主及び労働者の責務を定めるとともに、事業主に対してパワーハラスメントによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう相談体制の整備その他の雇用管理上の措置を義務付けているところであり、引き続き、事業主の当該義務の履行確保の徹底を図り、ハラスメントのない職場づくりを一層推進してまいりたい。

神谷宗幣(参政党)
労働環境整備と経済成長の両立は重要な課題と考えるが、法施行五年後の見直しにおいて、この観点をどのように反映していく方針か、政府の見解を示されたい。また、労働環境整備と経済成長のバランスを取るための具体的な施策の方向性を示されたい。

政府
お尋ねの「労働環境整備」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「働き方改革実行計画」においては、「今後の取組の基本的考え方」として「働き方改革こそが、労働生産性を改善するための最良の手段である。生産性向上の成果を働く人に分配することで、賃金の上昇、需要の拡大を通じた成長を図る「成長と分配の好循環」が構築される。個人の所得拡大、企業の生産性と収益力の向上、国の経済成長が同時に達成される。」とされているところであり、働き方改革関連法附則第十二条の規定に基づく検討を行うに当たっても、このような考え方や労使の意見も踏まえながら、適切に対応してまいりたい。

神谷宗幣(参政党)
日本式経営の良さをいかすべきとの意見について、政府はどのように評価しているか。特に、長期的な企業成長や従業員の安定に寄与する日本式経営の強みが、現在の政策によって損なわれる懸念はないか政府の見解を示されたい。

政府
御指摘の「現在の政策」の具体的に意味するところが明らかではないため、「損なわれる懸念はないか」とのお尋ねにお答えすることは困難であるが、御指摘の「日本式経営」を御指摘の「長期雇用や年功序列」と解すれば、我が国では、長期的な人材育成等の観点から、大企業を中心に「長期雇用や年功序列」等の雇用慣行が見られてきたものと認識しており、お尋ねの「評価」については、こうした慣行は、長期的な視点に立った人材育成や組織の一体感の醸成等という優れた面もあるものと考えているが、個別の企業における労務管理については、労使の十分な話合いを通じて、進められることが重要であると認識している。

神谷宗幣(参政党)
法施行五年後の見直しにおいて、日本式経営の視点がどのように考慮されているか。さらに、日本独自の経営の強みをいかすための具体的な施策を検討する考えはあるか示されたい。

政府
お尋ねについては、働き方改革関連法附則第十二条において「政府は、・・・この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後のそれぞれの法律・・・の規定について、・・・改正後の各法律の施行の状況等を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」等とされていることを踏まえ、現在、改正後の各法律の規定について、それぞれ検討に着手したばかり又は今後検討を行うこととしているところであり、現時点でお答えすることは困難である。

神谷宗幣(参政党)
「職務給」によって職務内容を限定する動きが見られるが、職務を柔軟に捉え、同じ人員で多様な業務に対応できる体制を採ることで、労働人口減少への対応が可能になると考える。こうした柔軟な職務設計について、政府はどのように捉え、どのような対応方針を検討しているか示されたい。

政府
政府としては、御指摘の「職務」をどのように捉えるかも含め、従事すべき業務に関する事項等の労働条件については、個別の企業における労使の議論を踏まえて決定すべきものであると考えており、御指摘のように「対応方針を検討している」わけではない。

神谷宗幣(参政党)
法施行五年後の見直しに当たり、国民の意見をどのように反映させていくのか。労働組合の組織率が低い現状で、労使団体だけが関与する形式では労働者の意見が十分に反映されない可能性があるが、政府はこの点についてどのような工夫や対策を検討しているか示されたい。

政府
お尋ねの「工夫や対策」については、令和六年五月八日の衆議院厚生労働委員会において、武見厚生労働大臣(当時)が「多様な労働者の実情を正確に把握するために、様々な調査を実施をして、調査の結果をエビデンスとして審議会での議論に活用するなど、政策立案に当たって、労働者や企業の直面する課題や多様な労使の意見を施策に反映するよう努めております。」と答弁しているとおりであり、働き方改革関連法附則第十二条の規定に基づく検討を行うに当たっても、そのように努めてまいりたい。

外国資本による日本企業合併及び買収に関する質問主意書(2023年6月8日)

質問

回答

政府は、平成二十六年四月二十五日に第一回対日直接投資推進会議を開催して以降、外国資本の我が国への直接投資を推進してきた。人口減少が進んでいる現状において力強い成長を実現するためには、対日直接投資を活用し、海外活力を大胆に取り込んでいく必要があるというのがその理由である。

政府は、令和三年度に政策目標として、令和十二年に対日直接投資残高を八十兆円にするとの倍増目標を設定し、令和四年度には、日本企業の外資の出資受入れや、事業売却等を検討するガイダンスを作成するなどして対日M&Aの活用を促進してきた。また、令和五年四月十九日には、海外のファンドによる日本企業の買収例を取り上げた「対日M&A活用に関する事例集」を発表した。政府は、この事例集を「海外資本を活用して、企業変革・経営改善・飛躍的成長につなげた日本企業のケーススタディ」と紹介している。

