質問主意書
米国食品医薬品局(以下「FDA」という。)は二〇二五年一月十五日、着色料「食用赤色三号」の食品への使用許可を取り消す決定を行ったことを公表した。消費者庁ウェブサイト「食用赤色三号のQ&A」によれば、この決定は、米国連邦食品医薬品化粧品法のデラニー条項における「動物やヒトにがんを引き起こすと考えられる物質は食品添加物として使用できない」との規定を適用したものである。一方で、FDAは「ヒトの健康に影響を及ぼすという主張は科学的に裏付けされたものではない」と申し添えている。
しかし、日本では依然として食用赤色三号の使用が認められており、安全性の評価が改めて問われている。雄ラットの試験で発がん性が認められた報告があることから、人体への影響についても科学的に再評価する必要があると考える。
また、この問題は、食用赤色三号という特定の着色料にとどまらず、日本の食品添加物全体の規制の在り方にも関係する。一般財団法人食品産業センターのウェブサイトで公開されている海外食品添加物規制早見表(以下「早見表」という。)によると、我が国で使用可能な食品添加物のうち、海外の主要十カ国・地域(米国、EU(英国含む)、中国、韓国、台湾、香港、シンガポール、タイ、ベトナム、豪州)と比較して、六カ国・地域以上で使用禁止となっているものが百二十三品目あり、そのうち、十カ国・地域全てで禁止されているものが三十六品目ある。今回FDAが使用を禁止した食用赤色三号と同様の赤色系タール色素である食用赤色百四号、百五号及び百六号もこの三十六品目に含まれている。
これらの状況を踏まえると、現行の規制基準では安全性の確認が十分であるとは言い難く、食品添加物の使用可否は、「人体への悪影響があるかどうか」ではなく、「悪影響がないことが証明されているか」を基準に決定されるべきと考える。また、着色料の使用禁止は食品の品質や流通に影響を与えないため、消費者の健康リスクを最小限に抑える観点からも慎重な検討が求められると考える。さらに、日本の食品添加物の規制は、国際的な動向に比べて緩やかであり、規制の見直しに時間を要する傾向がある。食品添加物の管理は、国民の健康維持だけでなく、長期的な医療費抑制にも関係する重要な課題である。
これらを踏まえ、以下質問する。
神谷宗幣(参政党)
食用赤色三号について、政府は過去五年間に安全性評価を行ったとされているが、その評価は具体的にどの機関が、どのような科学的手法で行ったのか明らかにされたい。また、評価結果の概要、使用した試験データ(発表年・試験機関・対象とした研究)を示すとともに、長期摂取による影響や他の食品添加物との相互作用の評価がどのように行われたのか示されたい。
政府
御指摘の「政府は過去五年間に安全性評価を行ったとされている」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、食用赤色三号については、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号。以下「法」という。)第十二条の規定に基づき、昭和二十三年に食品添加物として指定されており、また、令和七年二月十八日に開催された食品衛生基準審議会添加物部会において、食品添加物としての指定を取り消し、又は法第十三条第一項に規定する食品添加物としての使用に係る既存の基準を改正する必要性の有無について議論され、直ちにそれらの必要はないとの結論が得られている。
神谷宗幣(参政党)
早見表によると、食用赤色三号を含む日本で使用可能な食品添加物のうち、海外の主要十カ国・地域全てで禁止されているものが三十六品目ある。これらの食品添加物それぞれについて、日本の基準と各国の基準の具体的な違いを示されたい。また、政府は各国がこれらの食品添加物の使用を禁止した理由について把握した上で、日本における使用を認めているのか示されたい。
政府
食品添加物については、我が国と諸外国とでは、その定義や使用が可能な食品の範囲等が異なっていること、また、使用が可能でないことをもって、必ずしも各国において使用を禁止する措置がとられたものであるとは限らず、需要がないなどの理由で使用されていない場合もあることから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であるが、我が国においては、一般に、法第十二条の規定に基づき使用が可能なものを指定しており、その指定の可否を判断するに当たっては、食品安全基本法(平成十五年法律第四十八号)第二十四条第一項第一号に基づいて行う同法第十一条第一項に規定する食品健康影響評価(以下「食品健康影響評価」という。)及び食品衛生基準審議会における審議結果を踏まえることとし、また、法第十三条第一項の規定により、必要に応じて規格基準を定めている。
神谷宗幣(参政党)
食用赤色三号を含め、日本の食品添加物の安全性基準は、食品添加物公定書によって五年ごとに見直されているとされるが、新たな科学的知見が出た場合に、五年を待たずに即時見直しを行う仕組みはあるのか示されたい。また、過去五年間で緊急の見直しが行われた事例があるか示されたい。
政府
御指摘の「日本の食品添加物の安全性基準は、食品添加物公定書によって五年ごとに見直されているとされる」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、食品添加物については、法第十三条第一項の規定により、必要に応じて規格基準を定めているほか、規格基準については、科学的知見に基づき、随時、必要な見直しを行い、食品添加物の安全性を確保している。なお、御指摘の「食品添加物公定書」は、法第二十一条の規定に基づき、法第十三条第一項の規定により規格基準が定められた食品添加物及び食品表示法(平成二十五年法律第七十号)第四条第一項の規定により基準が定められた食品添加物につき当該規格基準及び基準を収載しているものである。また、御指摘の「緊急の見直しが行われた事例」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、過去五年間において、安全性を理由として、法第十二条の規定に基づく指定を取り消した事例はないと承知している。
神谷宗幣(参政党)
食品衛生法第十二条に基づき、厚生労働大臣が使用してよいと定めた食品添加物のうち、他国で禁止されている割合の高い食品添加物について、政府はどのような科学的根拠に基づいて安全性を評価しているのか示されたい。
政府
御指摘の「食品衛生法第十二条に基づき、厚生労働大臣が使用してよいと定めた食品添加物のうち、他国で禁止されている割合の高い食品添加物」の具体的に意味するところが明らかではないが、二についてで述べたとおり、食品添加物については、一般に、法第十二条の規定に基づき使用が可能なものを指定しており、その指定の可否を判断するに当たっては、食品健康影響評価及び食品衛生基準審議会における審議結果を踏まえることとし、また、法第十三条第一項の規定により、必要に応じて規格基準を定めている。
神谷宗幣(参政党)
食品添加物の長期摂取や相互作用に関する研究への助成状況を示されたい。また、今後、新たな研究・事業に対して助成する予定があるか示されたい。ある場合は、その具体的な内容を示されたい。
政府
御指摘の「食品添加物の長期摂取や相互作用に関する研究への助成状況」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、食品添加物に関する調査研究としては、例えば、消費者庁における令和六年度の食品衛生基準科学研究費補助金及び食品衛生基準行政推進調査事業費補助金による食品衛生基準に関する科学研究並びに食品安全委員会における食品健康影響評価技術研究において、食品添加物等を含めた食品の安全性の確保に資する研究事業を実施しており、今後も必要に応じてこうした研究事業に取り組んでまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
早見表によると、日本で使用可能な食品添加物のうち、海外の主要十カ国・地域全てで禁止されているものが三十六品目ある。日本で加工した食品を輸出する際、これらの食品添加物が含まれていることで輸出の障壁となっている可能性について政府の見解を示されたい。また、加工食品の輸出促進の観点から、食品添加物基準を見直す計画があるのか示されたい。
政府
政府としては、食品企業等からの聞き取りにより、加工食品を輸出するに当たって、御指摘の「早見表」に記載されている食品添加物が含まれることが課題となる場合があると承知しているが、個別の食品添加物に関する課題を網羅的には把握していないため、前段のお尋ねについて一概にお答えすることは困難である。また、御指摘の「加工食品の輸出促進の観点から、食品添加物基準を見直す計画」の具体的に意味するところが明らかではないため、後段のお尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、食品添加物については、一般に、法第十二条の規定に基づき使用が可能なものを指定しており、その指定の可否を判断するに当たっては、食品健康影響評価及び食品衛生基準審議会における審議結果を踏まえることとし、また、法第十三条第一項の規定により、必要に応じて規格基準を定めているほか、科学的知見の集積や国際整合性を踏まえ、必要に応じて規格基準を見直すこととしている。
我が国の漁獲量は、昭和五十九年の最高水準千二百八十二万トンから減少の一途をたどり、令和二年には、四百二十三万トンとなり、ピーク時から六十七パーセントも減少した。また、海面養殖業による生産量も、昭和六十三年の百三十四万トンをピークに減少を続け、令和四年には九十一万トンにまで減少している。
