質問主意書

GIGAスクール構想(一人一台端末)の弊害等に関する質問主意書(2024年12月20日)

質問

回答

国は、令和元年十二月にGIGAスクール実現推進本部を設置し、一人一台端末及び高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する「GIGAスクール構想」を推進しており、教育現場でもiPadなどのデジタルデバイスが導入されている。この取組は、ICTを活用して全児童生徒が公正に教育を受ける権利を享受し、情報化社会で必要なスキルを身につけることを目的としているとされる。

しかし、導入から五年が経過し、デバイス更新による財政圧迫、学力の低下、心身の疲労、動画やゲーム依存、SNS利用による犯罪リスクなど多くの問題が浮上している。これを受けて、GIGAスクール構想の効果と弊害を再検証し、対象児童の範囲、カリキュラム、デバイスの活用方法、紙媒体への回帰を含むICT教育の見直しを検討する時期に来ているのではないか。

海外では、デジタル化からの脱却を進める国も現れている。例として、スウェーデンは方針を変更し、令和五年八月の新学期からは紙媒体に戻し、デジタルデバイスの使用時間を削減している。この背景には、デジタルツールは子供の教育に害悪であり、画面を用いた学習は読解力や記憶力を低下させ、インターネットを利用する生徒の学習成果が従来の学習方法を用いる生徒に比べて明らかに劣っているとするカロリンスカ研究所の報告があるとされる。国内でも、仙台市教育委員会及び東北大学が行った「学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト」の調査結果により、通信アプリの使用時間の長さが直接的に成績を下げる方向に作用している可能性があることが判明している。

教育は、単にICTの活用やスキル取得だけを評価するのではなく、児童生徒の基礎学力の向上や、生活態度、心身発達への影響にも配慮して行う必要がある。この観点から、低年齢・低学年におけるデジタルデバイスの導入や使用時間などを見直し、インターネットやSNSに過度に依存しないようネットリテラシー教育も徹底する必要があると考える。

以上を前提に、以下質問する。

神谷宗幣(参政党)
一 GIGAスクール構想に基づく一人一台端末により生じる児童生徒への弊害として指摘されている以下の項目について、調査したか示されたい。調査した場合はその内容を示されたい。

1 学力の低下

2 動画やゲームへの依存による生活習慣の乱れ

3 視力低下や精神疲労など心身への負担や影響等

政府
御指摘の「項目」と「GIGAスクール構想に基づく一人一台端末」の整備との間の因果関係に係る調査は行っていない。なお、令和六年度の全国学力・学習状況調査の結果においては、「課題解決に取り組む学習活動を行って」おり、「考えをまとめ、発表・表現する場面でICTを活用している」学校の児童生徒は、それ以外の学校の児童生徒よりも「各教科の正答率が高い」ことが示されている。

神谷宗幣(参政党)
一人一台端末によるICT教育を開始する学年・年齢及びその教育内容を決定した根拠・理由を示されたい。

政府
二及び三について

お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、お尋ねの「一人一台端末」の整備は、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」(令和元年十二月五日閣議決定)において、「多様な子供たちを誰一人取り残すことのない一人一人に応じた個別最適化学習にふさわしい環境を速やかに整備するため、・・・特に、義務教育段階において、令和五年度までに、全学年の児童生徒一人一人がそれぞれ端末を持ち、十分に活用できる環境の実現を目指す」としていることを踏まえた取組であり、お尋ねの「ICT教育を開始する学年・年齢及びその教育内容」を定めたものではない。

神谷宗幣(参政党)
海外の事例も踏まえ、ICT教育の開始時期や教育内容の見直しが必要ではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。また、見直しが必要との見解の場合、その検討状況を示されたい。

政府
二及び三について

お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、お尋ねの「一人一台端末」の整備は、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」(令和元年十二月五日閣議決定)において、「多様な子供たちを誰一人取り残すことのない一人一人に応じた個別最適化学習にふさわしい環境を速やかに整備するため、・・・特に、義務教育段階において、令和五年度までに、全学年の児童生徒一人一人がそれぞれ端末を持ち、十分に活用できる環境の実現を目指す」としていることを踏まえた取組であり、お尋ねの「ICT教育を開始する学年・年齢及びその教育内容」を定めたものではない。

神谷宗幣(参政党)
児童に対するネットリテラシー教育の内容及び学習時間を学年ごとに明らかにされたい。

政府
御指摘の「ネットリテラシー教育」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、小学校学習指導要領(平成二十九年文部科学省告示第六十三号)においては、「各学校においては、児童の発達の段階を考慮し、言語能力、情報活用能力(情報モラルを含む。)、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成していくことができるよう、各教科等の特質を生かし、教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする。」等としており、これに沿って「情報活用能力」を育成するための指導にどれだけの時間を充てるか等については、地域や学校の実態及び児童の心身の発達の段階や特性等を十分考慮して、各学校において決定するものである。

教員の長時間労働の解決と待遇改善の方針に関する質問主意書(2024年12月9日)

質問

回答

令和七年度予算の策定に際し、教員の長時間労働の解決と待遇改善に向けた議論が行われている。教員の労働環境の改善は長年の課題であり、不登校や自殺者数の増加、少子化といった社会課題とあいまって、早急な解決が求められている。教育の在り方そのものの見直しも重要であるが、教員が教育に専念できる環境を整えることは喫緊の課題である。

