質問主意書
政府は、デジタル社会の実現に向けた取組の一環として、マイナンバーカードの普及と利活用の促進を重要な政策課題としてきた。「「日本再興戦略」改訂二〇一五」(平成二十七年六月三十日閣議決定)及び「世界最先端IT国家創造宣言」(平成二十七年六月三十日改定)では、マイナンバーカードの普及・利活用の促進のため、二〇一六年一月から国家公務員身分証との一体化を進めることとされた。「マイナンバー制度導入後のロードマップ」(二〇二四年一月デジタル庁)では、二〇一八年度末に「国家公務員身分証一体化(本省分)の原則移行完了」と記載されている。
内閣府及び総務省は、広報資料等において、マイナンバーカードには万全のセキュリティ対策が採られており、キャッシュカードと同様に持ち歩いても大丈夫である旨を記載しているが、運転免許証やキャッシュカードは、身分証のようにネックストラップで外部に露出して持ち歩くようなことはなく、身分証と一体化することで実態上セキュリティリスクがより高いものとなる。
実際、二〇二二年十一月十六日の衆議院内閣委員会での質疑において、内閣官房、警察庁、公安調査庁、防衛省及び外務省が、二〇一五年に「国家公務員身分証の個人番号カード一元化における問題点等について」との文書の中で「個人情報を一括して盗まれ、最悪の場合、秘密情報の流出につながるおそれがある」、「身分証のカード一元化を行った場合、業務に重大な支障が生じるおそれがある」として反対していたことが明らかになった。なお、二〇二四年三月時点における国家公務員共済組合のマイナ保険証利用率は、五・七三パーセントと低迷したままである。
また、マイナンバーについては、これまでに、国税庁や特殊法人から入力業務等を委託された業者が再委託先に個人情報を漏洩してしまった事例やマイナンバーを扱う民間企業においても管理が行き届かず、個人情報を漏洩してしまった事例が報告されている。
このように、セキュリティリスクに高い懸念が示されているが、国家公務員身分証共通発行管理システムの業務委託先の一つに、中国の北京や大連でも有限公司を営む外国人が代表を務める「株式会社グランドユニット」が含まれている。この会社はシステムの動作検証業務を請け負っているが、このような点においても、国民の個人情報を預ける業務委託先がよりによって外国人が経営する企業であることは望ましいはずがない。
マイナンバーは行政手続等における特定の個人を識別するための制度であり、厳格な取扱いやプライバシー保護について極めて慎重に対応する必要がある。また、マイナンバーカードについては、国家公務員身分証だけでなく、保険証や免許証等とのひも付けを行うことにより、あらゆる手続において保険証等の代わりとして使用できることとなり、紛失や盗難による情報漏洩等のリスクが高まっている。
前記のような問題点がある中、国家公務員身分証のマイナンバーカードとの一元化などを拙速に進める前に、システム、運用ともに抜本的な見直しが必要なのではないか。
以上を踏まえ、質問する。
神谷宗幣(参政党)
政府は前記ロードマップにおいて、二〇一八年度末に「国家公務員身分証一体化(本省分)の原則移行完了」と記載しているが、現時点でマイナンバーカードを国家公務員身分証として利用している国家公務員の割合を府省庁ごとに示されたい。
政府
お尋ねについては、網羅的かつ統一的に把握することは行っておらず、お答えすることは困難である。
神谷宗幣(参政党)
マイナンバーカードの取得は義務化されていない。したがって、国家公務員でもマイナンバーカード身分証を拒否する権利は担保されるべきであるが、これにより不当な不利益を被るようなことはないか示されたい。
政府
お尋ねの「不当な不利益」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、個人番号カード(以下「カード」という。)は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第十六条の二第一項の申請に基づいて作成され、同法第十七条第一項に基づいて交付されるものとされており、カードと御指摘の「国家公務員身分証」との一体化に際してもこの点を変更するものではない。
神谷宗幣(参政党)