一方、過去三十年における世界の天然漁獲量は、九千万トン程度で安定しており、養殖による生産量は十年前に漁獲量を超え、増加傾向を維持していることから、世界の総水揚げ量は、右肩上がりで増加している。日本とは異なり、世界的にみると、水産業は成長産業となっている。
世界の水揚げ量、漁獲量の推移が示す傾向に対して、日本だけが漁獲量の減少を続けている現実は「食料安全保障」の観点から見ても由々しき問題であり、政府としては現状の分析と改善施策の策定、実施が急務となっている。
この点でのひとつのあり方として、ノルウェーを始めとする漁業先進国が、乱獲により水産資源を減少させた過去の反省から、水産資源の持続可能な管理に重点を置き、科学的根拠に基づく水産資源管理を推進し、着実な成果を上げてきたことは大いに注目すべき事例と考える。この過程でノルウェーは漁業補助金を全面的に廃止した。水産資源の持続可能な管理アプローチは、科学的な調査、データ収集、データ分析、そして管理計画の策定といったプロセスから成り立っている。収集されたデータを漁業監督機関が集積し、研究機関と共同で分析して管理計画が立案されている。
他方、我が国では、「排他的経済水域内の水産資源は国民共通の財産であるとの理念の下…水産資源の回復に向けた資源管理の強化を実現する」(平成二十三年七月二十二日閣議決定)とされたものの、実際は「資源管理の強化」の明らかな効果は現れておらず、依然として漁獲量の減少傾向に歯止めがかからない状況である。
我が国の食料安全保障上の観点から、国民に安定的な食料確保をする上での役割を永続的に果たし得る持続可能な漁業の将来を考えるとき、日本も他の漁業先進国のように、水産資源を国民全体の共有財産とし、国民の負託を受けて国が管理するという方法を模索すべき時期にきている。
以上を踏まえ質問する。
神谷宗幣(参政党)
政府は、水産基本計画(令和四年三月二十五日閣議決定)に基づき、令和二年度より「新たな資源管理」の推進を掲げ、同十二年度に漁獲量を四百四十四万トンまで回復させることを目指しているが、これはいかなる調査データ及び分析によって担保された目標なのか。目標達成のための施策の推進方向、予算的裏付けまで具体的に示されたい。
政府
御指摘の「同十二年度に漁獲量を四百四十四万トンまで回復させること」は、我が国の漁獲量が、平成二十年の約四百三十万トンから、その十年後の平成三十年に約三百三十一万トンへ減少したこと等を踏まえて、令和二年九月に農林水産省が策定した「新たな資源管理の推進に向けたロードマップ」(以下「ロードマップ」という。)において、この十年間の漁獲量の減少を、その後の十年間で回復させることを当面の目標として設定したものであり、水産基本計画(令和四年三月二十五日閣議決定)においても、令和十二年度までに四百四十四万トンまで漁獲量を回復させることを目標とする旨を位置付けたところである。当該目標の達成のため、水産資源について、漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)第九条に基づく資源調査及び資源評価、同資源評価を踏まえた同法第八条第二項に基づく漁獲可能量による管理、同条第三項に基づく漁獲割当てによる管理制度の導入、同法第百二十四条に基づく水産資源の保存及び管理に関する協定(以下「資源管理協定」という。)の締結の推進等を行うこととしており、その具体的な行程をロードマップの中で示している。これらの施策を実施するため、令和五年度予算においては、農林水産省において、水産資源調査・評価推進事業に要する経費として約五十五億円、新たな資源管理システム構築促進事業に要する経費として約八億円等を計上したところである。引き続き、必要な予算の確保に努めてまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
科学的根拠に基づく資源調査のベースとなる資源監視・取締り・調査のための予算に関して、アメリカでは、総トン数あたりの水産予算額のうち約八割、OECD諸国の平均ではグロストン当たりの水産関係支出の五割弱がこれらに充てられているのに対し、日本では、水産関係予算全体の予算の一割程度しか充てられていない。令和六年度の概算要求額もわずか三百十四億円程度にとどまっている。インフラ整備への予算配分以上に、科学的研究・データの収集・分析・取締りに関する予算割当を増やすことが「新たな資源管理」に資するものと考えるが、令和十二年度までのこれらに対する予算配分の見通しについて、どのような想定をもって考えているか。
政府
お尋ねの「科学的研究・データの収集・分析・取締りに関する予算」の意味するところが必ずしも明らかではないが、水産資源の調査及び漁業取締りのための予算については、令和六年度概算要求においては、農林水産省において、水産資源調査・評価推進事業等に要する経費として約九十九億円、外国漁船対策等に要する経費として約百九十二億円等を計上したところであり、これらにより我が国の水産資源の管理が十分に図られていくものと考えている。引き続き、水産業をめぐる状況の変化等に応じて、毎年度、必要な予算の確保に努めてまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
令和四年のWTOの合意において、IUU漁業(違法・無報告・無規制漁業)に対する補助金の禁止や濫獲状態の資源に関し、資源回復の取組を伴わずに供与される補助金が禁止された。この点、我が国では、漁業共済・漁業経営安定対策として、「積立ぷらす」を経由した国庫補助が行われているところ、政府は、同制度の審査にあたって、漁業者が資源回復の取組を行っていることをどのような方法で把握しているか。また、同制度が利用された後、政府は、漁業者が計画的に資源管理を行っていることについて、どのような方法で実態を把握し、評価を行っているか。
政府
政府としては、漁業共済の加入者に対し共済掛金の補助及び損失の更なる補填を行う事業である漁業収入安定対策事業の加入要件として、漁業者が加入する漁業共済の対象となる漁業種類に対応する資源管理協定等に参加することを求めており、これらで定めた取組の履行の確認は、試験研究機関、漁業協同組合連合会、漁業共済組合、漁業者団体等を構成員として国又は都道府県に設置される資源管理協議会において、客観的に履行の確認が可能な証拠等を基に、定期的に行うこととしている。また、資源管理協定等の取組の効果の検証は、その有効期間の終了時等において、同協議会において、漁業法第九条に基づく直近の資源評価の結果等を踏まえて行うこととしており、当該検証の結果は、農林水産大臣又は都道府県知事に報告され、当該報告を通じて、国及び都道府県において、漁業者による資源管理の取組を把握しているところである。
神谷宗幣(参政党)
我が国では、平成九年からTAC管理が導入されているが、例えば、令和三年度のサバのTACの消化率は五十三%、マイワシは六十二%、ズワイガニは四十六%、サンマは僅か十二%であるなど、漁獲量の実績に対して割り当てられているTACの値が大きすぎであり、漁獲枠として機能していないと思われる。TACの消化率の実態に見合った評価を検討すべきではないのか。また、今後、適正にTAC管理を運用していくために考えられるプロセスを示されたい。
政府
御指摘の「TAC」とは、漁業法第七条第一項に定める漁獲可能量を指すものと考えられるが、これについては、御指摘の「TACの消化率の実態に見合った評価」ではなく、同法第九条に基づく資源評価の結果を踏まえて設定することとしている。今後とも、科学的な知見に基づいて漁獲可能量を設定及び管理し、水産資源を持続的に利用できるよう努めてまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
資源の適切な管理の推進のためには、ITQ方式(譲渡可能漁獲割当量)の導入が有効なのではないか。限られた漁獲枠の中で水揚げ高を意識した計画的な操業が促され、かつ価値の低い幼魚や若魚などの漁獲を抑制する効果が期待できると思われる。我が国においては、ITQ方式の導入について具体的な検討は進められているのか。
政府
漁業法における漁獲割当ての制度については、特定の漁業者へ漁獲割当量が集中することで漁業者の減少につながること等の懸念を踏まえて、同法第十七条に規定する漁獲割当割合及び同法第十九条に規定する年次漁獲割当量を当事者間の合意のみに基づいて移転することができる制度ではなく、同法第二十一条及び第二十二条に基づき農林水産大臣又は都道府県知事の認可を受けた場合に限り移転することが可能な制度とされているところであり、現時点において、これを変更する予定はない。
神谷宗幣(参政党)
持続可能な漁業を行うためには、混獲や幼魚の混入について管理・制限を行い、非食用の魚の漁獲を減らすことも方法の一つであると考えられる。我が国における混獲、幼魚混入の管理、制限の具体的な取組と今後の方向性について示されたい。
政府
お尋ねの「我が国における混獲、幼魚混入の管理、制限」については、御指摘の「持続可能な漁業を行う」ため、国や都道府県等において、採捕が可能となる期間を制限する等の、水産資源の状況や漁具、漁法等の特性に応じた水産動植物の採捕に関する制限等を行っているところである。引き続きこうした取組を進めてまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
我が国の養殖業が全体として世界の趨勢と逆行して衰退している原因について、いかなる認識を有しているのか、示されたい。
政府