これらに関連して、萩生田経済産業大臣(当時)も、令和四年四月二十七日の経済財政諮問会議において、先端半導体や洋上風力などへの海外からの投資拡大や海外スタートアップの誘致、内外企業の協業支援の強化、外国資本による日本企業の経営参画を円滑化する取組を進めることを明らかにした。

しかし、実態的に見るなら、これは政府自らが「日本の身売り」を推進しているに過ぎないということではないか。

外国資本による日本企業買収の最大の課題は、外資系に変わった日本企業が生み出す付加価値の全てが外国のものになることである。賃金こそ日本人従業員に支払われるものの、税引き後の利益は全て配当金として海外移転することになり、それが国内での投資拡大や富の蓄積につながらず、「資本空洞化」というべき循環が生まれることになる。さらに、日本企業が長年築いてきた経験やノウハウも全て外国に流出してしまうこともしばしばである。このように、日本人は労働力のみを提供しながら、企業による生産、活動の成果がほとんど海外に持ち去られるという在り方は、日本を事実上の「経済的植民地」に落とし込むことに等しく、やがては日本の産業基盤の掘り崩しで、富の蓄積と分配が国内に薄いものとなり、国全体の疲弊を招くことになることを危惧させる。

そこで、以下質問する。

神谷宗幣(参政党)
外国資本の手を借りて日本経済を成長させても、労働対価支払以外の利益から日本国民が疎外されれば、豊かな生活の実現は遠ざかり、やがては国民の生命、財産、国益を守り抜くことは困難になるのではないか。そもそも政府は、日本経済全体の成長力を強化し、地域経済の活性化を行うという目標において、国民所得の上昇、産業基盤の強化、社会福祉制度の充実をどのように図っていくのか具体像を示し、外国資本による日本企業買収をその中でいかなる位置付けに置いているのか示されたい。

政府
政府としては、お尋ねの「国民所得の上昇、産業基盤の強化、社会福祉制度の充実」を図るため、「経済財政運営と改革の基本方針二○二三」(令和五年六月十六日閣議決定)などを踏まえて、引き続き必要な取組を進めていく考えであり、その中で、同方針に記載しているとおり、「海外からヒト、モノ、カネ、アイデアを積極的に呼び込むことで我が国全体の投資を拡大させ、イノベーション力を高め、我が国の更なる経済成長につなげていく」観点から引き続き対日直接投資を促進していくこととしており、例えば、「海外からの人材・資金を呼び込むためのアクションプラン」(令和五年四月二十六日対日直接投資推進会議決定)に記載しているとおり、「海外からの投資や人材を受け入れることは、新たなアイデアやノウハウの導入を通じたイノベーションの発揚」につながると期待されることから、御指摘のように「労働対価支払以外の利益から日本国民が疎外され」るとは考えておらず、御指摘のように「外国資本の手を借りて日本経済を成長させても・・・国民の生命、財産、国益を守り抜くことは困難になる」とは考えていない。

神谷宗幣(参政党)
萩生田経済産業大臣は、令和四年四月二十七日の経済財政諮問会議において「経済安全保障に留意しながら、外国資本による日本企業の経営参画を円滑に進める方策について検討する」と述べている。政府は、外国資本による日本企業の経営参画を円滑に進めることが、どのように経済安全保障に貢献すると考えているのか。国益との両立をどのように図るのかを具体的に示されたい。

政府
政府としては、一についてで述べたとおり、「海外からヒト、モノ、カネ、アイデアを積極的に呼び込むことで我が国全体の投資を拡大させ、イノベーション力を高め、我が国の更なる経済成長につなげていく」観点から、御指摘の「外国資本による日本企業の経営参画」を含め、対日直接投資を促進しており、御指摘の「外国資本による日本企業の経営参画」については、一般論として申し上げれば、「国家安全保障戦略」(令和四年十二月十六日閣議決定)に記載している「我が国の自律性の向上、技術等に関する我が国の優位性、不可欠性の確保等」等の観点から、お尋ねの「経済安全保障」の確保に「貢献」し得るものであると考えている。

また、安全保障上の懸念がある外国投資家による対日直接投資については、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)に基づいて適切に対応するなど、我が国の安全保障に万全を期する取組を進めており、こうした取組を通じて、御指摘の「外国資本による日本企業の経営参画」について、「国益との両立」を図っていく考えである。

神谷宗幣(参政党)
経済産業省が作成した「対日M&A活用に関する事例集」では、外資系PEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)が日本企業をM&Aをすることを推奨している。