国家公務員が保険証と運転免許証とをひも付けたマイナンバーカード身分証を紛失した際、その情報の保護と再発行の手続はどのように行われるか。具体的にどのような措置が採られ、それぞれの機能はどれくらいの期間で安全に復帰が可能となっているか示されたい。
政府
御指摘の「マイナンバーカード身分証」に係る「情報の保護」に関するお尋ねについては、カードのICチップに記録された情報について、暗証番号等による認証を行わなければ読み取ることができず、当該認証を行うことなく読み取ろうとすると、ICチップが破損する仕組み等を採用することにより、その保護を図っている。
カードの「再発行の手続」に関するお尋ねについては、カードを紛失した者が、その者が記録されている住民基本台帳を備える市町村(特別区を含む。)の長(以下「住所地市町村長」という。)に対し、カードを紛失した旨の届出をした上で、直接に又は住所地市町村長を経由して地方公共団体情報システム機構(以下「機構」という。)に対して再交付申請を行うこととなり、申請から再交付までの期間は、機構からカードの送付を受けることを希望する旨の申出をした場合は、原則一週間である。御指摘の「保険証」としての「機能」については、カードの再交付を受けた後、原則として、特段の手続を経ることなく直ちに利用が可能である。また、「身分証」としての「機能」については、所属する府省庁等において、カードに職員を識別するための番号等の情報を記録することにより、直ちに利用が可能である。さらに、「運転免許証」としての「機能」については、運転免許センター等において、カードへの特定免許情報(道路交通法の一部を改正する法律(令和四年法律第三十二号)による改正後の道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第九十五条の二第二項に規定する特定免許情報をいう。)の記録を申請することにより直ちに利用が可能となるよう、警察庁において準備を進めているところである。
神谷宗幣(参政党)
国家公務員身分証共通発行管理システムの業務委託先の一つに、北京や大連でも有限公司を営む外国人が代表を務める「株式会社グランドユニット」が選定されている。この会社では、東京の拠点における約五十名のスタッフのうち、八割が中国人であり、システム開発を中国のグループ会社と連携して進めているとされている。
国家公務員が特定秘密や国家機密を取り扱い、幹部職員以上は適格性検査の対象となり、国家の命運を左右する重要な業務を担う者が多数含まれることに鑑みれば、国家公務員の個人情報は非常に重要で秘匿性の高い情報であり、外国勢力の手に渡ったり、外国の諜報活動や謀略・工作等に用いられないように最大限配慮しなければならない。
したがって、国家公務員の個人情報に関わる業務を外国人や外国資本に委託することは禁止すべきと考えるが、国家公務員身分証共通発行管理システムの業務委託先に株式会社グランドユニットを選定した理由を示されたい。また、同社はGC株式会社の百パーセント子会社であり、GC株式会社の株主は代表者個人と株式会社C&JHDの二名との情報があるが、株式会社グランドユニットの資本関係を調査及び評価を行ったか明らかにされたい。
政府
御指摘の「国家公務員身分証共通発行管理システム」に係る契約については、デジタル庁が令和三年度に株式会社グランドユニットと契約した「国家公務員身分証共通発行管理システムのブラウザ改修に係る請負」(以下「本件契約」という。)を指すものと思われるが、本件契約の相手方の選定に当たっては、一般競争入札により実施し、その結果、同社が受注したものである。
お尋ねの同社の「資本関係」について、本件契約の締結に際して「調査及び評価」は行っていない。
神谷宗幣(参政党)
前記四について、国家公務員の個人情報が業務委託先から外部に漏洩しないための措置をどのように講じているか。国家公務員の個人情報が中国にある関連会社やサーバーに送信されることを防ぐ規定など、海外への個人情報漏洩を完全に防ぐことのできる実効性のある対策が採られているか。契約条件等に国家公務員の個人情報の漏洩対策が含まれているか示されたい。
政府
本件契約において株式会社グランドユニットが請け負った業務については、御指摘の「国家公務員身分証共通発行管理システム」で使用するソフトウェアの画面表示の適正化に係る改修のみであって、国家公務員の個人情報を取り扱うものではない。