質問主意書

地方行政への国の介入強化に関する再質問主意書(2024年4月4日)

質問

回答

私が提出した「地方行政への国の介入強化に関する質問主意書」(第二百十三回国会質問第七五号)(以下「本件質問主意書」という。)に対して、答弁(内閣参質二一三第七五号)(以下「本件答弁」という。)がなされた。

神谷宗幣(参政党)
本件質問主意書の質問一に関連して、再質問する。

1 政府は、「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申」(以下「本件答申」という。)を踏まえ、具体的にどのような検討を行ったか。また、その過程で災害対策基本法や感染症法など、既存の個別法の改正で対応が可能か否かの検討を行ったか明らかにされたい。

2 本件答弁では、本件答申を引用して、個別法の改正と国と地方の連携の必要性が認識されたとの点に触れられていたが、国の一般的指示権の具体的な必要性に対する直接的な答弁は得られなかった。そのため、以下の点について再度問う。

(1) 地方自治法改正案における国の一般的指示権を導入する必要性に至った具体的な事例や状況について、詳細を提示されたい。具体的にどのような場合に既存の法律体系や制度では対応が困難であり、国の一般的指示権が必要とされるのか、その根拠を明らかにされたい。

(2) 地方自治体の自主性に基づく対応だけでは解決が困難であった過去の具体例があれば、その状況と、国の一般的指示権があればどのように異なる結果をもたらしていたかについて、具体的な説明をされたい。

政府
一の1について

お尋ねについては、先の答弁書(令和六年三月二十九日内閣参質二一三第七五号。以下「先の答弁書」という。)一及び二の後段についてでお答えしたとおりである。

一の2の(1)及び(2)の前段について

「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申」(令和五年十二月二十一日地方制度調査会)において、「新型コロナ対応に関しては、内閣官房「新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議」が取りまとめた「新型コロナウイルス感染症へのこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に向けた中長期的な課題について」等において、様々な課題の整理が行われている。」「国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の役割分担に関しては、当時の感染症法の規定では想定されない事態に直面して、例えば、令和二年二月にダイヤモンド・プリンセス号船内で多数のコロナ患者が発生した際には、入院する患者の移送について都道府県の区域を超えた対応が必要になり、国が調整の役割を果たした。また、同年春、患者数の大幅な増加に伴い保健所設置市区単位では病床の効率的な利用が困難となった際には、国の要請により都道府県に「都道府県入院調整本部」が設けられた等、感染症法上の役割分担にかかわらず、事実上、国や都道府県が一定の役割を担わざるを得ない事態に至った。新型インフル特措法に基づいて使用制限を要請する施設の範囲や、営業時間の短縮を要請する時間帯について、国と都道府県との間で考え方の相違によって調整が難航した事例もあり、一体となって対応できる仕組みの必要性が指摘されている。こうした課題を踏まえ、その都度、新型インフル特措法、感染症法について必要な改正が行われてきた。しかしながら、こうした困難な事態を招いたという事実は、地方自治法を含め、現行法制による国と地方公共団体の関係における国の役割、都道府県と保健所設置市区の関係における都道府県の役割が、大規模な災害、感染症のまん延等の国民の安全に重大な影響を及ぼす事態に備える個別行政分野の関係法(以下「個別法」という。)が想定しない事態に対し、十分に対応していなかったことを示すものと評価しなければならない。」「個別法は、これまで発生した災害、感染症のまん延等の事態や、その対応に当たり生じた課題等を踏まえて、備えるべき事態を適切に想定し、必要な規定を設けており、その見直しも重ねられている。しかしながら、今般の新型コロナ対応や、近年の自然災害の発生状況は、個別法において想定されていなかった事態が生じること、こうした事態であっても国と地方が連携し、総力を挙げて取り組む必要があることを、改めて認識させるものであった。これらの課題を踏まえると、まずは、個別法において備えるべき事態を適切に想定し、必要な規定が設けられ、これによって、個別法及び地方自治法上の国等の権限が適切に行使されるようにする必要がある。その上で、国と地方公共団体の間及び地方公共団体相互間の関係に関する地方自治法の規定について、平成十二年の地方分権一括法によって構築された一般ルールを尊重しつつ、大規模な災害、感染症のまん延等の国民の安全に重大な影響を及ぼす事態において、国民の生命、身体又は財産の保護のため、国・地方を通じ的確かつ迅速な対応に万全を期す観点から、所要の見直しを行う必要がある。」とされており、今国会に提出している地方自治法の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)による改正後の地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号。以下「新法」という。)第二百五十二条の二十六の五第一項の規定に基づく指示等の国の関与はこれを踏まえたものである。