PEファンドは、機関投資家や個人投資家から集めた資金を非上場企業に投資し、企業価値を高めるためにリストラや資産売却、経営者派遣などを行い、その後、買収した企業を売却して出資者に利益配当することを目的とした投資組合である。PEファンドは、出資者に配当できる利益を最大化することを目指していることからすれば、このようなM&Aを推奨すれば、当該日本企業で働く労働者の多くが職を失い、その手当に国全体が追われることとなりながら、一方で企業そのものは転売の対象とされて「転売益」目当てで転がされてしまう可能性が極めて高い。この点について、政府は、どのような予測を行っているのか。

政府
経済産業省としては、御指摘の「PEファンド」による「対日M&A」については、「対日M&A活用に関する事例集」(令和五年四月十九日経済産業省貿易経済協力局投資促進課作成。以下「事例集」という。)に掲載しているとおり、日本企業において御指摘の「対日M&A」を受け入れたことにより、従業員数や売上の増加等の経営状況の改善を達成した多数の事例が存在すると考えられることから、御指摘のように「PEファンド」による「M&Aを推奨すれば、当該日本企業で働く労働者の多くが職を失い、その手当に国全体が追われることとなりながら、一方で企業そのものは転売の対象とされて「転売益」目当てで転がされてしまう可能性」が「極めて高い」とは考えていない。

神谷宗幣(参政党)
「対日M&A活用に関する事例集」の作成者には、PEファンドによる日本企業へのM&Aが増加することで、ビジネス上のメリットを得ることができる外資系PEファンドやM&Aに関わる助言を行うことが収入となる法律事務所、M&Aの手数料を得ることができるM&A仲介会社などがいる。経済産業省は、日本企業の利益に立つのではなく、日本企業買収で利益を上げようとする外国資本のための手引きを外国資本側の代理人たちが作成することを手助けしていることにならないのか。事例集の中立性、透明性の確保を図るために、作成者の選定や情報の信頼性を日本の国益、日本企業や労働者の立場、利益に立って精査すべきと考えるが、どのような措置を採ったのか、具体的に示されたい。

政府
経済産業省としては、事例集の作成に携わった「対日M&A課題と活用事例に関する研究会」の構成員の御指摘の「選定」に当たって、御指摘のように「日本企業や労働者の立場、利益」等を勘案しながら候補者の「精査」を行った上で、経済学、経済安全保障等の幅広い分野から、専門的知見を有する者を同研究会の構成員に任命する中で、事例集に法律やM&Aの実務に関する専門的知見を取り入れ、事例集を国際的な潮流を踏まえたものにするため、御指摘の「法律事務所」及び「M&A仲介会社」に所属する者を任命しており、また、事例集の作成過程において、御指摘の「情報の信頼性」についても「精査」を行っているため、「経済産業省は、日本企業の利益に立つのではなく、日本企業買収で利益を上げようとする外国資本のための手引きを外国資本側の代理人たちが作成することを手助けしている」との御指摘は当たらないと考えている。

日本政府の半導体政策に関する再質問主意書(2023年5月17日)

質問

回答

四月七日に提出した「日本政府の半導体政策に関する質問主意書」(第二百十一回国会質問第五一号。以下「質問主意書」という。)に対する四月十八日付けの政府答弁書(以下「答弁書」という。)は、質問に対して必ずしも真摯に回答しておらず、少なからず論理的に矛盾した内容となっている。

現下の半導体不足による製造業の甚大な経済損失の重要性に鑑み、特に答弁書において看過できない問題点に焦点を絞って、改めて以下質問する。なお、質問の要点に対して必ずしも明確な回答が行われず、又は回答内容に論理的な矛盾が認められる場合には、国民からの負託に応えるため、再度質問主意書を提出せざるを得ないことに留意されたい。

神谷宗幣(参政党)
半導体政策の立案・決定プロセスについて、政府が国家的な課題解決に取り組む場合、現状を適切かつ定量的に把握・調査し、その原因を分析し、それに対する複数の解決策から最も効果的かつ適切な方法を検討し、政府の政策として実行していくことが必要である。しかし、日本政府が当然実施しなければならない政策の立案・決定プロセスについて、答弁書「一について」では、米国政府や日本の民間シンクタンクが必要な検討を実施しているにもかかわらず、「半導体の供給不足が自動車の生産に及ぼす影響について定量的にお示しすることは困難」と回答するのみで、安易に分析を断念していると考えざるを得ない。

他方で、「国内産業への半導体の安定的な供給に向けては、半導体の国際的な需給の動向等を適切に把握しつつ、国内の製造基盤強化に向けた補助金による支援等の施策を戦略的に講じて」いるとしているが、答弁書「二の5について」においては、現状の半導体の供給過剰の状況について適切な分析を行わず、半導体の国際的な需給の動向等についても適切な把握がなされていないことが明らかになっている。

国内の製造基盤強化に向けた補助金による支援等の施策は、現状の課題を適切かつ定量的に把握・調査するとともに、その解決策としての有効性を厳格に分析し、最適案を選択しなければならない。特に補助金による支援先の選定及び補助金の額については、こうした適切かつ厳格な政策立案・決定プロセスを通じて決定されなければ妥当性を欠いてしまい、国民の血税を投じた施策は効果がなく膨大な無駄遣いとなってしまう。