我が国の養殖業の生産量については、海水温の上昇等の影響により、長期的にみれば減少傾向にある一方で、生産額は平成二十六年以降増加傾向にあり、一経営体当たりの生産量も増加傾向にあることから、御指摘のように「我が国の養殖業が全体として世界の趨勢と逆行して衰退している」とは認識していない。
近年、科学的研究により、トランス脂肪酸、飽和脂肪酸、コレステロールの過剰摂取が心疾患リスクと関連していることが明らかになっている。二〇〇三年のWHOとFAOの合同会合では、トランス脂肪酸の摂取を極めて低く抑え、総摂取エネルギー量に対して、最大でも一%未満とすることが勧告された(以下「WHO勧告」という。)。これに基づき、デンマーク、スイス、オーストリアでは百グラム当たり二グラム以上のトランス脂肪酸を含む油脂の国内流通が禁止され、米国、カナダ、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ブラジル、韓国、香港、台湾、中国ではトランス脂肪酸の食品表示が義務付けられている。米国の食品医薬品局は、二〇一八年以降、トランス脂肪酸を多く含む部分水素添加油脂の使用を禁止する方針を発表し、また、WHOは、各国に対し、二〇二三年までに加工食品のトランス脂肪酸を減らすよう呼びかけており、行動計画も公表している。
このように、世界的にトランス脂肪酸に対する規制や表示義務化が広がっている。
一方、我が国では、二〇一二年に食品安全委員会が公表した「食品に含まれるトランス脂肪酸に係る食品健康影響評価」(以下「本件報告一」という。)に基づくと、日本人の大多数がWHO勧告を下回り、通常の食生活では、トランス脂肪酸の健康への影響は小さいとして、現在、トランス脂肪酸の表示は任意とされ、食品事業者に委ねられている状況である。
この点、二〇二〇年に消費者庁が公表したトランス脂肪酸の情報開示に関する調査事業報告書(以下「本件報告二」という。)によれば、トランス脂肪酸を含む商品を取り扱う事業者の約三割は、含有量を把握しておらず、八割以上の業者は、トランス脂肪酸に関する情報発信を行っていないという。報告によれば、今後も情報発信の予定がないとする事業者が半数近く存在することからすれば、現状が変わる可能性は低い。
ところで、本件報告一によれば、トランス脂肪酸は、ヒトに不可欠なものではないことから、できるだけ摂取を少なくすることが望まれるが、脂質に偏った食事をしている人は、トランス脂肪酸摂取量がWHO勧告を超えている場合があることが指摘されている。
この点、農林水産省のデータによれば、日本人の平均的な一日のエネルギー摂取量は、約千九百キロカロリーであり、この量に相当するトランス脂肪酸の量は約二グラムとされている。
本件報告一が引用する調査によれば、二〇〇五年から二〇〇六年に二十歳前後の女子学生二十五人を対象に調査をしたところ、二十五人のうち三人が一日の食事でWHO基準を大きく上回る約三グラムのトランス脂肪酸を摂取していたことが報告されている。また、二〇〇二年から二〇〇三年に二百二十五人の三十歳以上の成人を対象に調査をしたところ、男性の五・七%、女性の二十四・四%がWHO勧告以上のトランス脂肪酸を摂取していたこと、特に都市部に住む三十歳から四十九歳の女性のトランス脂肪酸摂取量が多かったことが報告されている。
このように、トランス脂肪酸の摂取量は、年齢、性別、食事の好み、生活環境などによって、大きな差があることが分かる。
以上のことを踏まえると、国民の健康意識向上のため、また、消費者が安心して生活できるようにするため、現状を踏まえ、消費者が求めている情報を的確に発信し、含有量表示を行うことが重要である。
以上を前提に、以下質問する。
神谷宗幣(参政党)
本件報告一以降、食品に含まれるトランス脂肪酸に関する食品健康影響評価は行われていない。本件報告一から、既に十数年が経過しているところ、国民の米や魚の消費量が年々減少していることから、国民の食生活が変化している可能性がある。このような状況を考慮し、政府は、国民の健康保持増進のため、国民のトランス脂肪酸摂取量について、現状を調査し、再評価を行うことを検討しているか。
政府
政府としては、厚生労働省が行っている国民健康・栄養調査及び農林水産省が行っている有害化学物質含有実態調査の結果、今後の新たな科学的知見等を踏まえて、お尋ねの「国民のトランス脂肪酸摂取量について、現状を調査し、再評価を行う」必要性について検討してまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
本件報告一が引用している過去の調査事例を見れば、若年層を中心に脂質に偏った食生活をしている場合があり、WHO勧告を超えた食生活を送っている国民も一定数存在するようである。この点、本件報告一では、「脂質に偏った食事」の例示がなく、一日当たり、具体的にどのような食生活を送った場合に、どの程度のトランス脂肪酸を摂取することになるのかが明確でない。この点、二〇二三年六月二日、食品安全委員会の二十周年記念企画として発表された連載コラムにおいても、トランス脂肪酸についていまだ国民の不安や国への不信があることに関し、「一般の人たちや報道関係者向けのわかりやすい情報発信が足りない、と正直に言って感じました。やっぱり、食品安全委員会の情報発信は難解でした。」と述べられている。この点について、政府は、国民に対して、より分かり易い情報発信を行う準備があるか。
政府
トランス脂肪酸の食品を通じた人の健康に及ぼす影響については、平成二十四年三月に食品安全委員会が取りまとめた食品健康影響評価において、「日本人の大多数がWHOの勧告(目標)基準であるエネルギー比一%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる」と評価されている。政府としては、当該評価を踏まえ、同委員会のホームページにおいて「脂質自体は重要な栄養素でもありますが、近年は、食生活の変化により脂質の摂取過剰が懸念されており、トランス脂肪酸だけを必要以上に心配せず、脂質全体の摂取量に十分配慮し、バランスの良い食事を心がけることが大切です」と周知しているところであり、引き続き、関係省庁の連携の下、SNS等も活用しながら、国民への分かりやすい情報発信に努めてまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
健康増進法第二条によれば、国民の責務として、「国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない」と規定されている。国民がこのような責務を果たすためには、自らが口にする食品にどのような成分が含まれているかを把握することは、重要である。このことから、国民が一日当たりの総摂取エネルギー量に対して、一%未満のトランス脂肪酸を摂取しないように心がけることができるよう、表示の義務化について検討すべきであると考えるが、政府の見解如何。
政府
食品表示法(平成二十五年法律第七十号)第四条第一項の規定により定められた食品表示基準(平成二十七年内閣府令第十号)においては、消費者の摂取状況等を踏まえた消費者への表示の必要性があること、事業者にとって表示が実行可能であること及び国際基準と整合していることの三点を全て満たす栄養成分の量及び熱量の表示を、内閣総理大臣が同法第四条第二項(同条第六項において準用する場合を含む。)の規定に基づき消費者委員会の意見を聴いた上で、食品表示基準第三条第一項に規定する食品関連事業者が容器包装に入れられた加工食品(業務用加工食品を除く。)を販売する際(設備を設けて飲食させる場合を除く。)に表示されなければならない事項(以下「義務表示事項」という。)として定めている。トランス脂肪酸の量の表示については、現時点において当該三点いずれも満たしているとは言えないことから、義務表示事項とはしないこととしており、御指摘の「表示の義務化」については、現時点では検討していない。
神谷宗幣(参政党)
前述のとおり、本件報告一では、「トランス脂肪酸は、ヒトに不可欠なものではないことから、できるだけ摂取を少なくすることが望まれるとされており、食品事業者においては、食品中のトランス脂肪酸含有量の低減に努める必要がある」とされている。それにもかかわらず、本件報告二では、トランス脂肪酸を含む商品を取り扱う食品製造事業者のうち、その含有量を把握していない食品製造事業者は約三割、情報発信を行っていない業者が八割、今後情報発信の予定がないとする業者は、半数近くに上ることが判明している。このような現状を踏まえれば、事業者に対し、トランス脂肪酸の含有量を把握することをより推奨し、情報発信を行う環境整備を行う必要があると思われるが、政府は本件報告二を踏まえ、どのような対策を講じるか。
政府
お尋ねについては、「トランス脂肪酸の情報開示に係る周知・普及について」(令和二年六月二十六日付け消食表第二百四十号消費者庁食品表示企画課長通知)において、「トランス脂肪酸を含む原材料を供給する食品製造事業者は、トランス脂肪酸を含む原材料を利用する食品製造事業者に対して、当該原材料中のトランス脂肪酸の含有量についての情報の提供に努める」こと、「トランス脂肪酸を含む原材料を利用する食品製造事業者であって、当該食品中のトランス脂肪酸の含有量の把握をしていない者は、原材料中のトランス脂肪酸の含有量の情報を入手し、含有量の把握に努める」こと及び「食品製造事業者は、引き続き、トランス脂肪酸に関する情報を自主的に開示する取組を進める」ことを示しているところであり、政府としては、引き続き、御指摘の「事業者に対し、トランス脂肪酸の含有量を把握することをより推奨し、情報発信を行う環境整備を行う」ことに努めてまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