文部科学省初等中等教育局が公表した「教員勤務実態調査(令和四年度)の集計(確定値)について」(令和六年四月四日)によれば、教諭の一日当たりの在校等時間及び持ち帰り時間の計は、小学校教諭が平日は十一時間二十三分、土日は一時間十二分、中学校教諭が平日は十一時間三十三分、土日が三時間七分となっている。また、過労死ラインの月八十時間超の残業時間に相当する一週間当たりの総在校等時間が六十時間以上の教諭の割合は、小学校で十四・二%、中学校で三十六・六%に上る。

授業準備や保護者対応、行事対応といった多忙な業務を多数抱える中、教員が適切な業務量で働くには、授業の持ちコマ数の削減と教職員定数の増加が不可欠である。

しかし、文部科学省が令和七年度概算要求に盛り込んだ教職員定数増加案(約七千七百人)は、財政制度等審議会財政制度分科会(令和六年十一月十一日)における財務省資料には盛り込まれていない。このままでは長時間労働の問題の解決は困難である。

少子化に伴い、子供たちが将来発揮することを期待されている能力水準が高まる中、教員の労働環境の改善は不可欠であり、教員の長時間労働を前提とした制度の早急な改善が必要である。

以上を踏まえ、質問する。

神谷宗幣(参政党)
現状の教員の労働環境において、過労死ラインを超える残業時間が常態化している問題について、教職員定数を増員せず「働き方改革」や事務職員増員のみで対応する場合、教員一人当たりの残業時間がどの程度減少すると見積もっているのか、根拠とともに示されたい。

政府
一から三までについて

お尋ねについては、仮定の質問であり、また、御指摘の「残業時間」、「教職員定数を増員」及び「教職調整額で想定される時間を大幅に超える」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。なお、政府においては、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二四」(令和六年六月二十一日閣議決定)において、「働き方改革の更なる加速化、処遇改善、指導・運営体制の充実、育成支援を一体的に進める。・・・教師の時間外在校等時間の削減を徹底して進める。」とされていること等も踏まえて、学校における働き方改革の推進や教職員定数の改善を図っているところである。

神谷宗幣(参政党)
「働き方改革」や事務員増員の取組を実施した後でも、教員の平均残業時間が教職調整額で想定される時間を大幅に超える場合、教職員定数の増員が不可避であると考えるが、政府の見解を示されたい。

政府
一から三までについて

お尋ねについては、仮定の質問であり、また、御指摘の「残業時間」、「教職員定数を増員」及び「教職調整額で想定される時間を大幅に超える」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。なお、政府においては、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二四」(令和六年六月二十一日閣議決定)において、「働き方改革の更なる加速化、処遇改善、指導・運営体制の充実、育成支援を一体的に進める。・・・教師の時間外在校等時間の削減を徹底して進める。」とされていること等も踏まえて、学校における働き方改革の推進や教職員定数の改善を図っているところである。

神谷宗幣(参政党)
現状、教員の過労死ラインを超える残業時間が常態化している中で、教職員定数を増員しない場合、過労死ラインを下回る残業時間をどのように実現するか。具体的な施策について、実施可能性を含め、示されたい。

政府
一から三までについて

お尋ねについては、仮定の質問であり、また、御指摘の「残業時間」、「教職員定数を増員」及び「教職調整額で想定される時間を大幅に超える」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。なお、政府においては、「経済財政運営と改革の基本方針二〇二四」(令和六年六月二十一日閣議決定)において、「働き方改革の更なる加速化、処遇改善、指導・運営体制の充実、育成支援を一体的に進める。・・・教師の時間外在校等時間の削減を徹底して進める。」とされていること等も踏まえて、学校における働き方改革の推進や教職員定数の改善を図っているところである。

神谷宗幣(参政党)
教職員定数の増員が行われないことで、教育の質の低下や児童・生徒への影響が生じる可能性についてどのように評価しているか示されたい。また、そのリスクを回避する具体的な手立てを示されたい。

政府
お尋ねについては、仮定の質問であり、また、その趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難である。なお、政府においては、教育の質の向上を図るため、学校における働き方改革の推進や教職員定数の改善を図っているところである。

令和五年度における児童生徒のいじめ・不登校に関する質問主意書(2024年11月11日)

質問

回答

令和五年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査結果が十月三十一日に文部科学省から公表された。この調査では、いじめ認知件数、不登校児童生徒数とも過去最多を記録している。いじめの認知件数は、小・中・高等学校及び特別支援学校を含め、七十三万二千五百六十八件(前年度六十八万千九百四十八件)であり、前年度比で五万六百二十件(七・四%)増加した。後者の小中学校における不登校児童生徒数は三十四万六千四百八十二人(前年度二十九万九千四十八人)であり、前年度と比べ四万七千四百三十四人(十五・九%)増加した。

不登校につき文部科学省は、当該調査結果の概要において不登校児童生徒数の「増加率は前年度と比較して若干低くなった(令四 二十二・一%→令五 十五・九%)。」と述べている。しかし、当該記述は、実態を覆い隠し、不登校問題の深刻さを直視していないと言わざるを得ない。
なぜなら、不登校人数の増加について、単年度でなく令和二年度からの直近三年間での増加率で表すと、約一・七七倍の増加率となる。この増加率は直近三年間がコロナ禍にあったとはいえ、あまりに大きな数字であり、過去に例がない増加率となっている。不登校問題は、今回の調査結果において最も問題視すべきものの一つであり、その原因と対策を例年以上に検証・検討すべきことは論をまたない。

