議会質問
金融経済教育を通じて日本経済にどのような方向付けを与えようと考えているのか(2023年11月16日)
神谷宗幣(参政党)
今回の法案が通れば金融経済教育推進機構が成立し、金融経済教育が始まります。金融経済教育推進機構は何を主眼に金融経済教育を行おうとする機構なのでしょうか。国民の資産運用の在り方についてどのような弊害や問題意識を踏まえ、教育を通じて日本経済にどのような方向付けを与えようと考えているのか、まず前提をお聞かせください。
堀本善雄(政府参考人)
お答え申し上げます。金融経済教育推進機構における教育活動の主眼は、金融リテラシーの向上を通じまして、国民一人一人が経済的に自立をいたしましてより良い暮らしを送っていくこと、これを可能にすることが主眼でございます。具体的には、金融経済教育を通じまして、家計管理や生活設計を習慣化する、あるいはリスク、リターンを始めとする様々な金融商品の特質や、あるいは詐欺的な投資勧誘の悪質なトラブルの防止を理解する、それから自らのニーズやライフプランに合った適切な商品、金融商品やサービスを選択できると、そういうふうなリテラシーの向上を図っているということでございます。来年一月からは新しいNISAが始まる予定でございまして、その際に、新たに資産形成を取り組む方の増加が見込まれるところでございますが、特にそうした投資初心者の方に対して適切なタイミングで金融経済教育を受ける機会を提供すると、その結果として金融に関する幅広い知識の習得や判断を培っていただくことが必要不可欠だということで、一層重要なものになるというふうに考えております。
神谷宗幣(参政党)
ありがとうございます。確かに、今の日本の教育には金融や経済の教育は欠けているのではないかと感じています。
伝統的な社会全体を考える金融経済教育(2023年11月16日)
神谷宗幣(参政党)
戦前まではそれぞれの地域に講、何とか講というものがありまして、みんなでお金を出し合って少し利子を付けて貸すなど、仲間の応援をするという助け合いの仕組みがあったと思います。お金も、ただ貸す、お金を貸す側も、ただ貸すだけではなく、貸した相手に仕事を融通するなどして、その貸した相手が返済不能にならないようなサポートもしていました。こうした取組を通じて、自分の支出は誰かの収入であり、自分の収入は誰かの支出であるという当たり前のことから社会全体のお金の流れを知り、単に自分たちさえ良ければよいというような守銭奴的なことを避け、他人や社会全体を豊かにするという思想が持てる経済教育があったわけです。しかし、このような助け合いの仕組みや制度はGHQの占領支配時代に大分壊されまして、信用金庫とか相互銀行といった銀行の制度に変えられてしまって、金融や投資の仕組みも大きく変わり、この元々大事にしていた考え方とか知識が一般の国民から失われてしまったというふうに感じています。そして、最近の傾向を見ると、金融リテラシーの向上ばかりが先走って、いかに節約をして効率的にお金をためて将来に備えるかといったことが国民の関心になっているように感じます。金融リテラシーを学んだ国民が自分の将来に向けて節約などしてばかりでは国全体が豊かになれないのは当然であり、そこからこの三十年の日本の経済の停滞の原因の一つにもなっているのではないかと感じるほどです。また、今後、確定拠出年金やNISAなどの制度を活用し、多くの資産、多くの運用益や節税のメリットを得る方が出てくる一方で、しっかりと活用できない方も出てくることが想定できます。少子高齢化に伴い社会保障の継続性にも不安がある中で、こういった活用できない、制度を活用できない人たちを単なる自己責任論で切り捨てるような新自由主義的な考え方になってしまったら、それこそ、それこそですね、日本の社会全体の問題になります。我が国が大切にしてきた、他者を思いやり、社会全体のことを考える、そのような金融経済教育が行われる必要があると思いますが、今回、今後の計画にそのような視点が入っているのか、お聞かせください。
堀本善雄(政府参考人)
金融経済教育が目指します国民一人一人の金融リテラシーの向上については、結果として、健全で質の高い金融商品の提供の促進を通じて家計金融資産の有効活用や経済活動への資金の供給につながり得るというふうに考えておりまして、そういう意味で、公正で持続的な社会の実現に役立つというふうに考えております。金融経済教育を通じまして、金融という側面からなんですけれども、社会、経済の循環の基本的な仕組み、これを理解を深めていただくということが、国民一人一人が社会全体のことを考える一助になるというふうに考えております。