政府は、トランス脂肪酸の含有量の食品表示に関し、トランス脂肪酸の規制等に関する質問主意書(第百九十二回国会質問第四七号)に対する答弁(内閣参質一九二第四七号)において、「食品表示法(平成二十五年法律第七十号)第四条第一項の規定により定められた食品表示基準(平成二十七年内閣府令第十号)においては、消費者の摂取状況等を踏まえた消費者への表示の必要性があること、事業者にとって表示が実行可能であること及び国際基準と整合していることの三点を全て満たす栄養成分の量及び熱量の表示を、内閣総理大臣が同法第四条第二項(同条第六項において準用する場合を含む。)の規定に基づき消費者委員会の意見を聴いた上で、同基準第三条第一項に規定する食品関連事業者が容器包装に入れられた加工食品(業務用加工食品を除く。)を販売する際(設備を設けて飲食させる場合を除く。)に表示されなければならない事項(以下「義務表示事項」という。)として定めている。トランス脂肪酸の量の表示については、現時点において当該三点いずれも満たしているとは言えない」としている。このうち、「事業者にとって表示が実行可能であること」の要件を満たしていない理由如何。
政府
お尋ねの「理由」については、平成二十五年十二月四日に開催された「食品表示部会栄養表示に関する調査会(第一回)」の資料において、「一般表示事項(エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム)に比べ、合理的な推定を行うための書籍、文献等が充実していないと考えられる」とされたところであり、現時点においても、トランス脂肪酸の量の表示については、御指摘の「「事業者にとって表示が実行可能であること」の要件」を満たしていないと考える。
神谷宗幣(参政党)
消費者庁の「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」によれば、「〇グラムと表示できるのは、原則としてトランス脂肪酸が含まれない場合に限られる」としつつも、「食品百グラム当たり(清涼飲料水等にあっては百ミリリットル当たり)のトランス脂肪酸の含有量が〇・三グラム未満である場合には、〇グラムと表示しても差し支えない」という。この点、トランス脂肪酸を約二グラム摂取すれば、エネルギー比一%を超えることになるところ、例えば、百グラム又は百ミリリットル当たり〇・二グラムのトランス脂肪酸を含有する菓子や、一・五リットルのペットボトル飲料を一本飲めば、エネルギー比一%を超えることとなる。このように、トランス脂肪酸の含有量が〇・三グラム未満の場合でも、消費者が一日に摂取する量がエネルギー比一%を超えてしまうことが想定できる食品の場合には、表示を行うべきではないかと思われる。このような場合に、「〇グラム」、「フリー」などと表示することは、一般消費者の誤認を誘うのではないか。これらの点について、政府はどのように考えているか。
政府
御指摘の「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」(平成二十三年二月二十一日消費者庁作成)においては、「零(ゼロ)グラムと表示することができるのは、原則として当該食品にトランス脂肪酸が含まれない場合に限られる」とした上で、「分析精度にはばらつきがあること」を踏まえ、零グラムとみなすことができる誤差の範囲について、「食品百グラム当たり(清涼飲料水等にあっては百ミリリットル当たり)のトランス脂肪酸の含有量が〇・三グラム未満である場合には、零グラムと表示しても差し支えない」としている。このため、ある食品に含まれるトランス脂肪酸の含有量が当該指針に即して零グラムと表示されている場合に、消費者が当該食品を大量に摂取した結果として、御指摘のように「消費者が一日に摂取する量がエネルギー比一%を超えてしまう」ことは、通常の食生活においては一般に想定されないと考えており、「一般消費者の誤認を誘うのではないか」との御指摘は当たらないものと考えている。
質問1)農業従事者数
農業従事者数は、昭和35年と令和2年の比較で9割減となっているが、政府は、農業従事者数の目標を設定していない。
質問2)食料自給率
カロリーベースの食料自給率は、昭和35年と令和2年の比較で半減しているが、政府は、食料自給率の目標を設定していない。
質問3)養液栽培施設
養液栽培施設の設置実面積は、2022年時点において2014ヘクタールである。
質問4)耕作放棄地
耕作放棄地の再生と有効活用については、農業の担い手への農地集積・集約化を進めるとともに、日本型直接支払制度により農業生産活動を下支えするほか、中山間地域等においては、農山漁村振興交付金により、採草放牧地の用に供することを含め、土地の活用を総合的に支援することにより、荒廃農地等の発生防止及び解消に取り組んでいる。
質問5)平均農業所得
2022年の農業経営体の平均農業所得は125万円となっているが、平均農業所得の年次的な数値目標は設定していない。
質問6)農業収入
2022年11月30日公表の農業経営統計調査によると、水田稲作経営の一経営体当たりの農業収入は1万円となっている。
質問7)農業経営体の収入向上策
農業経営体の収入向上策についての目標を設定しておらず、進捗を把握できない。
質問8)中山間地域
中山間地域を含む、農地の集約化や大区画化が困難な地域においては、農業経営の規模の大小にかかわらず、日本型直接支払制度や農山漁村振興交付金等による農業生産活動の下支え等の支援策を講じている。
質問9)新規就農の促進
一定の要件を満たした49歳以下の者を対象に、就農準備段階や経営開始段階の資金の交付、農業法人等における雇用就農者の研修に対する支援等の施策を実施している。
農業従事者減少の影響は、食料自給率の低下だけにとどまらない。食料・農業・農村基本法第三条によれば、農業は、食料供給の機能だけでなく、国土保全や水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等農村で農業生産活動が行われることにより生ずる食料その他の農産物の供給の機能以外の多面にわたる機能を持つとされており、国土の良好な保全、豊かな水源や自然環境、景観を守ること、地域文化の継承などの面からも農業従事者数の減少の問題は深刻である。
政府は、平成二十四年以降、「人・農地プラン」を実施するとともに、平成二十六年度からは、農業生産の効率化を図るために農地バンクの創設や農地の集積・集約化に取り組んできたものの、この間も我が国の耕地面積は減少し続けており、水田稲作を見ても単位面積当たりの収量はほぼ横ばいとなっている。政府目標を達成するためには、より踏み込んだ施策を講じるべきである。
以上の観点から、以下質問する。
一部メディアでは、「日本の農家は国からの補助金に依存しており、過保護だ」という論調があるが、農業への保護政策は、世界的に見て決して特異なものではない。EU加盟国では直接支払制度を通じて農業経営体の所得を支えており、アメリカでは価格支持融資制度などが農業経営体を経営困難から救い農業生産を維持する仕組みが整えられている。実際、こうした保護政策は日本よりも充実しており、日本の農業に対する保護政策が他国と比べて過度であるという事実はない。農業の特質上、保護政策がなければ、消費者は手頃な価格で食料を入手することが困難となり、農業従事者も安定した経営を維持することが困難となることは明らかだ。
日本の農業は、他国とは地理的条件等が異なるため、農業競争力に差が生じることは避けられない。しかし、そのことをもって農産物供給を海外からの輸入に頼ることは、食料自給率の向上で食料安全保障を図るという現代世界の要請に背を向けることになる。食料の輸入依存度を減らし、食料自給率の向上に注力するために日本農業が置かれた条件に見合った政策を実施する必要がある。何よりも生産者が経済的に安心して農業を継続し努力すればそれに見合った収入を得られるよう、国や行政が主導した支援策やスキームへの誘導が必要である。
神谷宗幣(参政党)
昭和三十五年に千百七十五万人であった農業従事者数は、六十年後の令和二年には、約九割減の百三十六万人となった。政府は、これらの数値の推移に基づいて、農業従事者数の確保に向けた目標を年次的にどのように設定し、その達成のための取組をどのように計画しているのか。
政府
お尋ねの「農業従事者数の確保に向けた目標」は設定していないが、「食料・農業・農村基本計画」(令和二年三月三十一日閣議決定。以下「基本計画」という。)においては、「農業者の大幅な減少等により、農業の持続性が損なわれる地域が発生する事態が懸念されることから、これを防」ぐため、「新規就農の促進・・・などを進め、農業現場を支える多様な人材や主体の活躍を促すことが重要である」としているところであり、就農準備段階や経営開始直後の青年就農者を対象とした資金の交付、農業法人等における雇用就農者の研修に対する支援、無利子融資等を活用した機械・施設等の取得の支援等の施策を実施している。このような取組を通じて、御指摘の「農業従事者数の確保」に取り組んでまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
同じく昭和三十五年から令和二年にかけて、カロリーベースの食料自給率は、七十九%から三十七%と半減した。食料・農業・農村基本計画では、令和十二年度までに飼料の自給率と食料国産率の向上を図りながら、カロリーベースで総合自給率四十五%、生産額ベースの総合食料自給率を七十五%に高める目標設定をしているが、こうした数値目標は耕作地と農業従事者確保、経営の効率化などが図られなければ単なる画餅となりかねないものである。前記一への答弁と併せて、令和十二年度までの食料・農業・農村基本計画の目標数値の達成をどのような取組で担保していくのか、具体的に示されたい。