以上を踏まえて質問する。

北野裕子(参政党)
不登校児童生徒のうち九十日以上欠席した者は十九万三百九十二人(五十五%)にのぼるが、調査統計上は、欠席日数は「九十日以上」と一括りにされ、九十日~百八十日、百八十一日~三百六十五日、三百六十五日以上といった細分化された区分が設けられていない。
 1 なぜこのように「九十日以上」を一括りとする形式が採られているのか、その根拠について政府の見解を求める。
 2 また、不登校期間が三百六十五日(一年)以上の場合と数か月の場合において、その深刻度や対策(解決)方法について大きな差異があると思われるが、この点についても、政府の見解を求める。

政府
一の1について

文部科学省が令和六年十月三十一日に公表した「令和五年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(以下「令和五年度問題行動等調査」という。)においては、児童生徒が一年間に出席しなければならない日数が学校ごとに異なること等を踏まえ、不登校児童生徒のうち欠席日数が「九十日以上」のものについては、御指摘のような欠席日数ではなく、出席日数に応じて区分して調査することとしたものである。

一の2について

お尋ねの「深刻度」及び「大きな差異」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、個々の不登校児童生徒の状況を適切に把握した上で、必要な支援を実施することが重要であると考えている。

北野裕子(参政党)
不登校の背景として当該調査結果は、①関係法の趣旨から無理に登校させなくても良いとする保護者の意識変化、②コロナ禍の影響、さらに③特別な配慮が必要な者への指導・支援に課題があったなどを挙げている。特に問題とすべきは、不登校の背景が③である場合であるが、ここで障がい者(疑い含む)を除いた場合、具体的

政府
お尋ねの「どのような事例(事態)を主に指すのか」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、令和五年度問題行動等調査において、「不登校児童生徒について把握した事実」の選択肢として、「個別の配慮(障害(疑い含む)以外)についての求めや相談があった」の事項を設け、回答者に対して示した調査票に、その例示として、「日本語指導が必要、特定分野に特異な才能を有する、性に関する違和感、感覚過敏に関する求めや相談」を挙げている。

北野裕子(参政党)
にはどのような事例(事態)を主に指すのか、政府の見解を求める。
不登校児童生徒について把握した事実が、①学校生活にやる気が出ない、②不安・抑うつ、③生活リズムの不調など十四項目にわたり、その割合(%)が記述されているが、各項目の深刻度(軽・中・重度)が不明である。こうした深刻度を含めて経年調査を行うことこそが、不登校の対策・解決に資するとも考えるが、政府の見解を求める。

政府
御指摘の「深刻度」及び「経年調査」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、令和五年度問題行動等調査においては、「不登校児童生徒について把握した事実」として、相談の有無等の客観的な事項を調査しており、この中で、回答者の主観によるところが大きい事項を調査することは考えていない。

北野裕子(参政党)
当該調査結果によると、「いじめの解消状況について」の結果報告があり、全学校で解消されているものの割合が七十七・五%と示されている。しかし、不登校の解消状況についての結果報告は見当たらない。不登校に関する解消状況の調査結果がないのはなぜか、またその調査を行っていない理由について、政府の見解を求めたい。加えて、今後、不登校の解消状況についての調査を行う意向がないのか、政府の見解を求める。

政府
令和五年度問題行動等調査において、不登校児童生徒のうち「前回調査でも不登校に計上されていた」ものの数について調査し、その結果を公表しているため、「不登校に関する解消状況の調査結果がない」との御指摘は当たらないものと考えている。

北野裕子(参政党)
不登校児童生徒のうち、全体の三十八・八%に当たる十三万四千三百六十八人の児童生徒が、学校外の機関等で専門的な相談・指導等を受けていない。確かに、そのうちの十一万九千六百九十九人は担任等から週一回程度以上の継続的な相談・指導等を受けていることは多とするが、相談・指導等者が担任等と学校外の専門機関等とでは相談・指導等の内容において差異があることを踏まえると、三十八・八%の数字は到底看過できるものではない。そこで政府は、そもそも学校外の専門機関等による相談・指導等を一層増やす計画があるのか、またどんな数値目標をもっているのか。併せて、担任等の相談・指導等すら受けてない不登校の児童生徒が一万五千人弱いたわけであり、この児童生徒たちは調査結果が出てから今日までの一年間どのような対応がなされたのか、担任等の相談・指導等を受けることができたのか、政府の見解を求める。

政府
前段のお尋ねについては、政府としては、学校内外の専門機関等による相談・指導等を充実させることが重要であると考え、例えば、地方公共団体における教育支援センターに在籍する職員が在宅の不登校児童生徒に対してするアウトリーチ支援に係る機能の強化のほか、教育支援センター等へのスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置の充実等に取り組んでおり、また、「教育振興基本計画」(令和五年六月十六日閣議決定)において、不登校児童生徒への支援の推進に係る評価の指標の一つとして、「学校内外で専門機関等の相談・指導等を受けていない不登校児童生徒数の割合の減少」を設定している。
後段のお尋ねについては、「調査結果が出てから今日までの一年間」及び「対応」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、令和五年度問題行動等調査において学校内外の専門機関等や学級担任等による相談・指導等を受けていないとされた児童生徒に対する調査実施後の対応の詳細については、政府として把握していない。