以上のことから、令和三年度から政府が決定した半導体政策のうち、特に特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(以下「5G促進法」という。)に基づく支援策については、政策の立案・決定プロセスが完全に間違っているものと認めざるを得ない。この点について政府の見解を示されたい。

政府
御指摘の「政策の立案・決定プロセス」の意味するところが必ずしも明らかではないが、経済産業省においては、半導体に係る政策の検討に際し、半導体の国際的な需給の動向等について、各種の統計等の公表資料の他、公表しないことを前提として行う事業者や外国の政府機関等との情報交換等を通じて、適切に把握しているところである。

神谷宗幣(参政党)
5G促進法に基づく半導体政策の妥当性について、答弁書「二の1について」において、5G促進法第十一条第一項の特定半導体生産施設整備等計画の認定に係る形式的な手続については例示しているが、同条第三項第一号に規定する「計画の内容が指針に照らし適切なものであること」については言及されていない。特定高度情報通信技術活用システムの開発供給等の促進に関する指針第三の二の規定によると「特定半導体生産施設整備等は、国際的に特定半導体の生産能力が限られている状況においてもその需給の変動に対応できるよう我が国の技術の向上により特定半導体の国内における安定的な生産を確保すること、及び我が国における特定半導体の生産に関係する産業の発展に資すること」とされており、特定半導体の国内における安定的な生産を確保するための「我が国の技術の向上」の担い手は、明らかに外資系企業ではなく我が国に帰属する国内企業でなければならないとしている。このことは、5G促進法第一条に明記されている法律の目的を達成するためには、国内に工場があるだけでなく生産技術が我が国の国内企業で保持されることが必要であることを裏付けている。特定半導体生産施設整備等計画の認定の申請があった場合に、5G促進法第十一条第三項に適合すれば、いずれの国の事業者でも認定するとの政府の見解に従えば、国内に工場を持つならば外国企業又は外資系企業の技術も「我が国の技術」と定義されているかのようにみられるが、この点について政府の見解を示されたい。

政府
特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(令和二年法律第三十七号。以下「法」という。)第十一条第一項の認定(以下「認定」という。)に際しては、特定高度情報通信技術活用システムの開発供給等の促進に関する指針(令和二年総務省・財務省・経済産業省告示第一号)に基づき、「特定半導体が国内外の需給状況に照らして過剰生産とならないよう配慮」することとしており、当該認定の申請に係る特定半導体(法第二条第四項に規定する特定半導体をいう。以下同じ。)の中長期的な需給について勘案している。

神谷宗幣(参政党)
5G促進法に基づく半導体政策の妥当性について、答弁書「二の2について」において、認定を受けた事業者に対して国内向けに優先的に出荷する義務を課していない理由として、マラケシュ協定附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第十一条の規定を根拠としている。しかし、特定半導体が逼迫し国内の半導体購入企業に優先的に供給することが求められる事態とは、半導体の供給逼迫により日本国内の製造業が危機的な状況に追い込まれている事態にほかならず、まさに同協定第十一条第二項(a)に規定する「食糧その他輸出締約国にとって不可欠の産品の危機的な不足を防止し、又は緩和するために一時的に課する」必要がある状況である。したがって、認定を受けた事業者に対して国内向けに優先的に出荷する義務を課すことができない理由には当たらないと考えられるが、政府の見解を示されたい。

また、特定半導体生産施設整備等計画は、特定半導体等の需給が逼迫した場合における増産、特定半導体等の生産能力を強化するための投資及び研究開発その他特定半導体の国内における安定的な生産に資する取組が行われると見込まれる等を認定の要件としているが、当該事業体が、特定半導体等の需給が逼迫した場合に日本企業への優先的な供給を行わず、国際的な半導体市場に高値で販売するという利益優先の企業行動を行った場合は、日本の国内産業を救済し、経済安全保障に寄与することにはならない。特に、答弁書で回答されているように、政府がマラケシュ協定により国内向けに優先的に出荷する義務を課すことができないとしている以上、仮に政府からの要請を受け、日本の顧客向けの供給拡大について誠実に協議に応じたとしても、一般的に株主利益を優先する傾向が強い外資系企業である当該事業体が、利益確保よりも国内向けに優先的に出荷することを選択する可能性は低いと考えられるが、政府の見解を示されたい。

政府
御指摘の「特定半導体が逼迫し国内の半導体購入企業に優先的に供給することが求められる事態」が、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成六年条約第十五号)附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第十一条の例外的な場合に該当するかどうかについては、個別の事案における具体的な事情を踏まえて判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難であるが、法第十二条第二項に基づき、認定を受けた者が認定に係る計画に従って特定半導体生産施設整備等(法第二条第五項に規定する特定半導体生産施設整備等をいう。)を実施していないと認められるときは、当該認定を取り消すことができることとされている。このため、御指摘のように「利益確保よりも国内向けに優先的に出荷することを選択する可能性は低い」とは考えていないが、政府としては、国内において特定半導体の安定的な供給が実現されるよう適切に対応してまいりたい。