一の2の(2)の後段について

お尋ねについては、仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたい。

神谷宗幣(参政党)
本件質問主意書の質問四では、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」が「発生するおそれがある場合」とは、誰がどのような基準で判断するのかについて問うた。しかし、本件答弁では、「これらの規定に基づく関与等を行う主体が、事態の規模及び態様、当該事態が発生する可能性の程度等に即して判断する」との答弁がされた。

しかし、この規定が実際にどのような事態が発生した場合にどのように適用されるかという具体的な適用基準は不明確なままである。

政府は、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」という条件をどのように具体化し、基準を設定する予定か。また、この曖昧さを解消し、恣意的な運用を防ぐためのガイドラインなどを設ける計画はあるか示されたい。

政府
二及び三について

お尋ねの「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」については、先の答弁書三についてでお答えしたとおりであり、また、三のお尋ねについてはその具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにしても、改正法案が成立した場合には、新法第二百五十二条の二十六の五第一項の規定に基づく指示等の国の関与は、目的を達成するために必要な最小限度の範囲で、地方公共団体の自主性・自立性に配慮して行われるよう、政府として適切な施行に努めてまいりたい。

 

神谷宗幣(参政党)
地方自治法改正案に基づき国の介入が行われた後、その適正性や効果を評価し、必要に応じて変更を行うための枠組みが検討されているか示されたい。

政府
二及び三について

お尋ねの「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」については、先の答弁書三についてでお答えしたとおりであり、また、三のお尋ねについてはその具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにしても、改正法案が成立した場合には、新法第二百五十二条の二十六の五第一項の規定に基づく指示等の国の関与は、目的を達成するために必要な最小限度の範囲で、地方公共団体の自主性・自立性に配慮して行われるよう、政府として適切な施行に努めてまいりたい。

 

地方行政への国の介入強化に関する質問主意書(2024年3月19日)

質問

回答

憲法は、第八章で地方自治の章を設け、「地方公共団体の運営は原則として住民自身の責任においてみずからの手で行うという住民自治の原則と、それから、国から独立した地方公共団体の存在を認め、これに地方の行政を自主的に処理させるという団体自治の原則をともに実現するという地方自治の原則」を地方自治の本旨(憲法第九十二条)として定めている(第百五十四回国会衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会。内閣法制局長官発言)。

そして、平成十二年に施行された地方分権一括法は、国と地方公共団体の関係を「対等・協力関係」と位置付けた。そして、地方自治法は、地方公共団体の自主性と自立性を強調し、地方行政への国の関与について、厳格な条件を設けている。

概観するなら、地方公共団体が国の関与を受ける場合、その根拠は個別法に基づかなければならない(地方自治法第二百四十五条の二)。そして、国の関与は、「その目的を達成するために必要な最小限度のもの」とし、「普通地方公共団体の自主性及び自立性に配慮しなければならない」(地方自治法第二百四十五条の三第一項)。さらに、個別法で自治事務に対する指示権等を認めることとする場合の要件は、「国民の生命、身体又は財産の保護のため緊急に自治事務の的確な処理を確保する必要がある場合等特に必要と認められる場合」に限られている(地方自治法第二百四十五条の三第六項)。

しかし、令和六年三月一日に閣議決定され、同日国会に提出された地方自治法改正案では、この枠組みに特例を設け、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」において、国による地方行政への介入強化につながる以下の措置が可能とされている。

①大臣や都道府県知事等が地方公共団体に対し、資料又は意見提出の要求をすること。

②大臣が都道府県に対し、事務処理調整の指示をすること。

③大臣が地方公共団体に対し、生命等の保護の措置に関する指示をすること。

④大臣が都道府県知事等に対し、応援の指示をすること。

このような改正は、「対等・協力関係」に位置付けた国と地方公共団体の関係を変容させるものであり、独立した自治事務に対して国の不当な介入を誘発しかねないものである。

このような内容に関し、当初、全国知事会からは、憲法で保障された地方自治の本旨や地方分権改革により実現した国と地方の対等な関係が損なわれるおそれもあるとの懸念が示され、日本弁護士連合会をはじめとして多くの団体から反対意見も出されている。また、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」というあいまいな表現による網羅的な規制に多くの国民からも強い懸念が示されている。

以上の状況を踏まえ、以下質問する。

神谷宗幣(参政党)
本改正の契機となった第三十三次地方制度調査会の「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申」では、コロナ感染症への対応に問題があったことが記載されているが、同記載内容を前提とすれば、個別法の改正によって対応が可能と思われる。この点について、自治事務に関する国の一般的指示権が必要である根拠が見いだせない。「対等・協力関係」に位置付けた国と地方公共団体の関係に特例を設けるに至った具体的な事情は何か、説明されたい。