北野裕子(参政党)
今回の調査結果において、不登校問題以上に問題視すべきことが、いじめの重大事態の結果である。その発生件数は千三百六件であり、前年度から三百八十七件(四十二・一%)も増加してしまった。しかも直近三年間では、約二・五五倍もの増加となっている。この増加率は先の不登校児童生徒数の増加率以上であり、過去最悪な結果である。
1 この結果を政府はどう重く受け止めているのか。
2 増加の背景として、①関係法の理解が進み積極的な認定がなされた、②保護者の意向の尊重により増加したと述べているが、相当な違和感を覚える。①については、単なるいじめの認知ならまだしも、ことは重大事態である。いじめの重大事態の認定は当然行うべき当たり前のことであり、裏読みすれば、これまでは重大事態を軽視して認定に消極的であったと述べているのに等しいのではないか。この点の認識について政府の見解を求める。
3 ②については、いじめの重大事態に該当する客観的事実があれば、その重大性から秘匿を望む等の保護者の意向により左右されることなく認定されるべきものではないのか。この点の認識についても政府の見解を求める。

政府
六の1について

令和五年度問題行動等調査において令和五年度中の重大事態(いじめ防止対策推進法(平成二十五年法律第七十一号。以下「法」という。)第二十八条第一項に規定する重大事態をいう。以下同じ。)の件数が過去最多となっていることについては、極めて憂慮すべき状況が継続していると認識している。

六の2について

お尋ねの「重大事態を軽視して」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、各学校の設置者等における重大事態の取扱いの在り方に関する理解が必ずしも十分ではなかったことにより、法等の趣旨に沿った対応がなされていなかった事案も発生している可能性があると認識しており、各学校の設置者等における理解が一層進んだことが、令和五年度問題行動等調査における重大事態の件数の増加の一つの要因であると考えている。

六の3について

「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(平成二十九年三月文部科学省作成、令和六年八月改訂。以下「ガイドライン」という。)において、「重大事態に該当するにも関わらず、対象児童生徒・保護者が望まないことを理由として、重大事態として取り扱わないことは決してあってはならず、対象児童生徒への支援や関係児童生徒への指導及び支援等も行わなければならない。」としていることから、重大事態に該当する事案について、児童生徒や保護者が調査を望まない場合においても、重大事態として取り扱うべきであると考えている。

北野裕子(参政党)
いじめの重大事態の増加の背景として、もう一つ③早期発見・早期対応の課題と教員が一人で抱え込む組織的対応への課題が挙げられている。この③の割合はいじめの重大事態事案のなかでどのくらいだと把握しているのか。またどのような対策を立てて、いじめの重大事態の早期発見・早期対応や組織的対応の改善を図ろうとしているのか、政府の見解を求める。

政府
前段のお尋ねについては、重大事態として取り扱うに至った個別の理由を調査していないため、お答えすることは困難である。
後段のお尋ねについては、「令和五年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」(令和六年十月三十一日付け六初児生第十二号文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知)において、「いじめを漏れなく認知するためには、全ての教職員が改めて法におけるいじめの定義を確認し、積極的な認知を行うとともに、学校を挙げて早期発見・早期対応に向けた取組を行うことが重要である。」とするなどしているほか、ガイドラインで示している「各学校においては、校長のリーダーシップの下、生徒指導主事等を中心として組織的な支援及び指導体制を構築した上で、学校いじめ防止基本方針に定める年間計画において定例会議の開催等を位置付け、その中で、学校いじめ対策組織が重大事態の発生を防ぐために重要な役割を担っている組織であることを確認するとともに、重大事態が発生した際の適切な対処の在り方について、全ての教職員の理解を深める取組が重要である。」という内容を周知すること等により、御指摘の「いじめの重大事態の早期発見・早期対応や組織的対応の改善」を図っているところである。

北野裕子(参政党)
いじめの重大事態の認定につき、文部科学省は「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を今年八月に改訂し、いじめの重大事態の調査主体は原則的には学校主体ではあるが、例外的に被害者と加害者の主張が異なるケースなどには、学校外の第三者委員会が主体となって調査ができるとなった。これは評価すべき改訂であるが、第三者委員会設置の要件を満たし、かつ、学校長がその設置を教育委員会に依頼しても、教育委員会等が財政的負担の多額さを理由にして断っている事実が報道されている。
1 文部科学省はこのような事実を把握しているのか。
2 もし把握しているのであれば、各自治体の財政状況により第三者委員会設置がなされていない状況を文部科学省は放置せず、教員不足の中での学校側の負担の重さと当該ガイドラインの改訂の趣旨の貫徹さらには第三者委員会での報告内容がいじめの重大事態の防止に資することになることも考慮するならば、国が財政的支援をすべき場合があると考えるが、政府の見解を求める。

政府

八の1について

お尋ねの「事実」に関する報道があることは承知している。

八の2について

お尋ねについては、ガイドラインにおいて「学校の設置者における平時からの備え」として、法第二十八条第一項の重大事態に係る事実関係を明確にするための調査に参画する委員の「報酬等に要する予算を確保するなどの準備を行っておくことが望ましい」とするなど、学校の設置者における予算の確保を促すとともに、当該調査を実施する組織の公平性・中立性の確保の観点から、法律、医療、教育等の専門家が各学校の設置者等からの相談に応じて助言を行う「いじめ調査アドバイザー」事業を実施しているところであり、現時点で、お尋ねの「財政的支援」は予定していない。いずれにせよ、引き続き、各学校の設置者等において、当該調査を適切に実施できるよう、いじめの防止等のための対策の改善・強化に努めてまいりたい。