政府
御指摘の「目標数値」については、基本計画において、「食料消費見通し及び生産努力目標を前提として、諸課題が解決された場合に実現可能な水準として示す食料自給率等の目標」として設定しており、お尋ねの「目標数値の達成をどのような取組で担保していくのか」については、基本計画において、「食料自給率の向上に向けた課題と重点的に取り組むべき事項」として、「食料消費」については、「食育や国産農産物の消費拡大、地産地消、和食文化の保護・継承、食品ロスの削減をはじめとする環境問題への対応等の施策を個々の国民が日常生活で取り組みやすいよう配慮しながら推進する必要がある」等と、「農業生産」については、「持続可能な農業構造の実現に向けた担い手の育成・確保と農地の集積・集約化の加速化、経営発展の後押しや円滑な経営継承を進めるとともに、農業生産基盤の整備やスマート農業の社会実装の加速化による生産性の向上、各品目ごとの課題の克服、生産・流通体制の改革等を進める必要がある」等としていることを踏まえ、引き続き、各種施策に取り組んでまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
現在、農業生産を拡大し促進する取組の一つとして、都市部での水耕など、限られた空間を最大限に活用し効率的な食料生産を実現する新しい農業展開が試みられている。これらの新しい事業について現状と政府の今後の支援策、目標について説明されたい。
政府
御指摘の「限られた空間を最大限に活用し効率的な食料生産を実現する新しい農業展開」の意味するところが必ずしも明らかではないが、農林水産省のホームページにおいて公表している「園芸用施設の設置等の状況(R二)」によると、御指摘の「水耕」も含めた「養液栽培施設」の「設置実面積」は、令和二年時点において二千十四ヘクタールであり、トマト、いちご等が生産されている。「養液栽培施設」についての目標は設定していないが、これも含めた園芸施設の整備等に要する費用の一部を補助する支援を行っているところであり、引き続き、必要な支援を行ってまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
農業従事者の減少は、耕作放棄地の増加という形にも現れている。耕作放棄地が長期間放置されると、農地としての再利用可能な土地が減少することにつながる。耕作放棄地について、それが放棄されてきた年数が五年以内のもの、五年以上のもの、十年以上のものそれぞれの面積と割合、都道府県別の分布、それぞれの地域における農地全体に対する割合を示されたい。あわせて、政府は、これらの耕作放棄地の再生と有効活用についてどのような対策を構想しているのか、具体的に示されたい。
政府
前段のお尋ねについて、耕作放棄地(農林業センサスにおいて「以前耕作していた土地で、過去一年以上作物を作付け(栽培)せず、この数年の間に再び作付け(栽培)する意思のない土地をいう。」と定義していた「耕作放棄地」をいう。)の面積については、平成二十七年までで取りまとめを終了しているが、平成二十年から毎年農林水産省が取りまとめている、荒廃農地(現に耕作に供されておらず、耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地をいう。以下同じ。)の面積について、お尋ねの「都道府県別の分布」については同省のホームページにおいて公表している「令和三年度の荒廃農地面積」に示しているとおりであるが、お尋ねの「放棄されてきた年数が五年以内のもの、五年以上のもの、十年以上のものそれぞれの面積と割合」の調査は行っておらず、把握していない。また、お尋ねの「それぞれの地域における農地全体に対する割合」については、その意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。後段のお尋ねについては、農地中間管理事業の推進に関する法律(平成二十五年法律第百一号)第二条第三項に規定する農地中間管理事業の実施により農業の担い手への農地集積・集約化を進めるとともに、日本型直接支払制度により農業生産活動を下支えするほか、中山間地域等においては、農山漁村振興交付金により、採草放牧地の用に供することを含め、土地の活用を総合的に支援することにより、荒廃農地等の発生防止及び解消に取り組んでいるところである。
神谷宗幣(参政党)
令和四年十一月三十日公表の農業経営統計調査「令和三年 農業経営体の経営収支」によれば、令和三年全農業経営体の平均農業所得は百二十五・四万円となっている。低水準の所得が農業従事者数の減少の一つの要因となっている。今後、農業生産発展の方向性と併せて、平均農業所得をどのように引き上げていくのか、年次的な数値目標を含めて政府の取組を示されたい。
政府
お尋ねの「農業生産発展の方向性」については、例えば、基本計画において「生産性と収益性が高く、中長期的かつ継続的な発展性を有する、効率的かつ安定的な農業経営(主たる従事者が他産業従事者と同等の年間労働時間で地域における他産業従事者と遜色ない水準の生涯所得を確保し得る経営)を育成し、こうした農業経営が農業生産の相当部分を担い、国内外の需要の変化に対応しつつ安定的に農産物を生産・供給できる農業構造を確立することがこれまで以上に重要となっている」と示しているとおりである。このため、基本計画においては、「経営感覚を持った人材が活躍できるよう、経営規模や家族・法人など経営形態の別にかかわらず、担い手(効率的かつ安定的な農業経営及びこれを目指して経営改善に取り組む農業経営(認定農業者、認定新規就農者、将来法人化して認定農業者になることが見込まれる集落営農))の育成・確保を進めるとともに、担い手への農地の集積・集約化、農業生産基盤の整備の効果的な実施、需要構造等の変化に対応した生産供給体制の構築とそのための生産基盤の強化、スマート農業の普及・定着等による生産・流通現場の技術革新、気候変動への対応などの環境対策等を総合的に推進する」としており、こうした施策が、農業の担い手の所得の向上に寄与し、このことが御指摘の「平均農業所得」を「引き上げて」いくことにつながるものと考えている。なお、お尋ねの「平均農業所得」の「年次的な数値目標」については設定していない。
神谷宗幣(参政党)
同調査では、我が国の主食である米を生産する水田稲作経営の一経営体当たり農業粗収益は三百五十・三万円となっている。これから農業経営費三百四十九・三万円を差し引くと、農業所得は、一万円となり、前年に比べて九十四・四%減となっている。これらの数値は、水田稲作以外の農作物生産の所得も含まれているのか。また、水田稲作専業経営体と他の作物を並行して生産している経営体の実数、割合についても示されたい。水田稲作を専業にしている経営体のみを見た場合の平均農業所得はいくらになるのか。
政府
御指摘の「水田稲作経営」の意味するところが必ずしも明らかではないが、農林水産省の「農業経営統計調査 令和三年 農業経営体の経営収支」における水田作経営の農業所得には、御指摘の「水田稲作以外の農作物生産の所得」も含まれている。また、お尋ねの「水田稲作専業経営体と他の作物を並行して生産している経営体の実数、割合」及び「水田稲作を専業にしている経営体のみを見た場合の平均農業所得」については取りまとめていない。
神谷宗幣(参政党)
政府は、持続可能な農業経営を支援するため、農業経営体の収入向上策についてどのような目標とテンポをもって進めようとしているのか。また、政府は、米の消費拡大の取組と農業従事者振興策に関する質問主意書(令和五年二月二十八日提出質問第二九号)に対する答弁書(内閣参質二一一第二九号)で、「需要に応じた生産による農業者の所得の向上が、農業従事者の育成に資すると考えている」と答弁しているが、「需要に応じた生産による農業者の所得の向上」のための施策はどのような内容なのか。
政府
前段のお尋ねの「農業経営体の収入向上策について」の「目標」については設定しておらず、その「テンポ」についてお答えすることは困難である。後段のお尋ねについては、例えば、主食用米を含めた米穀に係る需要見通しや価格動向等についての生産者等に対するきめ細かな情報提供、主食用米から麦・大豆や野菜、果樹といった需要が大きい作物への転換への支援が含まれる。
神谷宗幣(参政党)
日本の農地は、傾斜地の多い中山間地域にも広く点在しているため、農地の集約・大規模化には限界がある。小規模農家による経営がこうした地域では重要な役割を果たしているが、これらが農業生産を存続するために、どのような支援策を講じているのか。
政府
中山間地域を含む、農地の集約化やほ場の大区画化が困難な地域においては、農業経営の規模の大小にかかわらず、四についてで述べたとおり、日本型直接支払制度や農山漁村振興交付金等による農業生産活動の下支え等の支援策を講じているところである。
神谷宗幣(参政党)
政府は、若手農業従事者の創出・育成や、失業者に対する事業転換支援などについて、どのような施策を実施しているのか。計画している内容を含めて、数値目標と併せて示されたい。
政府
御指摘の「若手農業従事者」及び「失業者に対する事業転換支援」の意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、政府としては、一についてで述べたとおり、新規就農の促進が重要と考えており、一定の要件を満たした四十九歳以下の者を対象に、就農準備段階や経営開始段階の資金の交付、農業法人等における雇用就農者の研修に対する支援等の施策を実施しているところである。
質問1)人口爆発を要因とするたんぱく質不足
世界の人口爆発を要因とするたんぱく質不足が我が国に与える影響について、政府は特段の分析を行っていない。