神谷宗幣(参政党)
5G促進法に基づく半導体政策の妥当性について、答弁書「二の3について」において回答されているように、TSMC等に係る計画の認定により、我が国における半導体企業の関連産業の集積や人材の育成等に資する効果については、一定程度の効果は見込まれるが、これらの外資系企業への支援は、競合する国内の半導体企業の競争力を阻害することになるのではないか。外資系企業への支援が国内産業の国際競争力の強化と特定半導体生産に関係する産業の発展に資するとの基本理念と矛盾しているのではないか。その点について政府は何ら言及していない。前者の効果が日本の半導体企業の競争力を阻害するという負の影響を上回るような支援策、または負の影響を補完し軽減するような政策が採られる予定があるのか、政府の見解を示されたい。

政府
先の答弁書(令和五年四月十八日内閣参質二一一第五一号)二の3についてで述べたとおり、法は、認定を受ける事業者がいずれの国の事業者であるかを問うものではないところ、御指摘の「外資系企業」であっても、我が国において特定半導体の生産施設等を整備し、生産を行うことは、半導体製造装置や半導体材料等の関連産業の集積、人材育成等を通じた我が国における半導体関連技術の向上や半導体関連産業の発展に資するものであり、法第三条第二項の考え方に沿ったものであると考えている。

神谷宗幣(参政党)
以下ついて、政府の見解を示されたい。質問主意書でも言及しているように、二〇二〇年一月から二〇二三年二月までの用途別及び種類別の日本国内と世界の半導体の需給バランスのデータに係る我が党から経済産業省への問合せに対して、「お示しできる用途別、種類別の日本国内および世界の需給バランスに関するデータを保有していない」と回答したことを踏まえれば、政府はTSMC等が国内工場で生産予定の特定半導体について需給状況の推移を把握していないと考えざるを得ない。他方で、答弁書「一について」においては、政府は「半導体の国際的な需給の動向等を適切に把握」するとしており、これら答弁書の回答は、論理的に矛盾している。

政府
これまでに認定をした特定半導体生産施設整備等計画(法第十一条第一項に規定する特定半導体生産施設整備等計画をいう。)については、我が国では他の企業が有していない生産技術に係るものと認識しており、「競合する国内の半導体企業の競争力を阻害する」、「国内産業の国際競争力の強化と特定半導体生産に関係する産業の発展に資するとの基本理念と矛盾している」及び「税金を使って外資系企業を支援して余剰な半導体を製造させる」との御指摘は当たらないものと考えている。

神谷宗幣(参政党)
以下ついて、政府の見解を示されたい。答弁書「二の5について」において、「供給過剰」の意味することが必ずしも明らかでないとしているが、二〇二三年一月四日付日経新聞電子版は「半導体の供給過剰、解消は二十三年秋以降 車向けは逼迫続く」と報じている。また、二〇二三年一月二十四日付JETROの地域・分析レポートによると、二〇二三年の集積回路(IC)の製品別市場予測では、「メモリーICが前年比十七・〇%減と大きく落ち込む一方、ロジックICは同一・二%減、マイクロICは同四・五%減」となっており、「メモリーIC大手の米国マイクロンテクノロジーや、日本のキオクシアも、市況の悪化を受けた生産調整や投資の抑制に動いている」としている。さらに、二〇二三年一月十二日付ロイター電子版によると、TSMCも「二十三年の設備投資計画を前年比で減額」としている。これらの報道を踏まえれば、5G促進法に基づいて支援が行われるTSMC等三社で生産される予定の特定半導体は現時点で明らかに供給過剰になっているとみられ、現下で不足しているのは、TSMC等三社では生産される予定のない車載半導体等のレガシー半導体であることは明らかである。

政府
これまでに認定をした特定半導体生産施設整備等計画(法第十一条第一項に規定する特定半導体生産施設整備等計画をいう。)については、我が国では他の企業が有していない生産技術に係るものと認識しており、「競合する国内の半導体企業の競争力を阻害する」、「国内産業の国際競争力の強化と特定半導体生産に関係する産業の発展に資するとの基本理念と矛盾している」及び「税金を使って外資系企業を支援して余剰な半導体を製造させる」との御指摘は当たらないものと考えている。

神谷宗幣(参政党)
以下ついて、政府の見解を示されたい。答弁書「二の5について」では、特定半導体について、事業者が需給の動向を適切に踏まえつつ生産を行い、国内で安定的に供給されることが重要だとする一方で、答弁書「二の2について」で「法は、認定を受けた事業者に対して国内向けに優先的に出荷する義務を課してはいない」と回答するなど、供給過剰への対応についての当事者任せの姿勢は、国民の目線から見れば、政府は政策決定者としての責任の自覚に欠けていると感じざるを得ない。