若者の奨学金負担軽減に向けた支援に関する質問主意書(2024年10月1日)

質問

回答

昨今の日本では、若者の将来展望に不安が広がっている。民間各社が行っている高校生意識調査でも、学生たちは収入の安定や将来の不確実性を懸念していることが浮き彫りになっている。若者にとって、収入や雇用の安定が大きな課題となっており、これは奨学金の返還負担にも深く関連している。

我が国の年齢階級別実質賃金水準を見ると、二十代の実質賃金はわずかに上昇している一方で、中高年層では賃金が低下している。この背景には非正規雇用の増加があり、若者にとって将来的な収入や雇用の安定が大きな課題となっている。このような状況が続く中、奨学金の返還が更なる負担となり、若者の生活やキャリア形成に悪影響を与える懸念が高まっている。

一方で、現在、外国人留学生の受入れ拡大や労働力不足を補うための育成就労制度が進められている。これらの取組により、短期的には労働力の確保に一定の効果が期待されるものの、長期的には日本の将来を支える国内の若者の育成が重要である。

人口減少が進む中で、日本人学生が安心して学び、奨学金返還に過度に悩まされることなく、将来に向けて十分な教育を受ける環境を整備することが、日本社会の持続的発展に不可欠である。したがって、日本人学生に対する学費支援や奨学金制度の見直しが最優先課題であり、その強化が急務である。

以上を前提に、以下質問する。

神谷宗幣(参政党)
政府は、「こども未来戦略」に基づき奨学金返還の負担軽減策を講じているが、令和六年度に導入された同軽減策について、具体的な効果の見込みと、その効果をどのように検証し、結果をいつ、どのように公表する予定か、具体的な計画を示されたい。

政府
一及び二について

お尋ねの「改善」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「奨学金返還の負担軽減策」については、独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)の奨学金の返還に係る支援制度である減額返還制度の対象を拡大するなどしたことにより、同制度の利用件数の増加が見込まれ、より多くの奨学金の返還が困難となった者の経済的負担の軽減につながるものと考えている。

「負担軽減策」の「効果をどのように検証し、結果をいつ、どのように公表する予定か」とのお尋ねについては、「こども未来戦略」(令和五年十二月二十二日閣議決定)において「「加速化プラン」の実施状況や各種施策の効果等を検証しつつ、こども・子育て政策の適切な見直しを行い、PDCAを推進していく。」としたことを踏まえ、公表の在り方も含め現在検討しているところである。

 

神谷宗幣(参政党)
政府は、従来、奨学金返還困難者に対して返還期限猶予や減額返還制度を実施しているが、前記一の負担軽減策によって、どのような改善が期待されているのか具体的に示されたい。また、既存の支援制度の利用実績を踏まえ、同軽減策がどのような効果を発揮すると見込んでいるのか具体的に示されたい。

政府
一及び二について

お尋ねの「改善」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「奨学金返還の負担軽減策」については、独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)の奨学金の返還に係る支援制度である減額返還制度の対象を拡大するなどしたことにより、同制度の利用件数の増加が見込まれ、より多くの奨学金の返還が困難となった者の経済的負担の軽減につながるものと考えている。

「負担軽減策」の「効果をどのように検証し、結果をいつ、どのように公表する予定か」とのお尋ねについては、「こども未来戦略」(令和五年十二月二十二日閣議決定)において「「加速化プラン」の実施状況や各種施策の効果等を検証しつつ、こども・子育て政策の適切な見直しを行い、PDCAを推進していく。」としたことを踏まえ、公表の在り方も含め現在検討しているところである。

 

神谷宗幣(参政党)
「次世代の教育を支えるための奨学金制度拡充に関する質問主意書」(第二百十三回国会質問第一三七号)に対する答弁(内閣参質二一三第一三七号。以下「答弁一三七号」という。)では、「教育・研究職免除制度」を廃止した理由として、特定の職種に対してのみ優遇することへの不公平感等を挙げている。一方、現在、「教師になった者に対する奨学金返還支援」では、教職大学院を修了し教師となった者に限定して返還免除が行われている。この制度が公平性の観点から問題がないと考えられる理由を示されたい。

政府
御指摘の「教職大学院を修了し教師となった者に限定して」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、また、「この制度」の指すところが必ずしも明らかではないが、「教師になった者に対する奨学金返還支援」は、独立行政法人日本学生支援機構法(平成十五年法律第九十四号)第十六条に基づく大学院の在学中に特に優れた業績を挙げたと認められる者に対して行う奨学金の返還免除の制度を活用して行うものであり、「特定の職種に対してのみ優遇する」ものではないことから、公平性の観点から問題があるとは考えていない。

 

神谷宗幣(参政党)
政府は、教師以外の公務員や他の公共サービス職従事者に対する奨学金返還免除や猶予制度について、現時点では検討していないと答弁している(答弁一三七号)。どのような観点から現時点で検討に至っていないのか、理由を具体的に示されたい。また、今後、これらの職業に対する奨学金返還支援を開始する可能性について、政府の見解を示されたい。