質問2)昆虫食が日本人の身体に与える影響
政府は食用の昆虫の摂取によって健康に対する影響が生じたという具体的な事例を承知していない。さらに、昆虫食の研究に令和五年度予算で経費を計上している。
質問3)昆虫食の研究に関する周知
農水省の主導で昆虫食や昆虫飼料、代替肉の研究開発が進められていることを多くの国民は知らないにも関わらず、フードテック官民協議会によるフードテック推進ビジョンとロードマップについてパブリックコメントを実施したため、十分な周知と議論をしていると政府は認識している。
質問4)昆虫食の販売
政府は、昆虫を使用した煮物や菓子類が販売されていることを承知している。
質問5)伝統的食材の生産強化
日本人が昔から食べてきた食べ物の生産強化について、政府は意味が理解できない。
質問6)コオロギの原材料表示
コオロギが食材に含まれていても、原材料としてコオロギが表示されないことがある。
また、NTTグループのような政府が三割以上の株式を保有する企業においても、「食用コオロギで「昆虫食」事業に参入」と報じられており(二〇二三年一月十九日、日本テレビ)、「食用コオロギは乾燥させて粉末にし、スナック菓子やプロテインバーなどの商品に使われる」、「食用コオロギは家畜よりも飼育に必要なエサや水が少なく済み、温室効果ガスの排出も減らせるため、将来の動物性たんぱく質の供給源として注目されている」とも解説されていた。
さらに、全国初めてのケースとして徳島県では食用コオロギを養殖する事業者が学校給食事業に参入し、同県立小松島西高校において、この事業者が納入した乾燥コオロギ粉末を校内調理し、給食として提供したことが、二〇二二年十一月二十八日付けの日本経済新聞において報道された。同高校においては、教科活動の中でもコオロギ食材の調理実習が手がけられていたといい、ひき肉に代わるたんぱく源としてコオロギ粉末をカボチャに混ぜて「カボチャコロッケ」を調理し、給食に供したという。
そこで、以下質問する。
このように、昆虫食は、「人口増加に伴う食糧確保の必要がある」、「コオロギは鳥や豚、牛と比べ多くのたんぱく質を含んでいる」、「環境への負荷が少ない」などと、食糧問題の解決策として肯定的なニュアンスで報じられることが多いようである。一方、これに対し、国民からは、「絶対に食べたくない」、「たんぱく源である牛乳を廃棄しながらコオロギを推奨するのは間違えている」、「公金を使うな給食に出すな」など多数の批判の声も多く聞く。
農水省は、二〇二一年五月、「みどりの食料システム戦略」を策定し、「フードテック」全般の推進を図るとし、その中で昆虫食に関する具体的な取組として、「飼料の代替としての新たなタンパク資源(昆虫、藻類、水素細菌)の利活用拡大」、「昆虫の機能を活用した新素材の開発」、「シロアリを利用した未利用木材の飼料化」、「代替肉・昆虫食の研究開発等、フードテック(食に関する最先端技術)の展開を産学官連携で推進」などが掲げられている。すでに、ムーンショット型農林水産研究開発事業の一環として、養殖マダイに与える飼料の魚粉を昆虫粉に変えたり、シロアリを養鶏用飼料として活用したりする研究が進められている。
さらに、二〇二三年度からは、「コオロギの家畜化に資する飼育標準案の作成、ミズアブの飼育システム・利用方法の開発」が行われ、二〇二五年度からは、「高品質昆虫の持続可能な大量生産システムの開発」が進められるという。
以上のように、国民に十分な周知や合意形成が図られる以前に政府は「昆虫食」推進の道へ歩み始めつつある。背景にあるのは、錦の御旗のような「SDGs推進」であることも明らかだが、長年にわたる人類、そして日本人の営みと叡智の中で蓄積、形成されてきた「何をどう食べるのか」、「健康で安全な食とは何か」を柱にした食文化に、歴史的な経緯から見て全く異質なものを持ち込むような「昆虫食」の有無も言わさぬような推進には強く違和感を覚える。
神谷宗幣(参政党)
我が国は、政府が「異次元の少子化対策」を掲げなければならないほど人口減少の危機にある。一方で世界の人口爆発を要因とするたんぱく質不足が叫ばれてきたが、これが人口減の坂を下り始めた我が国についてどのような影響が考えられるのか、またその根拠としてどのようなデータを基に分析されているのか政府は具体的に示されたい。
政府
御指摘の「世界の人口爆発を要因とするたんぱく質不足」が我が国に与える影響については、特段の分析を行っていない。
神谷宗幣(参政党)
近年、日本人の食生活が欧米化したと言われるが、それでも長年の食生活の中で培ってきた日本人の体質と欧米人の体質は同じではない。同じ病気でも国や人種によって発症率や原因、症状などに違いが生じることからも分かるとおり、体内環境は人種によって異なる。日本人の体質に合った食生活の構築を目指すべきところ、政府は、昆虫食が日本人の身体に与える影響について、いかなる分析を行い評価をしているのか、具体的に示されたい。
政府
御指摘の「日本人の体質に合った食生活の構築」の意味するところが必ずしも明らかではないが、我が国において食用の昆虫の摂取によって健康に対する影響が生じたという具体的な事例は承知していない。他方、厚生労働省においては、「「昆虫食」における大規模生産等産業化に伴う安全性確保のための研究」を令和五年度の厚生労働科学研究費補助事業の公募課題としており、また、農林水産省においては、食用の昆虫に含まれる有害物質の情報収集及び当該有害物質の管理手法に関する研究事業を実施するため、令和五年度予算において、必要な経費を計上している。これらの研究結果も参考にしつつ、厚生労働省及び農林水産省において、食用の昆虫の摂取による健康に対する影響について情報の収集、整理等を行い、必要に応じて、食品安全委員会において、食品安全基本法(平成十五年法律第四十八号)第十一条第一項に規定する食品健康影響評価を実施してまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
前文で指摘したように、農水省の主導で昆虫食や昆虫飼料、代替肉の研究開発が進められていることについて、多くの国民は知らないままである。歴史上、日本人がこれまで口にしてこなかったコオロギなどの昆虫を食事として、また飼料として用いることには、強い抵抗が生じると予想される。老若、そして子供を含む国民が口に入れる食料に否応なしに昆虫由来食品が含まれる可能性について、現在の研究到達度を踏まえながら十分な周知と議論が必要である。政府は、この点についてどのような対応を考えているのか。
政府
御指摘の「昆虫由来食品」及び「現在の研究到達度」の意味するところが必ずしも明らかではないが、農林水産省が立ち上げた「フードテック官民協議会」による「フードテック推進ビジョン」及び「ロードマップ」(令和五年二月二十一日)については、パブリックコメントを実施し、広く国民から意見を募集した上で策定したものであり、御指摘の「十分な周知と議論」をしてきたものと考えている。引き続き、国民の声を丁寧に聞き、政策に反映させてまいる所存である。
神谷宗幣(参政党)
前文の中で例示した徳島県での学校給食のように、粉末コオロギの使用が一部で開始されているが、現在、市販食品として流通している昆虫食品、食材の種類、量、食品安全上のチェックなどについて、政府が把握している内容を示されたい。
政府
お尋ねの「市販食品として流通している昆虫食品、食材の種類、量」については、網羅的には把握していないが、例えば、昆虫を使用した煮物や菓子類が販売されていると承知している。また、お尋ねの「食品安全上のチェックなど」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、人の健康を損なうおそれのある食品又は添加物については、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第六条の規定によりその販売等が禁止されており、当該規定の遵守状況については、一義的には、食品又は添加物を販売し、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列する者が確認する責務を負う。また、国にあっては同法第二十三条第一項の規定に基づく輸入食品監視指導計画に基づき、適切に輸入食品等の監視指導を行っており、都道府県、保健所を設置する市及び特別区にあっては同法第二十四条第一項の規定に基づく都道府県等食品衛生監視指導計画に基づき、適切に監視指導を行っているものと承知している。この枠組みは、御指摘の「市販食品として流通している昆虫食品、食材」についても適用される。
神谷宗幣(参政党)
日本人が昔から口にしてきた伝統的食材の中には、イワシを始めとした魚や大豆などのように豊富にたんぱく源を含むものが多くある。「食用昆虫」の大量生産システムを構築したり、「昆虫の家畜化」をしたりするよりも前に、日本人が昔から食べてきた食べ物について生産強化のほか、毎年七十万トンが廃棄されているとされるおからの有効活用、非標準野菜などの流通の見直し、フードロス解消など、優先して行うべき課題があると思われる。こうした取組の推進について、政府はどう考えているのか、具体的に示されたい。
政府
御指摘の「日本人が昔から食べてきた食べ物」及び「優先して行うべき課題」の指すところが明らかではないが、御指摘の「おからの有効活用」については、おからは主に飼料及び肥料の原料として利用されていると承知しており、また、政府としては、生産者団体等が定める規格に適合しないことを理由とする野菜の廃棄を削減することにも資するよう、こうした野菜の産地における加工施設の整備等への支援を行っているところであり、さらに、食品ロスの削減については、「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」(令和二年三月三十一日閣議決定)において、「商慣習見直しとしては、食品製造業者と、食品卸売・小売業者の連携の下、賞味期限表示の大括り化(年月表示・日まとめ表示)、賞味期限の延長、厳しい納品期限の緩和(取組企業や実施品目の拡大)を一体的に促進する」としていること等を踏まえ、引き続き、更なる食品ロスの削減に向けて取り組んでまいりたい。