政府
御指摘の「特定半導体が逼迫し国内の半導体購入企業に優先的に供給することが求められる事態」が、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成六年条約第十五号)附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第十一条の例外的な場合に該当するかどうかについては、個別の事案における具体的な事情を踏まえて判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難であるが、法第十二条第二項に基づき、認定を受けた者が認定に係る計画に従って特定半導体生産施設整備等(法第二条第五項に規定する特定半導体生産施設整備等をいう。)を実施していないと認められるときは、当該認定を取り消すことができることとされている。このため、御指摘のように「利益確保よりも国内向けに優先的に出荷することを選択する可能性は低い」とは考えていないが、政府としては、国内において特定半導体の安定的な供給が実現されるよう適切に対応してまいりたい。

神谷宗幣(参政党)
以下ついて、政府の見解を示されたい。二〇二二年四月二十六日の参議院内閣委員会経済産業委員会連合審査会において、萩生田経済産業大臣(当時)は、我が国の半導体産業凋落について「原因の一つは当時の政府が世界の半導体産業の潮流を見極めることができず、適切かつ十分な施策を、政策を講じてこなかったこと」であると反省の答弁を行っている。東芝が半導体部門を売却し、キオクシアが外資系企業とならざるを得なかったのは、東芝による米国ウェスチングハウス社の買収の失敗が遠因となっており、その買収には経済産業省が深く関与していたともメディアで報道されている。半導体政策については、萩生田経済産業大臣も認めているように、日本政府は過去において数々の失策を重ねてきた。今回の5G促進法に基づく半導体政策が、過去の轍を踏んで、国内の半導体企業の競争力を阻害することで更に弱体化させつつ、税金を使って外資系企業を支援して余剰な半導体を製造させることにならないか懸念される。

政府
これまでに認定をした特定半導体生産施設整備等計画(法第十一条第一項に規定する特定半導体生産施設整備等計画をいう。)については、我が国では他の企業が有していない生産技術に係るものと認識しており、「競合する国内の半導体企業の競争力を阻害する」、「国内産業の国際競争力の強化と特定半導体生産に関係する産業の発展に資するとの基本理念と矛盾している」及び「税金を使って外資系企業を支援して余剰な半導体を製造させる」との御指摘は当たらないものと考えている。

最先端半導体政策(ラピダス株式会社)に関する質問主意書(2023年5月8日)

質問

回答

日本の半導体政策に関して、経済産業省は二〇二二年十一月十一日、二nm以下の次世代半導体の製造基盤確立に向けた研究開発プロジェクトの採択先として、Rapidus株式会社(以下「ラピダス」という。)に決定したと発表した。

ラピダスには、キオクシア、ソニーグループ、ソフトバンク、デンソー、トヨタ自動車、NEC、NTT及び三菱UFJ銀行の計八社が七十三億円を出資しているほか、経済産業省は、ポスト5G基金事業における次世代半導体の研究開発プロジェクトとして開発費七百億円を支援するとしている。また、二〇二三年には三千億円規模の補助金を追加するとの報道もある。

他方で、同省が二〇二二年十一月に公表した「次世代半導体の設計・製造基盤確立に向けて」においては、最先端半導体戦略として、まず四十五nmのレガシー半導体はルネサスエレクトロニクスを、二十八~十二nmはJASM(TSMC熊本工場誘致)を支援すると記載しており、二nm以下の最先端半導体はラピダスへ支援するとしている。

日本の半導体政策全体を鳥瞰して、日本政府が発表しているこれらの最先端半導体の国家戦略が妥当なものであるかについて、以下質問する。

神谷宗幣(参政党)
半導体は、線幅が小さければ小さいほど技術確立の難易度は高くなり、最先端半導体へのニーズ動向についても不透明な要素が多くなる。「ラピダスの最大の課題は、IBM以外の企業からの需要をほとんど見通せていないことだろう」、「出資した会社を含め、半導体を使う側の企業が最先端の半導体を使ってどのような製品を生み出すか、戦略を描かなければラピダスは空回りしてしまう。「出口」での取り組みが将来を決める」といった二nmの最先端半導体への投資に対する懐疑的な報道もある。

一方、前述のように最先端半導体戦略の対象となっている半導体領域は、四十五nm、二十八~十二nm及び二nm以下であり、十二~三nmの最先端半導体は空白領域になっている。

二十八nm以下の先端及び最先端半導体について、我が国にはそれを担う国内半導体メーカーがいないため、その領域をリードしていく国内メーカーを育成していくことが、5G促進法等の政策目標であるとすれば、技術的及び需要的な不確実性が低い十二~三nmの次世代半導体の国産化にも積極的に取り組むべきではないか。この点について、政府の見解を示されたい。