政府
教師以外の特定の職に就いたことのみをもって機構の奨学金の返還を猶予し、又は免除することについては、特定の職業に従事することのみをもって優遇することに対する不公平感があること及び次の世代に対する学資金の原資を確保する必要があることから、現時点では検討していない。

神谷宗幣(参政党)
財源が限られる中で、外国人留学生への支援と日本人学生への奨学金支援が相互に影響を与える可能性があるか。

政府
お尋ねの趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難である。

神谷宗幣(参政党)
警察庁が令和四年一月から「奨学金の返済苦」を自殺の原因・動機に追加したことは、奨学金返還が若者に深刻な影響を与えていることを示唆している。政府として、奨学金返還が若者の精神的及び経済的状況にどのような影響を与えていると認識しているのか。さらに、これまで講じられている支援措置が、実際に返還困難者に対して十分に機能しているか、政府の評価を示されたい。

政府
前段のお尋ねについては、奨学金の返還に係る債務を負うことが御指摘の「若者の精神的及び経済的状況」に与える「影響」のみを評価することは難しいことから、一概にお答えすることは困難であるが、例えば、「こども未来戦略」においては、「教育費の負担が理想のこども数を持てない大きな理由の一つとなっているとの声がある」とされている。

後段のお尋ねについては、「十分に」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、機構の奨学金の返還に係る支援制度は、相当程度の要返還者(奨学金の貸与を受け、その奨学金を返還する義務を有する者をいう。)が利用可能な制度であることから、奨学金の「返還困難者」の経済的負担の軽減に一定の機能を果たしていると認識している。

国語教育政策と言語文化としての日本語の継承に関する質問主意書(2024年5月23日)

質問

回答

平成十八年の教育基本法改正により、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」が教育目標として定められた。平成二十年の中学校学習指導要領解説国語編では、「我が国の歴史の中で創造され、継承されてきた伝統的な言語文化に親しみ、継承・発展させる態度を育てることや、国語の果たす役割や特質についてまとまった知識を身に付けさせ、言語感覚を豊かにし、実際の言語活動において有機的に働くような能力を育てること」が強調されている。平成三十年の高等学校学習指導要領解説国語編では、生徒が「現代社会に生きて働く言語の価値に重点を置き、理解したり尊重したりすることにとどまることなく、自らが継承、発展させていく担い手としての自覚をもつこと」を目指すこととされている。

しかし一方で、現在、初等・中等教育及び高等教育の全ての段階においても、グローバル化を反映して英語教育を推進する傾向が強い。その結果、日本人大学生の日本語語彙力の低下が深刻な問題となっており、多くの大学において初年次教育やリメディアル教育に注力せざるを得ない状況となっている。

このように、日本人学生に対する国語教育の強化が教育の各段階で一貫した課題となっている一方で、外国人留学生の増加に対応するため、外国人に対する日本語教育の整備が進められ、登録日本語教員の国家資格化を軸とした政策が推進されている。

しかし、本筋である日本人に対する母語としての国語教育の問題に関しては、重点的な議論が行われていない。これでは、日本語教育の在り方としては本末転倒である。

さらに、この間の研究及び学校教育の展開の中で、英語の論理構造を基準に日本語を捉えようとしてきた結果、日本語があいまいで非論理的な言語であるかのような誤解が広まってしまっている。

最新の言語科学における研究成果を学校教育に取り入れることで、日本人が正しい日本語力を培い継承していくとともに、自国の言語文化に対する誇りと自信を取り戻すことが期待される。重要なことは、文学ではなく言語としての日本語を学べる国語授業の提供や、英語の論理に基づいた従来の国語文法の見直しである。伝統的な日本語の継承と発展を目指し、日本人が母語としての日本語を客観的に学び直す機会の提供が不可欠である。このような取組により、国民一人一人が帰属する言語文化への自覚を深めることが可能となる。さらに、英語基準の言語観からの脱却と、日本語の普遍性と独自性の理解と活用は、我が国の言語文化としての日本語の存続と発展に寄与する。日本人に対する日本語教育の体系的な位置付けと、政策としての推進が必要ではないか。

以上を踏まえて、質問する。

神谷宗幣(参政党)
改正された教育基本法に基づいた、自国の伝統的な言語文化に親しむ教育とその継承・発展のための教育の実践に関して、具体的な取組と成果を示されたい。また、教育現場における日本語文化の教育内容を豊かにするための具体的な政策や支援策はあるか示されたい。

政府
お尋ねの趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難であるが、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)第二条第五号において教育の目標として定める「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する・・・態度」を養うための取組の一つとして、我が国の言語文化に関する教育の充実に向けた取組を進めているところであり、例えば、小学校、中学校及び高等学校においては、学習指導要領に基づき、全ての児童生徒に対し、国語科において、我が国の言語文化に関する指導を行うなどしており、こうした取組により、我が国の伝統と文化を尊重する態度等の育成が図られていると考えている。

神谷宗幣(参政党)
伝統的な言語文化としての日本語の継承と発展のために、日本人が学ぶ日本語を教育課程に体系的に位置付け、自国語に対する国民の真の理解と誇りが自覚できるような取組を推進していくべきと考えるが、これに関する政府の見解を示されたい。