神谷宗幣(参政党)
なかなか最初の説明ではそういった点が感じられなかったので、是非そういった視点を入れていただきたいんですね。江戸時代には二宮尊徳という、経済人であり教育者でもある人物がいました。彼の教育活動なんか見ると、お金とは何か、どう使うと個人が幸せになり、社会全体が良くなるかということを皆さんに教育して、たくさんの村や藩の再建に尽力したという実績があります。この功績を明治天皇なども評価されて、全国の小学校にその銅像が建てられたということは有名ですね。これから政府が金融経済教育を進めることは良いことだと私は思っています。ただ、西洋かぶれしたものではなくて、投機とかマネーゲームではなくて、日本人が大切にしてきた、日本人の精神に沿った金融経済教育を期待しておりますので、よろしくお願いします。
経済安全保障の観点からの金融経済教育(2023年11月16日)
神谷宗幣(参政党)
二〇二三年の三月時点の国内大手不動産ディベロッパーの外国人株式、株主比率ですね、を見ると、三井不動産が四八・二七%、三菱地所が四三・六四%となっていて、こういった実質を見ると、外国資本に日本の土地の多くが買い占められていると、間接的にですけれども、そういったふうにも言えます。また、ソニー、東芝、任天堂といった有名な大手企業も外国人の資本比率、株主資本比率が非常に高く、まあ悪く言うと外国人の投資家のために日本人が働いていると、まあ悪く言うとですけど、そういった状況とも言えます。こういった状況になったのは、我々日本人が日本企業の株式に対し、リスクが高いとかもうからないといって持分を減らしてしまって、その分を外国人が買ったと、持分を増やしたということに起因します。これも言い方は悪いですが、日本国民の金融リテラシーの低さから生まれた事態だと言っても過言ではないかというふうに残念ながら思うんですね。今後、日本人に教育をして個人投資を進めたとしても、今のような状況が加速されたということでは意味がなくなります。日本の国土や企業、人を守る、すなわち経済安全保障の観点から金融リテラシーの向上に向けたアプローチというものが非常に大切だと思います。国家間の戦争の目的というのは、相手の国を滅ぼすことではなくて、相手の国を自分たちの思いどおりにコントロールをすることです。経済の闘いに敗れるということは、戦争に負けるということに等しいと思います。このような国防、経済安全保障の観点も入れた金融経済教育を行っていくべきだと考えますが、現状の計画の中でこうした視点は含まれているか、お聞かせください。
堀本善雄(政府参考人)
金融経済教育推進機構における内容、提供する教育の内容については、最低限身に付けるべき金融リテラシーの内容を年齢層別に具体化、体系化した金融リテラシー・マップというのがございまして、これを踏まえつつ行っていくことになります。この金融リテラシー・マップにおいては、現状、国防や経済安全保障の観点に関しての直接な言及はございませんけれども、先ほど来申し上げておりますように、国民一人一人の金融リテラシーが向上して、結果として、家計金融資産の有効活用、あるいは、これらの資金が日本経済の活動の資金供給につながると、そういう形で公正で持続的な社会の実現に役立ち得るというふうに考えております。
神谷宗幣(参政党)
ありがとうございます。お金をどう使うか、どう運用するかってすごく大事だと思うんですよね。ただ単にお金が増えた減っただけで一喜一憂するんではなくて、そのお金がどういったことに使われて、国全体がどう強くなったか、豊かになったかということが大事で、国民の資産は確かに増えた、でも、日本国民が外国の株式をたくさん持って、見かけ上資本は増えて、あっ、資産は増えているんだけれども、でも、肝腎の日本企業、それから日本の土地、それが外国人のコントロール下にあるということになってしまっては本末転倒になると思います。私よく言うんですけれども、戦争のプロセスというのは情報戦、経済戦、武力戦ですね。政府はさきの国会で防衛予算の増額を決めましたが、その予算のほとんどは武力戦に備えるものでした、ミサイルとかね。情報戦とか経済戦というものに充てられる予算はほとんどなかったというふうに思います。今回の金融経済教育は本当に良い取組だと思っているので、是非、こういったときに、まあ経済戦という言葉がいいかどうか分かりませんが、でも、やはり国を守る、国の富を守るという視点も是非入れていただいて、その中で、その大きなフレームワークの中で国民の資産が増えましたというふうにしていただかないと、資産は増えたけれども、結局日本人の日本に対する影響力は減りましたということでは意味がなくなってしまうので、是非、この点、今後、そのマップですね、金融リテラシー・マップそのものにも、少しでもいいので加えていただきたいというふうに強く要望したいと思います。