政府
御指摘の「十二~三nmの最先端半導体」については、特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(令和二年法律第三十七号)に基づき、同法第二条第四項に規定する特定半導体に該当しないものを除いては、我が国における安定的な生産を確保すること等を旨とし、生産を行う事業者がいずれの国の事業者であるかにかかわらず、我が国における生産施設の整備等の促進に努めることとしており、お尋ねの「積極的」な取組の内容については、国際的な技術動向、市場動向等を踏まえながら検討していく考えである。

神谷宗幣(参政党)
二〇二三年三月一日の読売新聞の報道によると、二〇二七年の量産開始に向けたラピダスの事業では、技術の確立までに二兆円、量産ラインの準備に三兆円規模の投資が求められるとされている。それに対して、二〇二二年十一月の経済産業省の発表では七百億円の支援と民間出資が七十三億円、二〇二三年二月九日付けのダイヤモンドの記事によると、経産省は三千億円の追加支援の予定と報じられているが、それらを合わせても合計五兆円の費用にははるかに届かない。

一方で、米政府は、国内の半導体生産や開発を加速させるため、五百二十七億ドル(約七・二兆円)の補助金を投じる「CHIPS・科学法」を成立させている。最先端半導体への支援に対する日米間の実現に向けた取組姿勢が全く異なっているように考えられるが、政府は、次世代半導体の国産化に対して不退転の決意をもって臨み、一定の成果が見込まれるまでの間は、辛抱強く必要な規模の支援を継続していく覚悟はあるのか。政府の見解を示されたい。

政府
御指摘の「CHIPS・科学法」については、御指摘の「最先端半導体への支援」のみを目的としたものではないと認識しているが、いずれにせよ、政府としては、二千二十年代後半に、我が国において、御指摘の「次世代半導体」の設計及び製造の基盤の構築が実現されるよう、これまで、御指摘の「ポスト5G基金事業における次世代半導体の研究開発プロジェクト」、米国等の政府、企業等との連携等に取り組んできているところであり、外部有識者による同プロジェクトの進捗状況の確認及び国際的な技術動向、市場動向等の様々な状況の分析を踏まえながら、引き続き、必要な取組を進めていく考えである。

外国投資家の株式保有割合の増加に関する質問主意書(2022年10月24日)

質問

回答

上場企業に占める外国投資家(外国法令に基づいて設立された法人その他の団体又は外国に主たる事務所を有する法人その他の団体をいう。以下同じ。)の株式保有比率は、一九九〇年に五%未満だったところ、この三十年間で三十%を超え、大幅に増加している。かつては、日本企業の代表格であったシャープ、日産、ソニー、富士通、東芝なども、既に五十%以上の株式が外国投資家に保有されている。

この点、政府は、一九九〇年代以降、株式持ち合いの解消、三角合併の解禁、規制緩和などにより、上場株式における外国投資家の保有割合を増加させるための政策をとってきた。

一般的に、外国投資家の保有割合が高い企業の投資家に対する配当は、年々増加傾向にある一方で、人件費や設備投資が抑制される傾向がある。こうして国内で生み出された富の国内への還元率が減少した結果、三十年にわたり国内労働者の賃金が上がらない悪循環に陥っていると考える。行き過ぎた外国資本への依存は、国内の富の海外流出を促進する結果を招く。このままでは、外国の植民地のような経済に陥りかねない。

我が国の国益を守るため、一定の基準や対処策が必要である。

このような観点から、以下、質問する。

神谷宗幣(参政党)
一九九〇年代以降、政府がこのような外国投資家の対日直接投資を増加させる政策をとった目的は何か。外国投資家の株式保有割合の適正水準について、政府はどう認識しているか。現状は適正水準の範囲内と考えているのか。政府の認識を明らかにされたい。

政府
お尋ねの「目的」については、「このような外国投資家の対日直接投資を増加させる政策」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、対日直接投資の促進については、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二二」(令和四年六月七日閣議決定。以下「骨太方針」という。)において「旺盛な海外需要を取り込み、我が国経済の活力や長期的な成長力を高めるため、イノベーション創出やサプライチェーン強靱化等につながる対日直接投資を戦略的に推進する。」としているところである。

また、御指摘の「適正水準」については、御指摘の「外国投資家の株式保有割合」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、我が国における上場企業の発行済株式総数に占める御指摘の「外国投資家」が保有する株式の数の割合や、個々の上場企業の発行済株式総数に占める御指摘の「外国投資家」が保有する株式の数の割合等について、政府として何らかの「適正水準」を定めているものではなく、お尋ねの「適正水準の範囲内」であるか否かについてお答えすることは困難である。

神谷宗幣(参政党)
現行法では、「航空法」、「電波法」、「放送法」、「NTT法」等において、外国投資家の保有比率が一定割合に制限されているところ、それぞれどのような目的で規制を設けているのか、その立法趣旨を示されたい。

政府
御質問は、お尋ねの各法律における外国人等の議決権の割合に着目した規制に係るものであると理解するが、当該各法律におけるこうした規制の趣旨については、次のとおりである。