政府
御指摘の「伝統的な言語文化としての日本語の継承と発展」及び「日本人が学ぶ日本語を教育課程に体系的に位置付け、自国語に対する国民の真の理解と誇りが自覚できるような取組」の意味するところが必ずしも明らかではないが、小学校学習指導要領(平成二十九年文部科学省告示第六十三号)においては、小学校の国語科の目標として、例えば、「国語の大切さを自覚し、国語を尊重してその能力の向上を図る態度を養う」等、中学校学習指導要領(平成二十九年文部科学省告示第六十四号)においては、中学校の国語科の目標として、例えば、「我が国の言語文化に関わり、国語を尊重してその能力の向上を図る態度を養う」等、高等学校学習指導要領(平成三十年文部科学省告示第六十八号)においては、高等学校の国語科の目標として、例えば、「我が国の言語文化の担い手としての自覚をもち、生涯にわたり国語を尊重してその能力の向上を図る態度を養う」等とそれぞれ規定した上で、これらを踏まえて国語科の内容を児童生徒の発達段階等に応じて規定しており、小学校、中学校及び高等学校においては、これらの学習指導要領に基づき、全ての児童生徒に対し、国語に関する指導を行うこととしている。

 

神谷宗幣(参政党)
政府はこれまで、高等教育課程における日本人学生の日本語力の状況を過去、どのように評価してきたか。また現状を踏まえ、どのような方向性を推進していく考えか示されたい。

政府
御指摘の「日本人学生の日本語力の状況」の具体的な内容が必ずしも明らかではないが、高等教育段階における学生の国語に関する能力については、政府として調査を行っていないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

神谷宗幣(参政党)
学校卒業後も地域社会や国際社会に貢献する人材を育てるためには、英語教育の推進とともに、同程度かそれ以上に、高等教育課程において日本語重視で教育方針を立てていくことが必要不可欠であると考える。政府においてはどのような方針を持っているか示されたい。

政府
高等教育段階における御指摘の「教育方針」については、各大学、短期大学、高等専門学校及び専門学校において、自主的・自律的に決すべきものであり、御指摘の「高等教育課程において日本語重視で教育方針を立てていくこと」は考えていない。

神谷宗幣(参政党)
政府は、学校教育並びに社会教育、研究分野において言語文化としての日本語の普及と発展に向けた長期的なビジョンを有しているか。今後十年間にわたって推進していく目標はあるか示されたい。

政府
お尋ねの趣旨が明らかではないため、お答えすることは困難であるが、例えば、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策等について定める「教育振興基本計画」(令和五年六月十六日閣議決定)においては、「我が国や郷土の伝統や文化を受け止め、日本人としての美徳やよさを生かし、それらを継承・発展させるための教育を推進する」こととしているところである。

神谷宗幣(参政党)
他国の言語政策と比較して、日本の言語教育政策が直面している独自の課題は何か。これらの課題を克服するための具体的なアプローチを示されたい。

政府
御指摘の「他国の言語政策」について、その詳細を把握しているわけではなく、また、御指摘の「他国」の「言語教育政策」が直面している課題は様々にあり得ると考えられるため、お尋ねの「日本の言語教育政策が直面している独自の課題」及び「これらの課題を克服するための具体的なアプローチ」について、一概にお答えすることは困難である。

貸与型奨学金の返済負担の軽減に関する質問主意書(2023年12月13日)

質問

回答

独立行政法人日本学生支援機構(以下「JASSO」という。)による学生生活調査(令和二年度)によれば、大学生や大学院生の約半数が奨学金を利用しており、奨学金が多数の学生にとって欠かせない経済的支えとなっているというのが実態である。奨学金の借入総額は学生一人あたり平均三百十万円、返済期間は同十四・五年間に及ぶ(中央労福協二〇二二年九月「奨学金や教育費負担に関するアンケート報告書」)。

生活困窮者を支援するNPOが元大学生らに対して行ったアンケートによると、JASSOから奨学金を借りていた人のうち、返済延滞の経験がある人が二十八%、このうち自己破産を検討したことのある人も十%おり、その要因として、「収入が低い」ことが原因であると答えた人が六十七%であるとされる(令和四年九月二十一日付「共同通信」)。

貸与型奨学金に関連する自己破産は、平成二十四年度から平成二十八年度の五年間で延べ一万五千三百三十八人にも上る(平成三十年二月十二日付「朝日新聞」)。それだけでなく、令和四年から国の自殺統計の分類に、「奨学金の返済苦」が加わり、実際、奨学金の返済苦が原因で自殺したと考えられる人が十人いたという。

一方で、貸与型奨学金を返済中の者は、未婚率が高く、子供の数が少ないと研究結果で示されている(教育費負担と学生に対する経済的支援のあり方に関する実証研究)。

支払い総額が高額で長期の返済になる奨学金は、日本の若年世代の結婚や出産といったライフプランの大きな障害となっており、返済が滞った末に破産をしたり、自殺してしまったりする若者がいることが、以上のことから示されている。

現実に若年勤労者の収入増が十分に実現されない状況の下で、貸与型奨学金についてその返済負担の軽減について十分な対策が講じられないままであれば、若年層は増大する社会保障負担をも担いつつ疲弊する一方であり、家庭を持てないことでさらに少子化が加速することになりかねない。

政府は、「こども未来戦略方針」の「加速化プラン」等に基づき、奨学金制度の拡充を目途に令和六年から高等教育費の負担軽減策を実施する見込みというが、現状の抜本的な見直しをしなければ、解決に至らないのではないか。