政府
一及び二の後段について

「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申」(令和五年十二月二十一日地方制度調査会)において、「個別法は、これまで発生した災害、感染症のまん延等の事態や、その対応に当たり生じた課題等を踏まえて、備えるべき事態を適切に想定し、必要な規定を設けており、その見直しも重ねられている。しかしながら、今般の新型コロナ対応や、近年の自然災害の発生状況は、個別法において想定されていなかった事態が生じること、こうした事態であっても国と地方が連携し、総力を挙げて取り組む必要があることを、改めて認識させるものであった。これらの課題を踏まえると、まずは、個別法において備えるべき事態を適切に想定し、必要な規定が設けられ、これによって、個別法及び地方自治法上の国等の権限が適切に行使されるようにする必要がある。その上で、国と地方公共団体の間及び地方公共団体相互間の関係に関する地方自治法の規定について、平成十二年の地方分権一括法によって構築された一般ルールを尊重しつつ、大規模な災害、感染症のまん延等の国民の安全に重大な影響を及ぼす事態において、国民の生命、身体又は財産の保護のため、国・地方を通じ的確かつ迅速な対応に万全を期す観点から、所要の見直しを行う必要がある。」とされており、今国会に提出している地方自治法の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)はこれを踏まえたものである。

二の前段について

お尋ねの「検討」については、第三十三次地方制度調査会(令和四年一月十四日から令和六年一月十三日まで設置)における調査審議等により行われている。また、お尋ねの「全国知事会や市町村長関係団体との意見交換、公述意見の聴取など」については、例えば、学識経験者のほか地方六団体の代表者等により構成される同調査会における全国知事会、全国市長会及び全国町村会等からの意見聴取等が行われている。

神谷宗幣(参政党)
本改正案は、国と地方自治体の関係を大きく変容させることにつながり、慎重な検討や自治体関係者、地方住民を包含しての議論が前提となるべきものである。政府は、本改正案の提出に至るまでに、どのような検討及び全国知事会や市町村長関係団体との意見交換、公述意見の聴取などを行ったのか。また、本改正案提出にあたって、災害対策基本法や感染症法など既にある個別法の改正で対応ができるか否かの検討はされたのか、政府の見解を示されたい。

政府
一及び二の後段について

「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申」(令和五年十二月二十一日地方制度調査会)において、「個別法は、これまで発生した災害、感染症のまん延等の事態や、その対応に当たり生じた課題等を踏まえて、備えるべき事態を適切に想定し、必要な規定を設けており、その見直しも重ねられている。しかしながら、今般の新型コロナ対応や、近年の自然災害の発生状況は、個別法において想定されていなかった事態が生じること、こうした事態であっても国と地方が連携し、総力を挙げて取り組む必要があることを、改めて認識させるものであった。これらの課題を踏まえると、まずは、個別法において備えるべき事態を適切に想定し、必要な規定が設けられ、これによって、個別法及び地方自治法上の国等の権限が適切に行使されるようにする必要がある。その上で、国と地方公共団体の間及び地方公共団体相互間の関係に関する地方自治法の規定について、平成十二年の地方分権一括法によって構築された一般ルールを尊重しつつ、大規模な災害、感染症のまん延等の国民の安全に重大な影響を及ぼす事態において、国民の生命、身体又は財産の保護のため、国・地方を通じ的確かつ迅速な対応に万全を期す観点から、所要の見直しを行う必要がある。」とされており、今国会に提出している地方自治法の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)はこれを踏まえたものである。

二の前段について

お尋ねの「検討」については、第三十三次地方制度調査会(令和四年一月十四日から令和六年一月十三日まで設置)における調査審議等により行われている。また、お尋ねの「全国知事会や市町村長関係団体との意見交換、公述意見の聴取など」については、例えば、学識経験者のほか地方六団体の代表者等により構成される同調査会における全国知事会、全国市長会及び全国町村会等からの意見聴取等が行われている。

神谷宗幣(参政党)
「大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」の具体的な想定について、内容を明らかにされたい。

政府
お尋ねの「大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」については、特定の事態の類型を念頭に置いたものではなく、また、ある事態がこれに該当するか否かについては、当該事態の規模、態様等に即して判断されるべきものであるため、「具体的な想定」についてお答えすることは困難である。

神谷宗幣(参政党)
本改正案では、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」が発生する場合だけでなく、「発生するおそれがある場合」においても、適用されるとのことである。この「発生するおそれがある場合」とは、誰がどのような基準で判断するのか、政府の見解を示されたい。

政府
お尋ねについては、改正法案による改正後の地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の二十六の三第一項等の規定に基づき、これらの規定に基づく関与等を行う主体が、事態の規模及び態様、当該事態が発生する可能性の程度等に即して判断することとなる。

解説動画

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