航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)においては、国際民間航空条約(昭和二十八年条約第二十一号)に定める自国の領域上の空間において有する完全かつ排他的な主権の観点から、二国間交渉で獲得した国際航空運送に係る権益を日本国民が実質的に支配する航空会社に分配し、及び国内航空運送を同様の航空会社のみに行わせる必要があることから、外国人等の議決権の割合に着目した規制を設けている。

電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)においては、無線局が利用する電波は有限希少なものであり、原則として日本国民による利用を優先させる必要があることから、外国人等の議決権の割合に着目した規制を設けている。

放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)においては、放送は、国の政治、文化、社会等に多大な影響を与えるメディアであることから、外国人等の議決権の割合に着目した規制を設けている。

日本電信電話株式会社等に関する法律(昭和五十九年法律第八十五号)においては、日本電信電話株式会社等は、国民生活に必要不可欠な電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保に寄与すること等といった責務を有し、我が国の国民生活や社会活動を支える重要な事業者であることから、外国人等の議決権の割合に着目した規制を設けている。

神谷宗幣(参政党)
外国投資家が原子力発電などの重要インフラ、防衛に関わる事業などを営む上場企業の株式を取得する際には外国為替及び外国貿易法に基づき事前届出が義務付けられているところ、現在、事前届出が行われた企業は何社あるか。当該企業名、外国投資家名を明らかにされたい。

政府
御指摘の「事前届出が行われた企業」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)第二十七条に基づく対内直接投資等(同法第二十六条第二項に規定する対内直接投資等をいう。以下同じ。)又は同法第二十八条に基づく特定取得(同法第二十六条第三項に規定する特定取得をいう。以下同じ。)に係る事前届出(以下「事前届出」という。)の件数は、令和三年度において二千八百五十九件であり、そのうち株式取得に関するものは、千四百五件である。

また、お尋ねの「企業名、外国投資家名」について、事前届出を行った外国投資家(同法第二十六条第一項に規定する外国投資家をいう。以下同じ。)の名称及び当該外国投資家による対内直接投資等又は特定取得が行われた会社の名称については、公にすることにより当該外国投資家及び会社の正当な利益を害するおそれがあることから、答弁を差し控えたい。

神谷宗幣(参政党)
令和四年三月二十五日の衆議院財務金融委員会において、鈴木俊一国務大臣は、「企業の利益につきましては、株主への配当、配分だけではなくて、持続的な成長のために新事業等に再投資すること、長期的な視点で賃金など従業員等へ人材投資をしていくこと、これが重要なことではないか」と答弁した。これについて、現在、政府が検討している施策を示されたい。

政府
お尋ねについては、令和四年三月二十五日の衆議院財務金融委員会において、鈴木財務大臣が、民間企業の経営について、「企業が成長の果実をどのように還元したり再投資していくかということにつきましては、これは、基本的には、各企業において、その置かれた状況に基づき経営判断をすべき事柄であると思います。」と答弁しているところであり、その上で、政府としては、我が国の持続的な成長には、需要創出と同時に、供給力を高める効果も持つ投資の拡大が不可欠であり、骨太方針において、「人への投資」、「科学技術・イノベーションへの投資」、「スタートアップへの投資」、「GXへの投資」及び「DXへの投資」を重点投資分野に位置付け、大胆な重点投資を、官民連携の下で中期的かつ計画的に推進することとしているところである。

神谷宗幣(参政党)
国が外国投資家による新たな株式取得を規制することができる現行法制上の手段としては、どのようなものが挙げられるか。また、外国投資家の取得した我が国の上場企業の株式保有割合を減少させることができるとすれば、現行法制上、どのような方法が挙げられるか。

政府
お尋ねの「国が外国投資家による新たな株式取得を規制することができる現行法制上の手段」については、二についてで述べたとおり、一定の業種において外国人等の議決権の割合に着目した規制を行っていることに加え、外国為替及び外国貿易法において、財務大臣及び事業所管大臣は、国の安全等を損なうおそれがある業種を定め、外国投資家が当該業種を営む上場会社の株式を一パーセント以上取得しようとする場合や、当該業種を営む非上場会社の株式を取得しようとする場合には、原則として、事前届出を求めることとしている。

また、「外国投資家の取得した我が国の上場企業の株式保有割合を減少させることができる」「現行法制上」の「方法」については、同法において、事前届出を行わなければならない外国投資家が、事前届出をせずに対内直接投資等又は特定取得を行った等の場合には、財務大臣及び事業所管大臣は、当該外国投資家に対し、当該外国投資家が取得した株式の全部又は一部の処分その他必要な措置を命ずることができることとしている。

神谷宗幣(参政党)
本質問主意書の趣旨と同様の理由で外国投資家の株式保有を規制している海外の法制度について、具体的な例を挙げられたい。

政府
御指摘の「本質問主意書の趣旨と同様の理由」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

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