以上を踏まえ、質問する。

神谷宗幣(参政党)
貸与型奨学金が未婚率や少子化に影響を与えている可能性について、政府としてどのような現状認識を有しているか。また、現在、政府が打ち出している高等教育費の負担軽減策を通じて、未婚率や少子化の改善につなげていく戦略的視点を政府は有しているのか。

政府
一の前段について

奨学金の返還については、これまでも、経済的理由から独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)における奨学金の返還が困難となった者に返還の期限を猶予したり、将来の収入に応じて返還できる制度を導入したりするなど、きめ細かな救済措置を講じてきたところ、さらに、「こども未来戦略」(令和五年十二月二十二日閣議決定)において「貸与型奨学金について、奨学金の返済が負担となって、結婚・出産・子育てをためらわないよう、減額返還制度を利用可能な年収上限について、三百二十五万円から四百万円に引き上げるとともに、子育て時期の経済的負担に配慮する観点から、こども二人世帯については五百万円以下まで、こども三人以上世帯について六百万円以下まで更に引き上げる。また、所得連動方式を利用している者について、返還額の算定のための所得計算においてこども一人につき三十三万円の所得控除を上乗せする」としており、政府としては、同閣議決定に基づき、奨学金の返還負担を一層軽減することとしている。

一の後段について

お尋ねの「現在、政府が打ち出している高等教育費の負担軽減策」の指すところが必ずしも明らかではないが、「こども未来戦略」においては、「教育費の負担が理想のこども数を持てない大きな理由の一つとなっているとの声があることから、特にその負担軽減が喫緊の課題とされる高等教育については、教育の機会均等を図る観点からも、着実に取組を進めていく必要がある」として、高等教育費の負担軽減について、一の前段についてで述べた奨学金の返還負担の軽減のほか、「授業料等減免及び給付型奨学金について、低所得世帯の高校生の大学進学率の向上を図るとともに、二千二十四年度から多子世帯や理工農系の学生等の中間層(世帯年収約六百万円)に拡大する。さらに、高等教育費により理想のこども数を持てない状況を払拭するため、二千二十五年度から、多子世帯の学生等については授業料等を無償とする措置等を講ずることとし、対象学生に係る学業の要件について必要な見直しを図る」及び「授業料後払い制度について、まずは、二千二十四年度から修士段階の学生を対象として導入」するとしており、これらを着実に実施していくことにより、御指摘の「未婚率や少子化の改善」を進めていく考えである。

神谷宗幣(参政党)
現在、政府が打ち出している高等教育費の負担軽減策について、各施策の対象となる学生の数と負担軽減額について示されたい。

政府
お尋ねの「現在、政府が打ち出している高等教育費の負担軽減策」の指すところが必ずしも明らかではないが、一の後段についてで述べた「こども未来戦略」における高等教育費の負担軽減については、現在その具体的な内容について検討を進めているところであり、現時点において、お尋ねについてお答えすることは困難である。

神谷宗幣(参政党)
過去十年間における奨学金返済をも債務に含んだ自己破産件数は何件に及ぶか、示されたい。

政府
機構において、平成二十五年度以降の各年度において、要返還者(奨学金の貸与を受け、その奨学金を返還する義務を有する者をいう。以下同じ。)、要返還者の代理人又は裁判所からの連絡により、破産手続開始の申立て等が行われたものとして把握している件数は、平成二十五年度は二千九百八十八件、平成二十六年度は二千七百七十八件、平成二十七年度は二千七百八十九件、平成二十八年度は三千二百七十五件、平成二十九年度は三千八百九十件、平成三十年度は四千二百八十六件、令和元年度は四千五百三十三件、令和二年度は三千五百三十二件、令和三年度は五千百十九件、令和四年度は四千四百九十一件であると承知している。

神谷宗幣(参政党)
貸与型奨学金は、「奨学金」という名称が用いられているために実質的に「借金」であるという意識が低くなりがちである。自己破産者が出ている現状から見れば、「学生ローン」等への名称変更によって返還義務のある借金であるということの理解を進め、ライフプランの見通しを踏まえた借り入れを促すことが必要ではないか。

政府
奨学金制度に対する理解の促進については、機構において、例えば、各高等学校等が生徒、保護者、教員等を対象として開催する奨学金の説明会等に、奨学金制度の理解を促進するためのスカラシップ・アドバイザーを派遣して奨学金の返還等の資金計画を含めた適正な奨学金制度の利用等について説明する等して、奨学金制度に対する理解の促進を図っているものと承知しており、御指摘の「「学生ローン」等への名称変更」を行う必要はないと考えている。

神谷宗幣(参政党)
現状の貸与型奨学金の返済金利は(平成十九年四月以降に奨学生に採用され、令和五年十一月に貸与修了した者の場合で見ると)年利約一%であるが、そもそも「借り入れ」だとしても学業の成就のために必要な経済的支えとして支給が申請されるものであり、それがすぐに事業活動のような経済的利益につながると考えにくいものであることから、金利ゼロに戻すべきではないか。

政府
お尋ねの「金利ゼロに戻すべき」の意味するところが必ずしも明らかではないが、機構による有利子貸与事業については、限られた財源の中でより多くの学生等に奨学金を貸与することができるよう、民間借入金等を財源として低利で実施しているものと承知しており、これを取りやめることは考えていない。

解説動画

令和5年度における児童生徒のいじめ・不登校について(2025年1月22日)

参政党が経済政策よりも教育を第一に掲げる理由(2023年5月24日)