金融経済教育を行う前提(2023年11月16日)
神谷宗幣(参政党)
確定拠出年金は六十歳までで、中途引き出しは原則不可。新NISAでは、無期限の税制優遇など、リスクを軽減し、しかるべきリターンを確保する長期の資産形成を促すものになっていて、老後の資金を確保する上で良い制度だと理解をしています。しかし、この制度を導入しなくても、こういったNISAの制度なんかを導入しなくても、実は我々の上の世代の方々は公的年金だけで安心してやっていけたという事実もあります。運営管理機関連絡協議会の確定拠出年金統計資料によると、二〇一五年から二〇二二年の間で、企業型は五百八万人から七百八十二万人、個人型は二十一万人から百九十五万人と急増をしています。二〇〇〇年と二〇〇一年に開始された確定拠出年金の加入者が近年になって急増した要因の一つとして、将来の年金の不安があるというのは間違いがないことだと思います。また、この急増のきっかけともなったのが、二〇一九年の金融審議会市場ワーキング・グループ報告書、高齢社会における資産形成・管理による二千万円問題というやつですね。レポートでは、公的年金だけでは標準的な生活を送ろうとすると毎月五・五万円が不足し、老後三十年間生きるには約二千万円の資金が必要だというふうに、不足するというふうに試算されたわけですね。ただし、これは単純に五・五万円掛ける三百六十か月という計算なので、日銀が示している安定的な物価上昇、つまり年二%の物価上昇というものを考慮せず作られている数字です。年金の百年安心プランによってマクロ経済のスライド方式が導入され、かつてのように年金が物価上昇率と同程度に上昇していくわけではなくなったので、年金収入は増えずに支出だけが増えるわけですから、物価の上昇の目的が達成された際には老後資金の不足というものは上記の計算による二千万円どころではなくなるということになります。民主主義において大切なことは、国民が現状と今後の展望を正確に理解していることだと私は考えています。金融経済教育を行う前提として、国民一人一人が現行の国の制度や在り方を真剣に考えて、自ら問える、考える状況というものをつくらないといけないというふうに考えますが、こうした現状の共有ですね、大臣として、国民にしっかりと訴えた上で教育を始めていただけないかというふうに思うんですけれども、大臣のお考えをお聞かせください。
鈴木俊一(国務大臣)
国民一人一人がより自立的で安心かつ豊かな生活を実現するためには、御指摘のように、経済を取り巻く環境や個々人の将来的な収支の見通しなどに関する幅広い理解を含めて金融リテラシーを向上させていくことが重要であると考えます。そのような観点から、金融経済教育推進機構においては、家計管理や生活設計、適切な金融商品の利用、選択だけではなくて、それらの検討をする前提となる金融経済情勢や社会保障、税制などの公的制度も含めて広範な分野の教育にも取り組んでまいりたいと考えております。
神谷宗幣(参政党)
良い答弁いただけたと思います。ありがとうございます。資産運用立国、資産所得倍増元年、貯蓄から投資へなどときれいな言葉が並んでいるんですけれども、その裏側には、もう国の年金制度では国民の老後の生活を保障できないというメッセージもあると思いますし、先ほど大塚議員のですね、聞いていても、昔は貯蓄をしていれば、銀行に預けておけば増えたわけです、銀行がうまく利用して。でも、もうそれができないので、そういう仕組み壊されちゃったので、もう国民が自分で老後の資金なども考えて確保しておかないと回らないんだというふうに分かりやすく言わないと、多くの国民、気付けないと思うんですね。オブラートに包んで政策を訴えておいて、後になって、いや、我々ちゃんと注意喚起していましたよということでは国民不幸になってしまいますので、言いにくいことだと思いますが、しっかりと教えていく、伝えていくということが国のリーダーの責務だというふうに思います。金融経済教育をして、資産運用を国が勧めるということの本当の意図をもう少し国民に分かりやすく伝えていただきたいと要望して、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。