神谷宗幣(参政党)
コオロギを原料として食材に含める際、食品表示法上、どのように表示されるか。「コオロギ」以外の表記が使用されるか。また、原料として含まれていても、表記がされない場合があるか。
政府
食品表示法(平成二十五年法律第七十号)第四条第一項の規定により定められた食品表示基準(平成二十七年内閣府令第十号)第三条第一項の表の原材料名の項の1の一において、「使用した原材料」を「原材料に占める重量の割合の高いものから順に、その最も一般的な名称をもって表示する」こととされており、御指摘の「コオロギ」が原材料として含まれる場合には、その一般的な名称を表示することが必要である。また、同項の1の二の「二種類以上の原材料からなる原材料(以下「複合原材料」という。)を使用する場合」については、同項の1の二のイにおいて、「複合原材料の名称の次に括弧を付して、当該複合原材料の原材料を当該複合原材料の原材料に占める重量の割合の高いものから順に、その最も一般的な名称をもって表示する。ただし、当該複合原材料の原材料が三種類以上ある場合にあっては、当該複合原材料の原材料に占める重量の割合の高い順が三位以下であって、かつ、当該割合が五パーセント未満である原材料について、「その他」と表示することができる。」こととされ、また、同項の1の二のロにおいて、「複合原材料の製品の原材料に占める重量の割合が五パーセント未満である場合又は複合原材料の名称からその原材料が明らかである場合には、当該複合原材料の原材料の表示を省略することができる。」こととされており、御指摘の「コオロギ」が複合原材料の原材料として使用される場合には、その一般的な名称が表示されないこともあり得る。
質問1)水田の畑地化
政府は、休耕地の畑地化よりも、水田の畑地化に合理性があると認識してる。
質問2)米の供給力の減少への対応
政府は、需要に応じた生産を推進することが重要と考えており、米の生産減や供給力の減少に対応をする考えはない。
質問3)米飯給食の促進
「食料・農業・農村基本計画」(令和二年三月三十一日閣議決定)において、「米飯学校給食の推進」があげられており、必要な措置を講じていく考えである。
質問4)主食米の需要拡大策
情報発信により、米の一人あたりの消費量の減少に歯止めをかけようとしている。
質問5)米の備蓄
米の備蓄と農業従事者の育成を複合的に進める考えは政府にはない。
質問6)米の主食化による自給率改善
農林水産省は、米を主食にするなど日本人の食生活が変われば食料自給率が向上するデータを提示しているが、具体的に食生活を変化させる取り組みを行う考えはない。
しかしながら、二〇二三年産の主食用米の需要量(二〇二三年七月~二〇二四年六月)が過去最低を更新するとの見通しであるという。二〇二二年十月二十一日付けの日本経済新聞では、「コメ離れ、需給均衡遠く」としてこの問題を報じている。
国内の農業従事者は、一九六〇年の千百七十五万人から減少し続けており、二〇二〇年には百三十六万人となった。一九五六年に三百三十二万ヘクタールあった田の耕地面積は、二〇二二年には二百三十五・二万ヘクタールまで減少した。米に対する需要低下、食生活の変化、農業従事者の高齢化、後継者不足など農業従事者と米をめぐる課題は山積みである。
他方、ここ数年間、パンデミックやウクライナ危機、台湾有事、気候変動など多くの不安定要素を抱える中、食料安全保障は喫緊の課題である。自給率の低い日本は、常にその食糧の確保を輸入に頼らざるを得ない状況にある。そのため、食料安全保障を考える上では、食糧危機が生じた際、自国の食糧を如何に自給することができるか、国民が飢えない状況を如何に保全するか、食糧価格の高騰が家計を逼迫する状況を如何に回避するかが極めて重要である。
このような現状に鑑みれば、主食である米は、需要の低下や食生活の変化等を理由として、その生産減や供給力の減少を放置してはならない。今こそ、日本人の主食である米の消費拡大に力を入れるべきである。
このような状況の中、政府は、食料安全保障の強化が国家の喫緊かつ最重要課題であると位置付け、二〇二二年十二月二十七日、「食料安全保障強化政策大綱」を公表した。しかしながら、同大綱では、「水田の畑地化等を強力に推進する」とされ、水田を減少する方向での取組が「強力に」進められるとのことである。
これについて、米農家からも戸惑いの声が上がっている。「栽培に不慣れな野菜や、品代だけで収支が成り立たない大豆で畑地化しても、従来の転作助成のような恒常的な政策支援がなければ、経営安定が見通せないからだ。実際に野菜で畑地化した農家も、技術面の課題もあり、経営の厳しさを訴える」と報道されている(二〇二三年一月八日付日本農業新聞)。
米の生産には、田とそれを担う農業従事者の存在が必要不可欠である。危機が起きてから、田を開発し、農業従事者を育て、農業を振興する政策をとっても遅い。今から、農業の振興を図り、田を保全する政策をとる必要がある。
以下、質問する。
神谷宗幣(参政党)
水田の畑地化を進めれば、水田がさらに減少し、主食である米の供給量が減ることが必至である。こうなると、政府が進めるとしている「米の消費拡大」、「需要増大の取組」と逆行することにならないか。食料安全保障の重要性に鑑みれば、現状の水田を畑地化する前に、休耕地などすでに使われていない田畑の畑地化を先行すべきと思うが、政府は、どのように考えるか。
政府
「政府が進めるとしている「米の消費拡大」、「需要増大の取組」と逆行することにならないか。」との御指摘は当たらないものと考えている。
神谷宗幣(参政党)
前記のとおり、米が日本の風土に合った日本人の主食であり、日本文化とも密接であることに鑑みれば、需要の低下や日本人の食生活の変化等を理由として、その生産減や供給力の減少を放置すべきでないと考えるが、政府は生産減や供給力の減少についてどのような対応を講じるか。
政府
人口減少等により国内における主食用米の需要量が年々減少する中で、政府としては、需要に応じた生産を推進することが重要と考えており、主食用米を含めた米穀に係る需要見通しや価格動向等についての生産者等に対するきめ細かな情報提供を行うとともに、主食用米から麦・大豆といった、需要があり、かつ、海外からの輸入に依存している作物等への転換や畑作物の作付けが継続して行われている水田等についての御指摘の「畑地化」への支援等に取り組んでいるところである。
神谷宗幣(参政党)
二〇二二年四月六日、第二百八回国会衆議院農林水産委員会において、武部新農林水産副大臣は、「自給率向上のためにも、米飯給食の促進や米の機能性の発信などをしてまいりたい」と述べている。この点、週三回以上、米飯給食を取り入れている小中学校は、全体の学校数のうち、何校あるか。また、週四回以上、米飯給食を取り入れている学校は、全体の学校数のうち、何校あるか。これらについて、それぞれ、過去五年間の学校数の推移を明らかにされたい。また、米飯給食の促進や米の機能性の発信について、今後も継続して推進していく方針であるか、明らかにされたい。
政府
学校における米飯給食(給食内容に米飯が含まれる給食をいう。以下同じ。)の実施状況については、文部科学省において、平成二十九年度から令和三年度までの過去五年間のうち、平成三十年度及び令和三年度に米飯給食実施状況調査を実施しており、各年度における①毎週三回以上の米飯給食を実施している学校(国公私立の小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程、特別支援学校及び夜間課程を置く高等学校をいう。以下同じ。)の数及び②毎週四回以上の米飯給食を実施している学校の数をお示しすると、次のとおりである。なお、学校の種類ごとの内訳については、集計を行っておらず、お尋ねの「小中学校」のみの数をお答えすることは困難である。
平成三十年度 ①二万八千六百九十八校 ②一万千五百十九校
令和三年度 ①二万八千六百二十六校 ②一万二千三百三校
神谷宗幣(参政党)
同委員会において木原誠二内閣官房副長官は、「米の消費拡大に関しましては、現在、政府において、農林水産業・地域の活力創造プラン、これを取りまとめまして、米を始めとする和食の次世代継承と国内外への発信、また、国内外での需要の増大などに向けた取組、こうした方向性を政府として、内閣として示させていただいているところであ」るとして、米の消費拡大に向けて政府全体としてしっかり取り組んでいく旨を答弁した。しかし、「食料安全保障強化政策大綱」では、米粉の利用拡大を目的として米粉の普及に向けた設備投資等を支援するなどの施策こそ盛り込まれているものの、主食米の消費拡大に向けた内容が何ら盛り込まれていない。政府としては、主食米の需要拡大策についてどのように考えているか。
政府
主食用米の需要の拡大に向けて、政府としては、「食料・農業・農村基本計画」(令和二年三月三十一日閣議決定。以下「基本計画」という。)において、「米飯学校給食の推進・定着や米の機能性など「米と健康」に着目した情報発信、企業と連携した消費拡大運動の継続的展開などを通じて、米消費が多く見込まれる消費者層やインバウンドを含む新たな需要の取り込みを進めることで、米の一人当たり消費量の減少傾向に歯止めをかける」こととしており、引き続き必要な措置を講じていく考えである。
神谷宗幣(参政党)
同大綱では、農業の成長産業化により、食料自給率の上昇につなげることが記載されているところ、短期的に危機が迫っている現状では、国が財政支出を行い、輸出を行ってもなお発生した余剰分の米などを買い取るなどして、普段から農業従事者を育成し、農作物の供給能力を維持したまま食糧危機に備えておくことも重要であると考える。この農業従事者の育成政策の是非について、政府の見解如何。
政府
御指摘の「国が財政支出を行い、輸出を行ってもなお発生した余剰分の米などを買い取るなど」の意味するところが明らかではないため、お尋ねにお答えすることは困難であるが、政府としては、需要に応じた生産による農業者の所得の向上が、農業従事者の育成に資すると考えている。なお、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成六年法律第百十三号)第二条第一項の規定により政府が行う米穀の備蓄は、米穀の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備え、必要な数量の米穀を在庫として保有するものであり、御指摘の「農業従事者の育成政策」として運用することは考えていない。
神谷宗幣(参政党)
農林水産省のウェブページの「食料自給率との関係」というページには、「ごはんは食料自給率百%。米を主食にするだけで、食料自給率がアップします。」と記載され、「「食事バランスガイド」のコマに表された一日の食事で試算した場合、全体の食料自給率は五十二・〇%」となるという試算が示されている。また、「日本型食生活のすすめ」のページには、ごはん中心和定食「魚の照り焼き、青菜のごまあえ、ごはん小盛り二杯、根菜の汁」とすると、食料自給率は、九十%となるとの試算がある。これらの試算について根拠となるデータを示されたい。また、これを基に自給率向上計画を立てれば、自給率向上の具体的な道筋が議論できるようになるのではないかと考えるが、政府の見解如何。
政府
御指摘の試算は、御指摘の「「食事バランスガイド」のコマに表された一日の食事」及び「ごはん中心和定食「魚の照り焼き、青菜のごまあえ、ごはん小盛り二杯、根菜の汁」」に含まれる食材又は料理に係る平成二十一年度の供給熱量ベースの食料自給率について加重平均して算出したものであり、お尋ねの「根拠となるデータ」について、①食材又は料理及び②①の同年度の供給熱量ベースの食料自給率を「「食事バランスガイド」のコマに表された一日の食事」及び「ごはん中心和定食「魚の照り焼き、青菜のごまあえ、ごはん小盛り二杯、根菜の汁」」の別にお示しすると、次のとおりである。
(一) 「「食事バランスガイド」のコマに表された一日の食事」
①食パン ②十四パーセント
①ごはん ②百パーセント
①うどん ②二十四パーセント
①おにぎり ②百パーセント
①野菜サラダ ②二十パーセント
①野菜の煮物 ②五十四パーセント
①ほうれん草のお浸し ②七十九パーセント
①具だくさん味噌汁 ②八十パーセント
①きゅうりとわかめの酢の物 ②七十四パーセント
①目玉焼き ②七パーセント
①冷奴 ②二十八パーセント
①焼き魚 ②百二十五パーセント
①ハンバーグステーキ ②十五パーセント
①牛乳 ②四十三パーセント
①チーズ ②八パーセント
①みかん ②百一パーセント
①りんご ②五十八パーセント
(二) 「ごはん中心和定食「魚の照り焼き、青菜のごまあえ、ごはん小盛り二杯、根菜の汁」」
①ごはん ②百パーセント
①青菜のごまあえ ②二十七パーセント
①根菜の汁 ②八十パーセント
①魚の照り焼き ②九十七パーセント
また、お尋ねの「これを基に自給率向上計画を立てれば、自給率向上の具体的な道筋が議論できる」の意味するところが必ずしも明らかではないが、基本計画における「食料自給率の向上に向けた課題と重点的に取り組むべき事項」において、「食料消費」については、「食育や国産農産物の消費拡大、地産地消、和食文化の保護・継承、食品ロスの削減をはじめとする環境問題への対応等の施策を個々の国民が日常生活で取り組みやすいよう配慮しながら推進する必要がある」としているところである。
質問1)食料安全保障シミュレーションの実施
農林水産省において、不測の事態が生じた場合に食料の供給の確保が図られるよう、穀物や大豆の輸入量の大幅な減少等、様々な事態を想定したシミュレーションを行っている
質問2)食料安全保障シミュレーションの結果
穀物や大豆の輸入量の大幅な減少等、様々な事態を想定したシミュレーションは、農林水産省のホームページにおいて「令和四年度「緊急事態食料安全保障指針」に関するシミュレーション演習の実施結果について」等として公表されている
質問3)食料備蓄
政府は、備蓄により何人がどのくらいの日数、必要なカロリーを摂取できるのか把握していない。
質問4)緊急増産
政府は、緊急的増産によってカロリーベースで何人分の食料を何日間分確保できるのかを把握していない。
政府は、シーレーン断絶などによって、外国からの輸入品が一切入らなくなった事態を想定したシミュレーションは行っていない旨答弁した。しかし、昨年二月二十四日のロシアによるウクライナ軍事侵攻により世界の穀物輸出市場で大きな輸出量シェアを持つ二国との取引が政治的、物理的(積出しルートが戦闘の継続等で分断される等)な理由で妨げられるだけで世界中に食糧価格高騰や必要量の不足を生じていることに鑑みると、政府の取組は極めて不十分と言わなくてはならない。
世界的な戦争や災害、食糧危機、パンデミック等が発生した場合、各国が食料の輸出を止め、自国の供給に専念する政策をとることはもとより、現実に日米間の安全保障上の協力の焦点に日本へのシーレーン寸断を引き起こす蓋然性の高い「台湾有事」が浮上していることからも、シーレーン断絶などによって外国からの輸入品が一切入らなくなった事態を想定したシミュレーションは実施、検討されて然るべきである。
また、政府は、「米穀及び小麦について、それらの供給が不足する事態に備えた備蓄を行っており、令和四年度の備蓄量は、それぞれ、百万トン程度、八十八万トン程度である」と答弁した。この点、我が国の食料安全保障を検討する際、このような前提状況の把握は非常に重要であるが、前記答弁では、同備蓄がカロリーベースとしてどのくらいの備蓄なのか、そして、この備蓄時より何人がどのくらいの日数、必要なカロリーを摂取できるのかという点が明確ではない。
右質問する。
神谷宗幣(参政党)
「台湾有事」の発生が安全保障上の懸念事項になっているにもかかわらず、政府が外国からの輸入品が一切入らなくなった事態を想定して、シミュレーションを行っていない理由は何か。理由の如何を問わず、かかるシミュレーションは実施し、対策を検討するべきと考えるが、政府の見解如何。
政府
御指摘の「台湾有事」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、御指摘の「外国からの輸入品が一切入らなくなった事態」が生じる前の段階から適切な対策を講ずることとしているため、先の答弁書(令和四年十二月十六日内閣参質二一〇第六〇号)でお答えしたとおり、農林水産省において、「不測の事態が生じた場合に食料の供給の確保が図られるよう、穀物や大豆の輸入量の大幅な減少等、様々な事態を想定したシミュレーション」を行っているところであり、引き続き、このような考え方に基づき、必要な取組を進めていく考えである。
神谷宗幣(参政党)
政府は、「穀物や大豆の輸入量の大幅な減少等、様々な事態を想定したシミュレーションを行っている」と答弁したが、政府が行っている「様々な事態を想定したシミュレーション」について、具体的な内容及び分析の結果を示されたい。
政府
お尋ねについては、農林水産省のホームページにおいて「令和四年度「緊急事態食料安全保障指針」に関するシミュレーション演習の実施結果について」等として公表されているとおりである。
神谷宗幣(参政党)
政府は、「米穀及び小麦について、それらの供給が不足する事態に備えた備蓄を行っており、令和四年度の備蓄量は、それぞれ、百万トン程度、八十八万トン程度である。」と答弁しているが、これはカロリーベースとしてどのくらいの備蓄か。また、同備蓄により、何人がどのくらいの日数、必要なカロリーを摂取できるのかにつき、示されたい。
政府
米穀及び小麦それぞれの備蓄量である百万トン程度及び八十八万トン程度を供給熱量に換算した場合、それぞれ約三兆キロカロリー及び約二兆三千億キロカロリーに相当するところであるが、御指摘の「必要なカロリー」の意味するところが明らかではないため、お尋ねの「同備蓄により、何人がどのくらいの日数、必要なカロリーを摂取できるのか」についてお答えすることは困難である。
神谷宗幣(参政党)
令和四年十月十七日に開催された第二百十回国会衆議院予算委員会において、野村哲郎農林水産大臣は、「海外からの食料の輸入に支障があった場合でも、備蓄の活用なり、あるいは国内の緊急的な増産によりまして、食料供給を確保できるように対応することが必要」である旨答弁している。このうち、「国内の緊急的な増産」に関する具体的方法及び緊急的増産によってカロリーベースで何人分の食料を何日間分確保できるのかという点について、政府の想定を示されたい。
政府
お尋ねの「「国内の緊急的な増産」に関する具体的方法」については、例えば、裏作の作付拡大、非食用の作物等の作付けを減少させることによる食用の作物の生産への切替え等により増産を行うこととしている。また、お尋ねの「緊急的増産によってカロリーベースで何人分の食料を何日間分確保できるのか」については、増産する作物の種類やその必要量は、生じた不測の事態における個別具体的な状況により異なることから、一概にお答えすることは困難である。